肉食ダイエットを実践し“トリプル効果”で太らない、そして痩せる「吉川メソッド」の吉川朋孝先生

美しく筋肉をつけながらダイエットをして体質を改善し、太らない体作りをする「吉川メソッド」でおなじみの吉川朋孝先生。

体質を改善するための食事指導では、糖質をカットしてタンパク質と脂質を中心とした肉と野菜がベースの内容となるが、ポイントはタンパク質。そう、肉なのだ!

太る原因と思われがちなのに、ダイエット中に積極的にお肉を食べるのはなぜ? 食べちゃいけないものは? 迷えるダイエッターを指導し、結果を出し続ける吉川先生に聞く!

 ■血糖値が安定する、だから肉食は痩せられる!

短期集中メソッドで理想のボディラインを得ることができるとされる「吉川メソッド」。効かせたい筋肉に適確にアプローチする筋トレ以外には、食生活では肉や魚のたんぱく質を多く摂取することを重視している。

だから当然、これを考案、指導する吉川先生自身が超肉食主義! 健康のためにほとんど糖質を摂らない肉食生活だという。

「肉食は痩せますよ。というか、太りません」

それはタンパク質だから?

「というよりも、血糖値が上がらないからです。そもそも、太る原因は糖質を取ってしまうこと。ごはんやパンなど糖質を多く含む食品を食べることで血糖値が上がるから太ります。逆に、糖質が低い食品を食べると血糖値が上がらないから太らない。それが肉なんです」

そのカラクリはこうだ。血糖値が上がると“太るホルモン”と呼ばれるインスリンが分泌される。一方、糖質がほとんど含まれない肉はインスリンが分泌されにくい。

「インスリンが分泌されず血糖値が上がらなければ、生きるために必要な量の血糖値(ブドウ糖)は体脂肪をエネルギーに使い、肝臓でアミノ酸や脂肪を分解してできるグリセロールや乳酸などから作られます。これを“糖新生”といいますが、食べ物で糖質を摂っていると、糖新生はあまり起きません」

つまり、体脂肪が消費されないため痩せることができない?

「そうです。糖質を摂らなければ、太るホルモンのインスリンは追加分泌されません。インスリンは脂肪分解を抑制して脂肪合成を促進させますが、糖質が少ない肉食ならまずそれらを防ぐことができます」

糖質を食べると太る理由は、脂肪を分解させずに増やすからだったとは…!

外食は基本、肉という吉川先生。赤身肉であれば、食べられるだけ食べていいそうだ

思わぬ効能も。おススメの肉と食べ方は…?

「余分に糖質を摂らない肉食であれば、糖質を作るために肝臓で糖新生が起きてエネルギーを消費します。さらに、肉を消化するために使うカロリーのDIT(食事誘導性体熱産生)も見逃せません。1g・4Kcalの消費カロリーを比較すると、タンパク質は(摂取エネルギーの)30%を消費しますが、糖質はたった6%。肉を食べているだけで消費カロリーが増える。これが、肉食が痩せるトリプルの理由です」

糖質が多い食事を選択することは、食べるだけで起こる“痩せる連鎖”の機会を失くしているというわけだ。

「だから、僕は糖質を1gも摂らないほうが健康になれると思っています」

1gもダメって...シビアな糖質制限ダイエットじゃないですか!

「糖質“制限”ダイエットとするから、ネガティブな響きになるだけ(笑)。実際、糖質を摂らないほうが太らないし、健康になると思いますよ」

おまけに、肉食ダイエットではこんな効果まであるとか!

「睡眠の質が上がったのか、4時間30分から6時間くらいの睡眠でも昼間に眠くならない。起きている時間が長くなるので、時間を有意義に使えるようになりました。人生のコスパまで良くなるので肉食は得ですよ!」

肉はできる限りレアのほうが、タンパク質を効率よく体内に吸収できる。焼き肉なら表面をサッと焼く程度で食べたい

■カロリーよりも糖質を気にして食事せよ!

糖質を摂らない代わりに肉をたくさん食べる肉食ダイエット。おススメの肉といえば、これも今や定番の赤身肉だ。

「それも、ミネラル豊富な牧草を食べて雄大な自然の中に放牧された、なるべく自然に近い環境で飼育された牛の肉がいいですね。できれば外国産。選ぶ部位は赤身ならなんでもいいんですが、あえて順位をつけるとすればヒレ、テンダーロイン、ランプ、サーロインの順」

吉川流では食べ方にも一家言ありで、できる限りレアがおススメだそう。

「タンパク質が変性しないので吸収効率が高いんです。比べるとわかりますが、よく焼いた肉よりもレアのほうが量を食べられますよ。ちなみに、肉はどれだけ食べても構いません。その代わり、よく噛んでください」

食べ物=カロリーではなく、体を作る材料

ただ体重を落とすだけでは、筋肉が美しい肉体を作るのは難しいという

それでも肉といえば脂質やカロリーが気になるところ。しかし、それも吉川先生は一蹴!

