痩せるためには「肉を食べる」ことーー!? 昨年からブームが続く、“赤身肉にダイエット効果がある”との話題。今や肉食はダイエットの新常識なのか…。
そこで今シリーズ第1弾は、まず2ヵ月半で16kg減量を達成した、人気立ち食いステーキ『いきなり!ステーキ』の広報・原秀肇さんを直撃! 彼はいかに肉食で痩せたのか?
■ミッションは社命! 2ヵ月半で15kg減量を目指す
立ち食いステーキという新ジャンルを築いた『いきなり!ステーキ』の広報担当を務める原さんは、昨年9月11日に「11月29日の“いい肉の日”までにステーキを食べて15kg減量します」と宣言。
しかも、美しい“プラチナボディ”になるため、同店のポイントカード『肉マイレージカード』の食べた量によるランクにちなみ、肉はプラチナカード会員の条件である20,000グラム(20kg)以上食べることを条件にした。食べる肉のほうが目標減量体重より5kg多いって…(苦笑)?
それでも、原さんは是が非でも2ヵ月半で痩せなければいけない。趣味でも健康のためでもなく、社命だからだ。
企画の発想は、カッコいい肉体を競う『ベストボディ・ジャパン』の出場者が「お肉のタンパク質は体作りに非常にいい」からと、『いきなり!ステーキ』のファンが多かったことだという。また、約1年で通算158kgの肉を食べて体質改善をした伝説のリピーター・TAKAさんの存在もあった。
「赤身肉と健康がリンクして企画が動き始めたんですが、指名されるまでは社長から逃げ回りました(笑)」
しかし、逃げきれるわけもなく、ミッションスタート。奇しくもこれが原さん、人生初のダイエットとなった。それというのも、ダイエット前は180㎝、84.9kgという体型で、大柄ではあるがそこまで太ってはいないという認識。39歳という年齢を考えれば、お腹ぽっこりも普通の範囲内だったとのこと。
「5年くらい前、ポール・スミスで一番大きいサイズのスーツが入らなくなった時、太った自覚はありましたよ。20代から愛用していたのに“い らない客になったんだ”と…(苦笑)。でもダイエットしようとは思いませんでした。お米、パスタの炭水化物、時々、つけ麺1kgとか爆食いしたり、好き な物を食べていましたね」
こうして食べることが大好きで、運動もしていない、明らかに自覚のないメタボまっしぐら?の39歳・男性が人生初のダイエットに挑むことになったわけだ。
食事は1日にヒレ肉300gを午前中に
■筋トレを導入して“プラチナボディ”を目指す!
だがダイエット経験不足か、当初はステーキソースをかけ、糖質の多い玉ねぎやコーンの付け合わせに加え、バターも全てたいらげていたという…。
食事は1日にヒレ肉300gを午前中に食べる。水は1日2Lを飲み、サプリを取り入れて、どうしてもお腹が空いた場合は、夜にゆで卵2個と葉もののサラダのみOKという条件でスタート。糖質を徹底的に排除した食事だ。
「初めて2週間はストレスでモヤモヤです。だって、普通に仕事してるんですよ! 紅茶すらダメでしたし。もう、つけ麺、ラーメン、ケーキをホールで…って、終わった後に食べるものしか考えられなかったです」
ちなみに、初日から最後まで、空腹を紛らわすためにやっていたことがある。
「シュガーレスのガムを噛んでいました。20時間くらい同じガムを」
そして、何よりつらかったのが午前中に1食というリズムだ。
「それまでは朝も昼も食べずに日中はお菓子をつまむくらい。夜に爆食いしてすぐ寝る生活だったので、夜、食べられないことがつらかったです」
むしろ体重80kg台だったのが不思議な食生活である。こんな生活リズムの変更や空腹のツラさに耐えながら過ごしたが、1週間経過して体重を量ると…なんと増えていた!
