質問も回答もカオスなことで話題となったhasunoha 質問も回答もカオスなことで話題となったhasunoha

「そうだ、お坊さんに聞こう」ーーそんな軽いノリでも、宗派を越えたお坊さんたちが悩みを解決してくれるQ&Aサイトhasunoha(ハスノハ)」が“娑婆(しゃば)”で話題となっている。

深刻な悩み相談はもちろん、ガチャ課金や腐女子に関する煩悩まみれの質問もOK! 真摯(しんし)な答えから、「10代でBLに関心もって何が悪いってんでしょう。」とはっちゃけた(?)回答で悩みを吹っ飛ばしてくれる…そんな意外なお坊さんのリアクションが反響を呼んでいるのだ。

回答する約150人のお坊さんも教師やDJ、大道芸人から女子プロレスラーの尼さんといった副業持ちまで異色揃(ぞろ)い。答えてもらった深イイ回答には、「いいね!」ならぬ「有り難し」ボタンを押して拝むという。

何から何まで浮世離れし、興味の尽きない「hasunoha」。そこで今回、Yahoo!やGREEでWEB事業に携わってきた代表の堀下剛司さんと、共同代表で浄土宗光琳寺(こうりんじ)の副住職・井上広法さんに前後編にわたってインタビュー。謎のサイトの全貌が明らかに!

*** ―いきなり失礼を承知でお聞きします。回答率99%とのことですが、ぶっちゃけ、お坊さんって暇なんですか?

井上副住職 ホントに失礼なこと聞きますね! ぶっちゃけ、暇な人もいて、その差は激しいです。僧侶はお寺に住むことが仕事なので、依頼を待つしかない。だからカメラやNゲージなど趣味をプロ級に極める人もいます。ただhasunohaの回答は強制ではないので、それぞれ自分のタイミングでやってもらってるとしか…。

堀下代表 お坊さんには大きく3つの役割があるそうなんです。【1】修行をして自分自身の仏教的な価値観や生活を高める 【2】地域に根ざして檀家さんのために活動する 【3】世の中で苦しんでいる人を助けるーーこの3つのどこに比重をおいているかは人それぞれですが、在籍しているお坊さんは【3】の社会的な面に比重を置いている人が多いのだと思います。

―本当に失礼な質問ですいませんでした(笑)。質問者は女性が多いようですが、年代は幅広いですよね。

堀下代表 女性が8割で、最初は特に40代女性から親の介護など「死」に関する質問が多かったです。普通、お坊さんと会うのは葬儀くらいですからね。そこから徐々に若い世が入ってきて、今は恋愛相談などする10代も増えました。

井上副住職 でも、10代の相談者候補に「お坊さん」が入ってるんですよ! 僕ですら昔はそんなこと考えなかったのにすごい。そんな世の中が逆に心配です(笑)。

「死にたい」女性も救ったお坊さんたちの言葉

■「死にたい」という女のコに対して…

そんな質問者がお坊さんに相談する悩みは様々。ライトなものからヘヴィなものまで多岐にわたるが、中にはこんな質問も。

----------------------------------- ■死にたい(20代女性) 勉強出来ない。片親にも関わらず、多くの負担をかけている。親に負担をかけまいと沢山嘘をつく。友達いない。こんな自分が嫌です。嫌で嫌でたまりません。死にたいです。 ----------------------------------

「死にたい」と思い詰める若い女のコ。すると、この質問者を助けようと多くのお坊さんが回答し、「苦しくなったらいつでも電話ください」と電話番号を明記するお坊さんまで現われた。井上副住職も堀下代表もその行方を見守っていたところ、最後に質問者の女のコからこんな返信が。

---------------------------------- 皆様、温かいお言葉ありがとうございました。急には変われないかもしれませんが、少しずつ頑張って1日を精一杯生きてみようと思います。本当にありがとうございました。 ----------------------------------

堀下代表 このお礼が来た時はすごく嬉しかった。お坊さんの言葉が少しでも生きる希望のきっかけになってくれたって思うと、作って良かったなと思います。

―回答するお坊さんは解決だけでなく、時には喝(かつ)を入れて叱ってくれますよね。

井上副住職 最近は、叱り方を間違えるとパワハラや虐待と捉えられてしまうので、今は「叱り方」が問われている時代だと思うんです。そんな中でお坊さんは、別世界の人だから「叱れる存在」というシード権を持っていると思うんです。たまに「こんな私を叱ってください」って人や、叱って喜ぶ人さえいますけどね(笑)。

―でも中には、荒らしや不適切な質問をする人はいませんか?

堀下代表 これは予想外でしたが、お坊さんが一生懸命、回答しているからか、変な誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)もないです。ディズニーランドと一緒で、警備員がいなくても自然ときれいに使ってくれる。質問者と回答者が創り上げた絶妙な空気感がありますね。

井上副住職 そうですね。「お坊さんおすすめの出会い系サイトは?」という質問は、「場違いな質問」と一蹴されてましたけど(笑)。

堀下代表 ありましたね(笑)。そうそう、女性が多いので恋愛相談も多いんですけど、お坊さんの「愛」の概念が興味深いんですよ。

不倫うんぬんなんて小さな話!?

―えっ、どういうことですか?

井上副住職 仏教では、すべての愛は煩悩だと説いています。異性愛が良いとか同性愛が悪いなどではなく、「愛」という大枠の中では同じ「煩悩」なんです。

―愛といえば、ベッキーさんの不倫問題が話題になりましたよね。

井上副住職 不倫の「倫」は倫理の倫。現代の社会性から逸脱してしまった愛です。でも、ひと昔前の社会では一夫多妻制だった。仏教は時代によって変わるような価値観ではないので、「やめるならやめる、でもやめられないなら覚悟して愛を続けなさい」という中立の立場なんですよね。

以前、二次元のキャラクターに恋した人からの相談があったのですが、それも同じ。そこには愛があり、その本質は執着。自分の心を苦しめるものでもあります。「不倫」というのはただの“現象”。そもそも愛の本質を理解して、自分自身が愛に対してどう向き合うか考えないと、その現象だけ否定しても、やめられないでしょう。

堀下代表 この愛という大枠で本質を捉えるという考えは、世の中の現象すべてに繋がると思うんです。今、「●●をしないための●つの方法」などの情報が乱立してますけど、それって現象に対してのテクニックにすぎないんです。本質的な大枠が解決しない限りは変わらない。仏教は「To Do」じゃなくて「To Be」に迫ってる感がすごくある。そこはコンテンツとして可能性を感じている理由でもあるんです。

*** う~ん、なんだか「有り難し」な内容に入ってきたところで、明日配信予定の後編に続きます。今後の日本人の価値観を変えるかもしれない?「hasunoha」の成り立ちから可能性までを聞いていきますのでお楽しみに!

■回答者全員お坊さんのQ&Aサイト「hasunoha(ハスノハ)」 現役のお坊さんたちが、心や体の悩みから恋愛や仕事の相談に回答してくれるお悩み相談サイト。時には喝を入れたり、自身の経験を基にお説教してくれたりして話題に。 http://hasunoha.jp/

(取材・文/ケンジパーマ)