「食べ物=カロリーではなく、食べ物=体を作る材料と考えないといけません。タンパク質や脂肪は、体を構成する重要な要素。ほとんどが材料に使われて、それでも余ったところでようやく中性脂肪になります。

それに、ある程度まで脂肪が増えるとレプチンなど脂肪をつけないようにするホルモンが働くので、糖質制限をしている限り肥満にはなりません。糖質さえとらなければカロリーは気にしなくていいのが肉食のいいところですから」

なお、NG食材はごはん、パン、そば、うどん、イモ類、みりんなどの調味料など「挙げればきりがない」そうだ。

加工品であればパッケージの裏書を見たり、生鮮食品ならば糖質の数値を頭に叩き込むなどしないと、意識的に糖質を避けるのは難しいかもしれない。それほど様々な食品に、そして思いがけないほど多量に入っているが、もっとも気をつけるべき食べ物といえば…?

「果物じゃないですかね。僕は“老化の食べ物”と呼んでます。果糖はブドウ糖よりも血糖値を上げませんが、ブドウ糖よりも血中の中性脂肪を上げるので太りやすい。グリケーション(生体内糖化反応)も早く、コラーゲンと結びついて肌のくすみやしわ、たるみを誘発します。

美容にいいと朝からフルーツたっぷりのスムージーの習慣は、自ら太るための老化ドリンクを作っているということですよね(笑)」

な、なんと! 彼女が朝スムージーをやっているなら一刻も早く止めさせるべきか!?

■適正体型と理想体型を勘違いしない!

ところで肉食ダイエットの最中に、停滞期は訪れないのだろうか?

「何をもって停滞期というか、なんですよ。糖質を摂らなければ肥満はなくなります。緩やかであっても、適正体重になるということ。太りすぎず、痩せすぎない健康体になるんです。ところが、適正と理想の体重を勘違いしている人がとても多い」

なるほど! 確かに、極端に肥満からのスタートではない限り、ダイエットを始める時に身長に対する標準体重よりも下の数字を目指すもの(笑)。

「体重だけ減らしたいのであれば、カロリー制限して寝てればいいだけ。不健康ですけど、筋肉が落ちて体重は減りますからね」

理想多重ではなく適正体重こそが重要!

でも、痩せたからには筋肉が見えるようなマッチョもしくはメリハリボディになりたいもので…。

「以前より痩せたのに腹筋がちっとも割れない、と不思議がる人もいますが、実は見た目が健康的で腹筋が割れた状態を作るには相当の筋肉がついてないといけません。皆さんが求めているものは適正体型というよりは理想体型といったところでしょう」

肉食ダイエットで痩せて腹筋も割りたい場合は、まずは時間をかけて筋肉をつけるところから始めないといけないのだ。

「無理なカロリー制限で食事量を減らして運動量を増やせば、腹筋を見せることはできます。ただ、これは理想の体型になるためのもので適正ではありません。続けられないから、止めた途端に元に戻る。適正体重こそが重要で、その人の筋肉量に合った適性の脂肪がついた体重のことです」

カロリー制限ありきのダイエットは筋肉を減らすため基礎代謝が落ちて、結果、太りやすい体になることもあるので要注意だ。

但し、タンパク質を十分に摂取できる肉食ダイエットは、今ある筋肉を減らさず適正体重になりやすい。理想の体型へボディメイクするための準備段階ともいえる手法なのかもしれない。

肉食ダイエット中におススメなのは、太ももや背中など消費カロリーの高い大きな筋肉を鍛えること。最後に、今回はひとりでもできる「シシー・スクワット」を吉川先生に教えてもらったのでご参考に!

●太ももを鍛える「シシー・スクワット」①骨盤を斜めにして、膝を前に突き出して太ももの前を伸ばす。ひとりで行なう際はバランスが崩れるため、片手は壁や椅子などに置く

②かかとは上げたまま、膝を落として脛(すね)を床と並行にする。①に戻すのを8~12回×3~5セット行なう

 

■取材協力/吉川朋孝先生“なりたい体になれる”パーソナルトレーニング「吉川メソッド」を考案。東京都の白金を拠点にパーソナルトレーニングを行なっている(問合せ:03-6450―4405)。数多くの書籍も出版。最新書籍は『DVD付き 狙った筋肉を鍛える! 筋トレ完全バイブル』(朝日新聞出版)

■取材協力/焼肉ブルズニューヨーク・ソーホーをイメージしたモダンシックな店内でいただけるのは、上質な赤身や脂身が特徴の黒毛和牛の焼肉。静岡育ちの黒毛和牛は一頭買い、野菜は提携農家から直接仕入れるこだわりよう。吉川先生のお気に入りお店で、よく食べるのは様々な部位が楽しめる「赤身の盛り合わせ」(4800円)。住所:東京都麻布十番2-5-1 マニヴィアビル3F 電話:03―6434―5418 営業時間:月~土ランチ 11:30~14:30(L.O) ディナー 17:30~23:00 (L.O 24:00 / 閉店 25:00)定休日:日曜日

 

(取材・文/渡邉裕美 撮影/五十嵐和博)