「自分なりに考えて運動も取り入れたんですが、やはりプロの指導を受けないとシルエットも美しい“プラチナボディ”にはなれないなと。パーソナルトレーニングジムへ通って、筋トレを取り入れることにしました」
痩せるには脂肪燃焼が必要だが、近年は全く運動をしていなかった原さん。筋トレで体に「動かしますよ」と教えて、脂肪燃焼のサイクルを呼び起こす必要があったのだ。トレーニングは1週間に3日間。1日につきデットリフト(背面)、スクワット(太もも)、リフト(腕)のどれかを集中的に行なう。トレーニング部位は筋肉痛になるが、次は別の部位を鍛えるという方法で続けられた。
「正直、最初はシャフト(バーベルのバー)だけでも重い。しかも、各部位ごとに鍛えるのも人生初でした」
順番に鍛えていくため、筋肉痛から復活した頃にその部位を鍛えることになる。こうして1日1食300gのヒレ肉を食べながら筋トレをして、15kg減の目標に改めて向かったのだった。
最後の2週間は肉も200gに減らし…
■地獄の坂道ダッシュも…己を追い込んで68.9kgへ!
肉食と筋トレという努力の甲斐があり、1ヵ月で5kg減、中間発表の10月29日時点で10kg減と順調にダイエットした原さん。しかし、痩せたもののなんとなくまだ微妙な時期だったという…。
「まだ腹は出てますよね。筋肉がついた美しい“プラチナボディ”にならないといけなかったので、残り1ヵ月が勝負でした」
ダイエットにつきものの「停滞期」も始まり、そこで新たなトレーニングを取り入れることに。
「今度は有酸素運動で坂道ダッシュ。100m5本ですが、1本目の記録を測られて、2本目はそれ以上早く走らなくちゃいけなくて。遅いと1本やり直しです」
中間発表後から体に違う刺激を与えるため、ダンスやスイミングなども取り入れたという。しかし、トレーナーからは「この短期間ではかなり難しい。3ヵ月は欲しい」と言われたとか。
「広報としてステーキのブランドを体現して、健康的に痩せる。できたらすごいぞ、と自分への期待もありましたが、何より社長と約束をしたから…」
サラリーマンとしての気概がダイエットを支えたようだが、やはり期限内の目標達成にはまだ足りない。そもそも難易度の高いダイエットだったが、そこでさらに質を上げるため自宅トレーニングも取り入れることに。
「帰宅して夜10時から1時間のウォーキング、問題の腹回りの肉を減らすために腹筋をすることにしたんです」
期日までに15kg減らすためには、まだまだ追い込む必要があった。
「目標分は食べ終えたので、最後の2週間は肉も200gへ減らしました。お腹が空いて、体も動かなかったくらいですよ。デスクワークで体を動かさない分、水を1日4リットル飲んで内臓を動かすこともやりました」
そして、なんと20,734g(2.734kg)の肉を食べながら、ついに16kgの減量に成功! 減量分以上の肉を食べても太らなかったことが証明された。メディカルチェックでも血液検査などで異常はなかった。
ちなみに、ミッション中に社長へも糖質制限ダイエットの情報が届いたのか、メニューの付け合わせが糖質の高いコーンから糖質が低くビタミンCを摂取できるブロッコリーに変わるなど糖質制限ダイエッターに嬉しい変更までされたという。
「お肉のパワーがすごいことは体が実感しました。確かに、1日1食ではお腹が空きましたが、風邪もひかなかったですし。疲れにくくなったので“ステーキを食べて健康的に痩せる”ことが実証できたと思います。出世したら“ダイエット部長”と呼ばれそうなのは、カンベンしてもらいたいですけど(笑)」
もちろん、ただ痩せるのではなく“プラチナボディ”になるため、聞くだけで苛酷な筋トレも実践し続けたわけだが…。この肉食ダイエットを試して、パワフルに痩せるのはありか!?
(取材・文/渡邉裕美)
■取材協力/いきなり!ステーキ グラム単位の量り売りと立ち食いスタイルという、圧倒的なコスパの良さで人気のステーキ店。東京を中心に全国78店舗を展開している。原さんがダイエット 中に食べたヒレステーキは、全国共通メニューで1gあたり9円(税抜き)。店舗限定メニューとしてトップリブステーキ、リブロースステーキ、黒毛和牛などが揃っている。