駅ナカ、駅前などでよく見かける1000円カット。激安なだけに質には期待できないと思いがちだが、実はオーダー次第で…

10分1000円という安さと早さが魅力の1000円カット。

だが、実際に行ってみたら「左右の髪の長さがバラバラ!」、「人生最悪の髪型にされた」など仕上がりに不満を持つ人も多数いる。ネットの店舗レビューのみならず、友人や同僚などから不満を聞いたことがある人もいるだろう。

しかし、1000円カットの美容師側としては「もっとちゃんと指示してくれればうまく切れるのに…」と歯がゆく思っている節(ふし)もあるよう。要は、オーダーの仕方ひとつで思い通りの髪型に仕上げることができるというのだ。

そこで1000円カットで働く、現役美容師Uさんにポイントごとの話を聞いた。

■3つのNG行為が、思い通りのスタイルを遠ざける!

NG1 スタイリング剤をつけたまま行く「1000円カットは、髪を切る前にシャンプーで髪を洗いません。ワックスなどスタイリング剤がついた髪の毛にはクシが引っかかってしまい、しっかり長さを見ることができないため左右の長さが違うなど仕上がりに影響します」

NG2 寝ぐせをそのままにして行く「霧吹きで髪を濡らしただけでは、寝ぐせは直りません。その状態でカットをすれば、寝ぐせの場所と別の場所の長さが変わってしまいますね」

NG3 帽子を被って行く「帽子を被ると跡がつきます。その跡は寝ぐせ同様に髪を濡らしただけでは直りません。希望される仕上がりの長さに影響しますし、帽子の被り方によって跡の高さが違えば、左右の長さが違うことにもなります」

1000円カットは仕事終わりや営業の合間に寄る、休日に寝起きのまま行くから帽子で寝ぐせを隠す……なんてありがち。美容室に慣れていると、3つのNGは無意識にやってしまうのでは? 髪の毛を切ることに特化した1000円カットにはシャンプーがないことを心に留めておこう。

■3つのNGワードでブサイクヘアのできあがり!

ブサイクヘアワード1「おまかせします」「後でいろいろ言われるのも困るので、こう言われたら少し長めに仕上げます。でも、内心、終わったら“もう少し切れ”って言うんだろ”と思ってモチベーションが下がるのがホンネ。10分で1000円なので切り直したくないんですよ」

ブサイクヘアワード2「普通で」「なんだよ、普通って。スポーツ刈りにしてやろうかと思っちゃいますよ(笑)。襟元(えりもと)を刈り上げるのか、刈り上げないのかなど人によって普通は違います。店によっては、バリカンで横と後ろを仕上げて短くしようとするので、結果的に大失敗ヘアになりやすいでしょうね」

ブサイクヘアワード3「いつもと同じように」「覚えていられません! 普通の美容室は、さも覚えているかのようにカウンセリングしますが、それはカルテがあるから。1000円カットにカルテはありません。僕の働く店は1ヵ月に700人ほどの来店があるので、覚えていられるほうが不思議な話で…。それほど期間を空けずに3~4回来ていただければ、さすがに覚えていますけどね」

1度行くと、ついつい常連感覚で言ってしまいがち? また、意外と多いというのが「この感じの3ヵ月前(や半年)のイメージで」と言う人。1ヵ月前ならまだしも、伸びきった髪の毛から3ヵ月以上前の状態を予想するのはプロでも難易度が高すぎ。これも担当者との間に共通イメージが作られず、ミスオーダーとなる。

押さえるべき3つのポイント

普通の美容室よりは安いが、お金を払う以上は満足感も得たい!

■3つのポイントを押さえて思い通りのヘアスタイルに!

