ボンジュール! コマンタレヴ?
「レモン祭り」を終えて、お次に参加するのは「ニースのカーニバル」。その規模はフランス最大で、「ヨーロッパ三大カーニバル」のひとつに数えられる。130年を超える歴史を持ち、毎年100万人以上の観客、そして世界から1000人以上のパフォーマーが集まるほどの大きなお祭りです。
今年のテーマは「メディアの王様」。
メディアはいろんな情報を運んでくれる媒体ですが、近年はネットメディアのおかげで、どこにいてもなんでも知ることができるのでほんと助かります。帰国した時に浦島太郎状態にならないように、私もちゃんと「日本のニュースをニースで入手」してますよっ。
さて、待ちに待ったパレードの日。
お目当である夜の部「光のパレード」は21時スタートと意外に遅い。よし、先に自炊用の買い物でも済ませてから向かうとするか。急っげー!
スーパーにはフランスワインが1ユーロからズラっと並び、私にとってはこちらも楽しいイベント。安くて美味しいワインを探すために、いちいちワインアプリでレビューをチェックしていたら宿に戻る時間がなくなってしまった。
「ヤバい、カーニバル始まっちゃう。メルドッ!(仏語でクソッ!)」
こんなこともあろうかと、そのままカーニバルに行ける準備はしてきた。仮装すれば入場無料との噂も聞いていたので、一応、ヴェネツィアのマスクも持ってきているし、このまま行こう!
マセナ広場の会場に到着。先日は解放されていた場所に高い壁が設けられ、たくさんのお客さんが列を作る。そして、入場口では荷物チェックも行なわれていて厳重だ。
あれ? 「レモン祭り」がしっとりめだったので、コート・ダジュールの祭りはさぞかし穏やか系かと思ってたけど、想像してたよりもワッショイしちゃう感じ?
「パルドン(すみません)。私、夕飯用の生肉とワインボトル持ってるんですけど、入れます?」
「ノン。(ダメに決まってんだろ、ジャポネーゼ)」
そりゃそうだろう。でもカーニバルはあと5分で始まる。どうするマリーシャ?
仕方ない、会場横にある公園のベンチの後ろにこっそり隠しておこう。(暗いし誰も盗らないでしょ。最悪なくなっても10ユーロだし、カーニバルに遅れるほうが嫌だ…)
私は覚悟を決めてビニール袋をベンチ裏にかけ、顔にはマスクを付けて入口に向かった。
壁の中は別世界!
それにしても、どの程度から仮装と言えるのだろうか。フル仮装じゃないとダメかな? そもそも無料の噂は本当かな?
不安になっていると、私と同じようにマスクや帽子の仮装をしたグループが来たので、先を譲って観察してみることに。
すると、入口の係員に「ノン。(おとといおいでシルブプレ!)」とあっけなく撃沈させられていた。どうやら無料制度は存在するっぽいのだが、思った通り、フル仮装のみのようだ。
始まる前から仮装のダメ出しされたらテンション下がるし(笑)、恥かく前に入場券を買いに行こうっと! 観覧席は25ユーロとちょい高なので「立見でOKッス! メルシッ!」と11ユーロ(約1480円)のチケットを買って会場に滑り込む。
「トロア、ドゥー、アン……ワアアアァ~!!」
カウントダウンと共に歓声が沸き上がり、バアーンとクラッカーのような音とイケイケの音楽が流れ始めた。
「ええ~!! 何コレ、ちょー楽しい!!」
私はまるで珍百景を見たように驚いた! 壁の中は一瞬にして別世界!
天高く舞い上がる紙テープや巨大な風船凧、無数の光の演出が建物や地面を鮮やかに彩り、賑(にぎ)わっていた。そして、観覧席が上からパレードを見下ろすのに対し、私がいる立ち見の場所というのは…なんと、パレードが通るエリアと同じなのだ!
立ち見の人々はパレードの道をなんとなく空けてはいるものの、山車に触ったり、パフォーマーが踊る中に入って写真を撮ったり、パレードと一体になり楽しんでいる。自由に歩き回れるし、この臨場感はスゴイ! まさに体感型カーニバル!
さらにここで、日本の80~90年代に一世を風靡したあのアイテムが大活躍。体に悪そうな科学的な匂い。樹脂状の液体が紐のように飛び出すパーティーグッズ。そう、「ひもスプレー」だ。
子供たちはスプレーを山車やパフォーマーたちに向かって容赦なく「ブッシュー!!」っと吹きかけた! しかも顔面に!? これは只事ではない!
しかし、タイのソンクラン(水かけ祭り)やインドのホーリー(色粉かけ)のように、お祭り騒ぎに「怒り」は無縁? 山車の上から反撃をする盛り上げ隊、ダンサー、着ぐるみ、大道芸人などは、なんとか「笑顔」を貫いてパフォーマンス。プロや~!
風刺の効いた山車が次々登場!
そんなスプレー戦争の中、今回のテーマ「メディア」を表現する山車が次々と登場。
10メートル以上にも及ぶ巨大な山車は迫力満点で、ニースにそびえる観覧車や夜空に浮かぶ月とのコラボは見事。
そしてギョっとしたのは、「ダメよ~ダメダメ」と聞こえてきそうな裸のビニール人形とアニマル柄のガウンを羽織る権力者(政治家?)の行進だ。
「THE TRAP(罠)」というタイトルのこの山車、見た目はファニーだけれど、出世やキャリアを左右しちゃうメディアの残忍さを表している。
トイストーリーの人気キャラを乗せた可愛らしい山車は「デジタル世代に生まれ、ソーシャルメディアで育つハイパーキッズ」を描写。
三猿は「全てを言え、見ろ、聞け」というメディアのモットーを表し、セレブ誌柄のドレスを着た女王様の頭にはスマホが刺さっていた。
これはこれは…。日本じゃ採用されなさそうな、時代や社会風刺を込めた「スキャンダラスな山車」が16体。こういうところが海外の祭りは面白いよね。
私はパパラッチのごとくシャッターを切りまくった。
そして「パレード内に侵入」「スプレー缶」「物議をかもす山車」など、日本ではタブーとなりそうなものにまみれてのパレードは2時間で終了。あっという間に時間が過ぎていく濃密なパレードに大満足でした!
さてと、帰って打ち上げするか。
「お肉とワインちゃんは元気かなっー?」
すると…ベンチのあるところは柵で囲われていて門が閉まりクローズと書かれていた。
「ガーン! 夜になると閉まるの?」
荷物は目と鼻の先にあるのに! どうするマリーシャ…高い柵を登る? でもカーニバルということでポリスやら銃を構えた人で厳戒態勢。このご時世に怪しい外国人なんて撃たれてしまうかもしれない。
しょぼんと下を向くと、ん? 門の下に子供が通れるくらいのスペースが……ごめんなさい、行きます! 私は小さい体を利用して猫のようにスルリと門の下をくぐり、肉とワインを無事ゲットすることに成功! チビで良かった~。
3ユーロほどのワインも、楽しいカーニバルの後には、シャトーなんたらを飲んでるくらい幸せな気分にしてくれましたとさ。
ニース、ナイスです!
【This week’s BLUE】 フェイスブックマンやツイッターバードのパフォーマンスもありました!
●旅人マリーシャ 平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】