片方は手作りのマイ「鳩サブレー」。見分けられる人は相当な鳩サブレー好きに違いない! 片方は手作りのマイ「鳩サブレー」。見分けられる人は相当な鳩サブレー好きに違いない!

スポーツやアイドル、仕事…と人によって打ち込む対象は様々だが、“マイ”鳩サブレー作りに熱を上げる人がいる。

鎌倉発祥の銘菓である、あの「鳩サブレー」を8年もの間、自ら再現しようと作り続けているのだ。それもお菓子作りはもちろん、料理もしたことのないド素人が、だ。

「久しぶりに『鳩サブレー』を食べたら、原材料がシンプルで、『簡単に作れるんじゃないかな?』と思って始めたんです。まだ自炊を初めて数ヵ月だったんですが、料理はだいたい5回も作ればそれなりのものができていたので、『鳩サブレー』も5回くらいでできると思いました」

というのは、その「鳩サブレー」の再現を試みる、わくわくさん。彼はその過程を自身のサイト『わくわくの何でもチャレンジ♪』で公表しているが、気軽に始めたものの、すでに作成回数は70回を超えるほど!

なぜなら、そのこだわりは異常ともいえるほど細かく、割れ方や焼いた時のヒビの入り方にまで執着し、再現を目指しているからだ。

「材料に重曹を使った時とベーキングパウダーを使った時で細かい穴の開き方の違いに気づきました。つまり、『材料が違うと、割れ方やヒビなども違うのかな?』と考えたわけです」

さらに、材料だけでなく気温も違うとでき上がりが変化してしまうなど、自分だけの「鳩サブレー」作りはかなり繊細なんだそう。一度、成功に近づいたと思っても、また後戻りすることも少なくない。普通の人ならそれに気づいた瞬間、妥協してしまいそうだが…。ブログでも、その試行錯誤ぶりが事細かに書かれ、その難易度の高さが手に取るようにわかる。

現在は安定的に自身の評価で80~90点台まで仕上がってきたそうだが、なぜこれまでの間、諦めも妥協もせず追求できるのか。

「失敗を続けているうちは基本的に心は折れません。むしろ、何かしらの新しい発見があり、知の欲求を満たしてくれます。それがやりがいでもあります。それに自分で決めたことはやり切るのが当たり前だと思っているので、その責務みたいなものはあるのかもしれません」

と、その理由を明かすわくわくさん。彼は5年かけて47都道府県を旅行したり、足掛け3年でフルマラソンを4時間切るなど、一度、自分で決めたことは時間がかかっても、やり通す性格だという。

たった一度の辞める“チャンス”とは?

 実際に食べ比べてみると、「自作鳩サブレー」は見た目も色濃く、風味もやや強く感じたが、昨年の「鳩サブレー」を参考に作ったそう。本家が変わってしまう場合もあるようだ。ただ、事前情報がないと、どちらが本物か食べ慣れていない人にはわからず、編集部のほとんどが迷っていた。 実際に食べ比べてみると、「自作鳩サブレー」は見た目も色濃く、風味もやや強く感じたが、昨年の「鳩サブレー」を参考に作ったそう。本家が変わってしまう場合もあるようだ。ただ、事前情報がないと、どちらが本物か食べ慣れていない人にはわからず、編集部のほとんどが迷っていた。

ただ、一度だけ辞めるチャンスがあったそう。しかし、それは諦めなどマイナスな意味ではなかったとわくわくさんはいう。

「最初は魚用グリルでやっていたんです。32回目の時に、目標レベルには到達。ただ、32回も作ったわりには…という物足りなさがあって、ならばもっと追求しようとオーブンも購入し、さらなる高みを目指して続けることにしました。満足していたら、やる気もなくして終わらせていましたね」

わくわくさんは、小学生の頃から周りの子ができて自分ができないようなことがあると、悔しいという気持ちから、自発的に何でも練習したり勉強したりしていたそう。その気持ちは大人になっても失われず、そして自作「鳩サブレー」作りにも生かされているようだ。

まるで研究者のようなわくわくさん。プライベートも気になるところだが、「ただの独身ってことだけでそれは内密に! 特に研究職に就いたこともなければ、食品関係でもないです」とやけに慎重な様子…。

何はともあれ、夢中になれることやものは意外なところに転がっているのかもしれない。新生活も始まり、新しいことを始めてみようと思う人は、自分なりの鳩サブレー作りでも始めてはどうだろうか。

(取材・文/鯨井隆正)