ポイント1「○センチ切りたい」など、数字やイメージをしっかり伝える「大前提ですが“自分のスタイル”を持ってください。そうすれば、今日はどのくらい切りたいのかわかるはず。切りたい長さを数字でしっかり伝えてください。店頭も目安になる数字がないと迷ってしまいます」

ポイント2「前髪の長さ」を伝える「前髪の雰囲気がイメージと異なると、実は他は希望通りでも失敗された印象が強くなるはず。それを避けるためにも、前髪がマユにかかるか、かからないのか。また、揃(そろ)える感じなのかなど希望をしっかり伝えて、担当に前髪のスタイルを意識させてください」

ポイント3「横と後ろの長さ」を伝える「サイドは耳にかかるか、かからないのか。バリカンを使っていいのか、使わないのかも伝えてください。襟足も、例えば“短くて自然な感じ”など言っていただければ、バリカンで刈り上げただけなどの失敗は避けられます」

具体的な数字を伝えられると、イメージを共有した上でカットに集中できるため失敗も少ない。もっとも、それ以上の細かい注文は「メンドー。だって、1000円なんだもん(笑)」というわけで、ほどほどが肝心のようだが…。

また、希望するスタイルにするためにヘアカタログやタレントの写真を持っていく人も多いだろう。しかし、これも要注意。正面しかヘアスタイルが写っていない写真では、後ろのカットがわからず担当を困惑させる場合も。ヘアカタログのように前・横・後ろがわかればいいが、写真が中途半端だとブサイクヘアを招いてしまう!

実は質の高い1000円カット

1000円カットで働く人は、実はベテランが多い!

■1000円カットを理解すれば有効活用できる!

最初に1000円カットが流行った時は、サラリーマン相手で横と後ろをビシっと真っ直ぐ切り、上はほとんど切っていなかったという。

「今でも時間短縮のため、まず真っ直ぐ切った後にすいてラインをぼかします。ラインが残っていると失敗感が強くなってしまうので…。だから希望するヘアスタイルを担当がイメージしやすいように、具体的に数字を伝えるのが大事になるんです」

また、流行った当初は美容・理容師に料金の50%がバックされる完全歩合制だったため、それこそ5分で切り終えて人数を回すことを優先、接客が雑となるケースも。

「1000円カットに美容室や理髪店と同じサービスを求められても、というのはありますが(苦笑)。最近はおしぼりを出したり、女性にはドライヤーを使うか聞いたりしてブローをしてくれるなど、付加価値のサービスをする店も出てきていますよ」

さらに、働く人たちの労働環境の変化が、これまでの“10分”くくりに若干の変化をもたらしているようだ。

「最近は歩合制から給料制になっていますし、そこまで10分にこだわってカットしていません。話していて楽しい人やこだわりがいのある人などは特に。僕も実際、常連の金髪のおばちゃんには20分かけちゃったりしますしね(笑)。 もちろん、切り直したり手間をかけすぎて30分もかけていれば“使えないやつ”と仲間内で思われますけど」

そんな1000円カットは、練習会などカット以外の仕事がないため時間で考えれば普通の美容室や理容店より給料がいい。そのため、働くのはキャリアが長い美容師・理容師が多いそう。今回、話を聞いたUさんもロンドン郊外やニューヨークの有名店で活躍したキャリア15年近くのベテランだ。

「某チェーン店はスクールを持っているためキャリア1~2年の新人もいますが、他はキャリア10年以上の人がほとんど。シャンプーがないので手が荒れてしまった方や、僕みたいに団体行動ができない人とかが転職してきますね(笑)。それはともかく、平均的には1000円カットの美容師の腕は悪くないはず」

その腕前を敏感に感じ取って1000円カットを活用しているのは、意外にもキャバ嬢だとか。

「最近、子供やおばちゃんが増えていますが、実はキャバ嬢も多い。髪の毛が重くなってきたからすくだけ、とかで来店するんです。美容室だとすくだけなのに揃えるし、お喋りりもしなくちゃいけないし面倒なようですね」

なお、1000円カットは美容と理容のどちらかで開業登録されているが、それにより働くスタッフが異なる。美容師に慣れている人は理容師のかっちりとしたカットに違和感を覚えるし、理容師に慣れている人は美容師のニュアンス重視のカットに違和感を覚えるだろう。

「どちらの店がいいのか相性もありますよね。1回は店に足を運ばないといけませんが、どちらで登録しているのかを確認してから切ってもらうといいかもしれません。1000円カットでも必ず自分に会う人はいると思います。3回行っても美容室より安いんですから、使いこなせればお得だと思いますよ」

(取材・文・撮影/渡邉裕美)