ドバルダン!(クロアチア語でこんにちわ)
世界にはその美しさから「真珠」と称される場所が数々存在します。「インド洋の真珠」スリランカ、「カリブ海の真珠」キューバ、「ドナウの真珠」ブダペストなどなど。
そしてここ…「アドリア海の真珠」と呼ばれるクロアチアのドゥブロヴニク!
アドリア海とその周辺は『紅の豚』の舞台ですが、青い海とオレンジ色の屋根が印象的なこの景色は「『魔女の宅急便』の街にそっくり!」と囁(ささや)かれて…いや、叫ばれています。
ジブリの公式発表では『魔女の宅急便』のモデル地はスウェーデンだけど、宮崎駿監督は作品に各地の風景を取り入れているらしい。
もしかしてだけど、ドゥブロヴニクもその内のひとつなんじゃないの~?
ドブロク…ドゥヴロヴ…、ああ、発音も難しければ覚えるのも難しい都市名ですが、1979年に世界遺産に登録された旧市街には確かにジブリな絶景がありました。
城壁に囲まれた旧市街のメインゲート「ピレ門」をくぐると、目抜き通りのプラツァ通りには土産屋や飲食店が並び、テーマパークのような景色が広がる。
私は石畳の道から路地裏に入り「SOBE」を目指した。ソベというのはいわゆる民泊で、個人宅のお部屋をお借りするのだ。
「着いたら電話してね~」と宿主に言われていたが、携帯のない私は到着時間をメールしておき、直接お宅へ向かった。
路地裏は雰囲気はあるものの石段が急で、スーツケースを持った旅行者からは「死ぬかと思った」と不満が出るほどだが、皆さん、大袈裟ですね。ここはバックパッカーの脚力の見せどころ。普段鍛えている大腿筋を…ううっ、やっぱキツイ!
ナヨナヨバッパーな私は壇蜜さんよりもハアハアしながら到着すると、キキに部屋を貸してくれたおソノさんのような、ハキハキとした女性が出迎えてくれた。
「よく来たね。支払いはユーロでもクーナでもいいよ。翌日の予約はないからゆっくりしていきな。帰る時はカギを部屋に置いていってね!」
テキパキと部屋の説明をしてお金を受け取ると、おソノさんは忙しそうにソベを後にした。同じ敷地に住んでいるのかと思いきや、彼女は旧市街の外に住んでいるらしい。やっぱり旧市街の中は家賃が高かったりして生活には向いていないのだろうか。
ところで、クロアチアの女性というのは物事をストレートに言うからキツイと聞いていたけれど、優しいしハッキリしていて私は付き合いやすそうだなと思った。
願いが通じて…
荷物を置いて部屋の窓を開けると、そこに現れたのはオレンジの屋根、屋根、屋根! キキが飛んでいそうな景色をいきなり見られて、「私この街が好きです!」と思った。
しかし、あいにくの雨。空も暗い。これじゃあ観光にも行けないし、スーパーにも行けない。私は「魔女さん、ニシンのパイを届けにきてくれないかしら」と窓の外を眺めていた。
もちろん宅急便が現れることはなかったので、雨が弱まってきたのを見計らい買い出しに行くことに。プラツァ通りの突き当たり、ルジャ広場には中国人や日本人のツアー団体客が一気に増え、この街の人気具合がうかがえる。レストランやカフェには割高なカプチーノをすする客でいっぱい。
すっかり観光地化されているけれど、広場でキャベツの千切りの実演販売もしていたし、きっと生活している人もいるのだろう。
私はスーパーでワインとチーズを買い込むと、翌朝の晴れを願い、ベッドに寝そべりいつものように予習をすることにした。パソコンを開いて、静かな雨の日にお布団に包まれてたら…スヤスヤ。
ハッ!
ヨダレが垂れてきて起きると、次の日の朝になっていた。
空は快晴! こんな素敵な街にはやっぱり神様がいて、願いをかなえてくれたのだろうか。
「いけない! スルジ山に行かなくちゃ!」
スルジ山の頂上からはオレンジ色の街と青いアドリア海のコラボ、まさに『魔女の宅急便』の絶景を一望できる。(日本人の)旅人たちはここで、必ず木の棒にまたがってジャンプしたりして、喜々とした顔で“キキ気分”を味わいます。
私は急いで洋服に着替えて、駆け足で石段を上る。山の麓を目指し一直線!
城壁から街を見下ろせば
ケーブルカー乗り場にたどり着くと…、
「強風のため、ケーブルカーは中止です」
ガーン。神様いなかったじゃーん。山は自力で登ることもできるけど、滞在時間は残り半日だし、石段の昇降ですでにふくらはぎはパンパン。
スルジ山は諦めて「ぐるり城壁めぐり」をすることにした。旧市街を囲む城壁は約2キロ。そして高さは最高で約25メートル。
城壁歩きは100クーナ(約1800円)もして、他の観光と比べるとちょっとお高い気もする。でも、きっと十分な絶景が見れるでしょう。
それにしても、めっちゃ観光地なのにユーロ払い不可で、現金は現地通貨のクーナしか受け付けないという不便っぷりはちょっとツッコミたい。
さて、早速、城壁に上り空中散歩が始まると、アドリア海から吹く風はビュンビュン。荒れる大波の飛沫と要塞や大砲などは戦争時代をイメージさせられた。
次第に強風がおさまり陽の光がポカポカと差し込んできた。
城壁から街を見下ろすと、バスケットコートがあったり、日向ぼっこをする猫の群れがいたり、洗濯物が干してあったり。人こそなかなか見かけなかったけど、そこで暮らしている人の生活をちょっとのぞき見した気分。
そんな中、突然現れたギロチンにはビックリ。でも、街の歴史とは関係ないんだって。謎は残るけど、ひとまず、ホッ(笑)。
城壁一周が終わった頃には、この街を飛んでいたキキのように素直で純粋な、なんとも清々しい気持ちになっていた。
旅中は危機もいっぱいで「落ち込んだりもしたけれど、私は元気です」って伝えたい。
もしかしてだけど、私が旅を続けていられるのは、みんなのやさしさに包まれているからなんじゃないの~? そういうことだろっ!
【This week’s BLUE】 『紅の豚』を彷彿(ほうふつ)させる景色。旧港と奥に見えるのはスルジ山。
●旅人マリーシャ 平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】