整形も身近になった今ドキではあるが、彼女らの心中は…

美しくなりたい――その願望は女性なら誰しもあるもの。最近はプチ整形やアンチエイジングも手法として浸透し、整形に対する世間の風当たりも弱まってきた。…とはいえ、まだ抵抗を覚える人も少なくないだろう。

そんな中、9日に開催される「GirlsAward 2016 SPRING/SUMMER(以下、ガールズアワード)」にて、「整形シンデレラオーディション」のグランプリ発表が行なわれる。

整形でシンデレラ?…と耳を疑うが、この企画はモデルやタレントなど夢を持っている女性に向けたオーディションで、セミファイナリストに選ばれた女性たちに整形を施し、並行して面談や合宿での様子を加味した上、グランプリを選出するというもの。

受賞者には賞金300万円が与えられる他、主催の湘南美容外科クリニックと契約し、広告塔として活動することになる。またファイナリストとして残った参加者にもガールズアワードへの出演が特典として用意されている。

一体、どんな人がわざわざ整形を施し、公表した上で挑戦しようとするのか? そこで、ファイナリストである笹野千枝里(ちえり)さん(18歳)、寺尾円香(まどか)さん(18歳)、河崎杏奈さん(21歳)、美底夏織(みそこかおり)さん(20歳)、鈴木渚さん(23歳)の5人に面接や合宿で同行し、その心情を聞いた。

昨年12月、まず最初の面接が都内某所で開催された。応募人数200人の中から書類選考で集まった60名。そこに集まったのは20代を中心に高校在学中の18歳も。控え室にははっきりと緊張感が漂っていた。

面接ではまず志望動機から容姿の理想、そして自身の整形に対する考えや周囲の人間への影響などを聞かれたが、そこでの応募者の心の内は様々だ。

「本当に整形して生まれ変わりたい」とコンプレックスを打ち明けながら泣き出す人、一方で口には出さないが「タダで整形できる機会」という気持ちが透けて見えるような人。親に応募したことを話せず、複雑な心境のまま面接に挑んだ応募者も少なくなかった。

今回の企画を仕切る同クリニック統括院長・相川佳之氏は、全ての面接を終え、こう打ち明けた。

「ただ整形してキレイになればいい、それだけじゃダメなんです。あくまで整形は自身が変わるひとつの手段。そこからどうなるか、どうなりたいのか自分の考えがなければ意味がありません。今回はそれも含めた人間性を重視するつもりです」

最初の面接では、整形外科医がどこをどうすれば、美しくなるかなども確認

施術後、顔に包帯をした状態のまま参加…

合宿ではウォーキングトレーナーやヘアメイクなど各界で活躍するプロを招き、レッスンを行なった

年が明け、2016年1月。セミファイナリストに選ばれた13人は、医師と相談しながら整形箇所やスケジュールを詰めていった。もちろん、身体へのリスクなどの説明も兼ねている。

笹野さんは元々、整形をするつもりだったが、セミファイナリストになった時点で迷いを捨てたという。

「高校時代、『ナマズ』と呼ばれてて、最初はメイクやダイエットで変化をと思ってたんですけど、うまくいかなかったので整形しようと思いました。でもセミファイナリストに選ばれて、これが自分が変わる最後のチャンスだとズバッと腹をくくりました」

そして2月になり、整形手術を経て数人の欠席はあったものの合宿へと突入。中にはなんと施術後、数日で顔に包帯をした状態のまま参加した人も。

「18歳から7年間、お金を貯めていて今年、自分で整形する気でした。ホームベースみたいなエラがずっとイヤだったんです。毎日、鏡を見るたびに整形したい欲が高まっていました。合宿には何かキレイになるチャンスが掴めると思って、包帯が取れてない状態だったけど、行っちゃいました。みんなに恐怖心を与えちゃったかもしれないですけど…」(術後、わずか数日で合宿に臨んだSさん)

彼女はファイナリストに残ることはできなかった。だが、「あの姿で来てくれたことは、いろいろな意味で助けられた」と担当者が口にする。なぜなら合宿の大きな目的として、整形への覚悟を測るものでもあったからだ。

合宿ではウォーキングやヨガの他、「講習」として“大事なことは見た目だけではない”などといった整形の意義を説き、そして最終的な参加の意志を問われた。「キミらのためにいろいろな人が動いてきたけれども、それに遠慮せず、いつでも参加を辞めてもいい」と担当者からはっきりと言い渡されていたのだ。事実、その合宿を機に整形も参加も取り辞めた人もいる。

「彼女らにはこの合宿中だけでなく、来院した時の様子など、細かく人としての振る舞いを見ていたことも伝えました。そういう人間としての芯がなければ、意味がないと。それを理解してもらい、自分に整形が必要かどうか自問してもらいました。自分自身、整形に賛成でも反対でもないので」(担当者)

そして、ファイナリストの河崎さんはこの合宿によって、意識が大きく変わったという。

「『メイクや他の努力で自分が変われるなら整形はしなくていい』と言われたり、ヨガやウォーキングの美しい先生の話を聞いて、強くなった気がします。整形だけでなく、普段の食事などでもキレイになるために日常生活の考え方が変わりました」

見た目以上に現れた変化とは?

最終面接は衣装であるドレスを着て行なった

合宿から1ヵ月経った3月末、ジム通いや食事指導など美しくなるために努力をしてきた彼女たち、全員が整形も終えた。そして、最終面接の会場に集まった。

整形で顔は変わり、緊張もあるものの皆、雰囲気が違う。最初の面接で醸(かも)し出していた悲愴感や切羽詰まった様子、また一部の人にあったブスキャラとしての開き直りがなくなり、明るく笑顔で話すようになっていたのだ。

「整形して、本当に変わりました。人の目を見て話せるようになったし、前までは視線を感じると『鼻が潰(つぶ)れているとか思ってるのかな』と思ってたけど、今は『鼻、キレイだろ!』みたいな。ネガティブな思考をしなくなりましたね」

そう語るのは、「以前は『まぁいいか』とキレイになろうとしなかった」という美底さんだ。

「メイクではどうしようもないことがある」と整形することを決意した寺尾さんも同じように「整形したことで、いろいろな幅、視野が広がったので、そこからファッションに興味を持って、将来はファッションの世界に関わりたいと思うようになりました」と積極性が芽生えたと言う。

また、最終面接の2週間前に整形を終えたばかりだという鈴木さんは「よく『魚類』って言われてて、お父さんにも『現実的に言うと、おまえは中の下だよ』と。理想のアイメイクにするのに片方1時間、フルメイクで3時間かかっていたのが、今は20分ですよ! それに今ならスッピンでも明るい場所に出れますから!」と喜びを露(あら)わにする。

そんな最終面接を終えた彼女たち全員に質問した。確かに身近になったとはいえ、整形に批判的な人もいる。そんな中で世間に本名も顔も公開されることに抵抗はないか?

「人は人、自分は自分」

それぞれ言葉は違えど、彼女らの答えはその言葉に尽きる。自分が幸せになるためには、他人のネガティブな意見は必要ない。彼女らは他人に左右されない強い決意で、整形を決めたのだった。

9日のガールズアワードで、整形した姿を見せる彼女たち。その晴れ舞台でグランプリに選ばれるのはひとり。しかし、選ばれなかったとしても、すでにそれ以上のものを手にしているはずだ。

(左上から)ファイナリストである河崎杏奈さん、笹野千枝里さん、鈴木渚さん、寺尾円香さん、美底夏織さん。彼女たちがどう変わったのかはガールズコレクション後、公開される

(取材・文・撮影/鯨井隆正)