ジェノバの中心、フェラーリ広場の噴水

チャオチャオ!

大航海時代の探検家コロンブスや「母をたずねて三千里」のマルコを生んだ街、イタリアの海洋国家・ジェノバにやってきました。

ジェノバといえば、香りの良い高品質なバジルの産地。私はなかなかのハーブ愛好家で、自分で育てたりしちゃうくらいパクチストでルッコラーでバジリ娘(コ)です。

ヴェネツィアのリベンジも兼ねて、今度こそ美味しいものが食べたい! 本場ジェノバのジェノベーゼを味わいたい!…というわけで、今回は「食」にフォーカス。「美味しいパスタをたずねて三千里」のマリーシャです。

コロンブスが幼少期を過ごしたというお家

ヴェネツィアからバスで西へ4時間。ジェノバに着くと観光客はぐっと減り、その代わりにアフリカ系黒人や中国人などの移民が増えた。

彼らは洋服屋や料理店を営み、路上では傘やカバンを売ったりもしていた。ここ本当にイタリア?と聞きたくなるような第一印象だ。

ジェノバの街中

ジェノバには宮殿が並ぶガリバルディ通りなど美しい世界遺産もあるが、迷路のように入り組んだ石畳の細路地は薄暗く、一歩裏に入るとちょっと不安。急ぎ足で宿に向かった。

宿に着くと、キッチンには「ジェノベーゼペーストの作り方」、その横には「シチリアンマフィアからワインを買わないように」と書かれている。なんだかゴッドファーザーを思い出させるような注意書きだが、ここは映画の世界ではないので気を付けなければ。

美味しい夕飯を食べる前に何かあっては困るので、私は細心の注意を払い街に出かけた。

宮殿が並ぶガリバルディ通り。世界遺産の一部だがそこまで派手ではない印象

イタリアといえばピザのイメージが強いが、ジェノバとなると、なんといってもフォカッチャ。早速、人気のフォカッチェリア(フォカッチャ屋)にぶつかったので、ひとつ購入。

ついでに名物の「ファリナータ(ひよこ豆の粉を練って焼いたチヂミのようなもの)」もビールによく合うとのことなので試してみることに。

しかし、夕方に行ったせいか、昼の残りのフォカッチャは冷えて硬くなっていたし、ファリナータはかなり塩分が強く脂っこい。

「パンと塩分」を食べたという感じで、あまり感動もないままお腹がいっぱいになってしまった。食べるタイミングを間違えたかも。(翌昼の焼きたて時間は行列ができていて美味しそうでした!)

フォカッチャリア。手前で売られている丸くて黄色いものがファリナータ

念願のジェノベーゼを注文するも…

さて、今日は何食べようかな?

翌日は朝食を抜き、調べておいた人気のジェノベーゼ専門店を目指す。

まずはイタリア伝統料理、牛の第二胃袋ハチノス=トリッパをオーダー。店員さんに「トリッパはスリッパ?」とくだらないギャグをかまされたので、なんとなく「Si、Si(はいはい)」と言って、ニッコリしとく私。

イケメンだと思ったけど「笑いのツボが合わないのはちょっとなぁ」などと上から目線で妄想していると、出てきたのはカリカリに揚げられたトリッパ!

てっきりトマト煮込みと想像していたトリッパはスナック菓子のようなフライの姿でやってきた。店員さんはギャグを言っていたわけではなく「トリッパはフリッタ?(揚げる?)」と言っていたようだ。

期待していたものとは違ったけれど、これがまたサックリとしていて美味しい。内臓系が苦手な人もコレなら余裕でしょう。

トリッパ4.5ユーロ(約600円)

そしてついに本命、ジェノベーゼを頼む時がきた。

現地では、その緑のソースは「ペスト」と呼ばれ、それを絡めるパスタの種類はいろいろある。

市場で売られていたペスト

定番は「トロフィエ」という名前のネジネジに練ったショートパスタ。…なんだけど、ネジネジパスタはなんだか見た目が青虫っぽい~(笑)。それに私はペラペラっとした平打ち麺が好きなので、今回は前から気になっていたラザニア生地を乱切りしたような麺を注文することにした。

名前がわからないので、ちょうど隣のお客が食べていたそれらしきものを「アレ!」と指さしオーダー。

数分後、出てきた料理は…なんだか様子がおかしい。至近距離で見ると、そのパスタはひし形っぽく乱切りされてはいるものの、私が想像していたペラペラ麺とは違っていた。

見た目はプツプツと穴があいていて、少し厚みがある。口に入れるとスポンジからジュワっとバジルのペーストがあふれ出す感じ。ホットケーキをカットしてペストで炒めたようなもので、手打ちのようなコシがないのだ。

中尾彬ばりにお聞きしたい、「おいおいおいおい、なんだい? これは」

ベストペストを食べるラストチャンス

遠目から隣の客のパスタを見てる分には想像していたペラペラ麺のように見えたが、どうやら私が頼んだのは「テスタローリ」だったらしい。これは、小麦粉を水で溶いて焼いた古代ローマ時代発祥のイタリア最古の生パスタなのだそう。

なんだか肩書はカッコイイけれど、正直あまり好みではない。ミスった。

イタリア最古の生パスタ「テスタローリ」9.5ユーロ(約1300円)

(私が頼みたかったのは「マルタリアーティ」というパスタだったらしい)

後日、イタリア人の旅友に、一体パスタは何種類あるのか聞くと「何種類かはわからない。とてもいっぱいあるよ。地域によっても違うし、自家製では卵を使うか使わないかとかもあるし。昔はおばあちゃんがよく作ってくれたんだよ~」

ああ、パスタの世界は奥が深い。そして私の胃は浅い。お腹はパンパン。

しかし、このままではいかん。明日にはもう別の街に行くので、次の空腹時がベストペストを食べるラストチャンスだ。私はジェノバでの最後の食事はローカルの知恵に頼ることにして、宿主オススメの店へ向かった。

すると、まだ開店1時間前だというのに人が並んでいるではないか。いや、正確に言うと並んではいない。たくさんの人が集まっていた。

というのも、ヨーロッパ圏の人というのは、あまり「列」という物を作らない。バスに乗り込む時なんかもそうだったけど、グシャっと人が集まり平気で横入りしてくるのだ。イメージでいうところのインド。

私が何組かに抜かされてアワアワしていると、一緒に並んでいたカップルが助けてくれて無事着席。

待ってる人いっぱいの忙しい店内

見た目が青虫とか言ってる場合ではない。今度こそネジネジパスタを頼む。

ジブリ映画に出てきそうなチャキチャキのおばちゃんがサーブしてくれたペストは…バジルとニンニクの香りが鼻を抜け、すりつぶした松の実のツブツブ食感と濃厚なチーズがネジネジと絡み合う。ウ、ウマーイ!!

そしてなにしろ安い! ほとんどのレストランでは10ユーロぐらいのパスタが、このお店は半額の5ユーロ(約650円)。人気なワケだ。

カップルは「ペストはいっぱい食べてるし、長時間並ぶほどではないな。ペストの瓶詰を買ってくれば家で作れるよ」と言っていたけど、私はギリギリセーフで大満足なペストを堪能することができた。

マイベストペスト

世界遺産も良いけれど、やっぱり美味しい旅は最高。胃袋をつかまれたら弱いのは、女だって同じです。すっかりジェノバが好きになりました。

「いつかまたバジルを育て、マイペストで素敵な男性の胃袋を掴んでやろう」

そう心に決めたマリーシャであった。

宿のキッチンに書かれていたペストの作り方

【This week’s BLUE】高台から見た港町ジェノバ

●旅人マリーシャ平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】