“狂気の旅人”たちが登場する人気番組「クレイジージャーニー」(TBS系)でもお馴染みの丸山ゴンザレス氏 “狂気の旅人”たちが登場する人気番組「クレイジージャーニー」(TBS系)でもお馴染みの丸山ゴンザレス氏

“狂気の旅人”たちが登場する人気番組「クレイジージャーニー」(TBS系)でもお馴染みの丸山ゴンザレスさんは、身に降りかかる危険を物ともせず、世界各地のアンダーグラウンドを闊歩(かっぽ)してきた。

そんな彼に、我々一般人でも余暇を利用して行ける「死ぬまで一生忘れられない旅先」をレクチャーしてもらった! オススメは絶景でもリゾートでもなく、「スラム街」という意外すぎるスポット…!

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―丸山さんのオススメは、やはりアジアですか?

丸山 アジアはいいと思いますよ。特に「忘れられない旅先」というのであれば、風景的なスポットよりも、スラム街を僕はオススメしたいですね。僕の中でのスラムの定義は、不法に占拠した土地に人々が暮らす共同体で、ホームレスではありません。

―スラム街! 旅行の目的地としては、非常にエキセントリックですね。治安の面など少々不安ですが…。

丸山 アジアには割と手軽に“体験”できるスラムがいくつかあるんです。代表的なところでは、タイ・バンコクのクロントイスラム、フィリピン・セブ島のロレガストリート、インドネシア・ジャカルタのコタ地区辺りでしょうか。

いずれも「絶対に安全」とは言い切れないまでも、少なくとも僕自身、これまでトラブルに見舞われたことは一度もないです。例えばフィリピンにしても、本島のスラムに足を踏み入れれば殺されてもおかしくありませんが、セブ島はまったく温度感が違う。夜は出歩かないなど、海外での最低限の常識さえ守っていれば、まず安心ですよ。

―そうなんですね! スラム街にはどんな面白さが?

丸山 僕がまず感じるのは、どこも非現実的な絵力があるということ。先に挙げた3つのスラムは、いずれもアジアを代表する大都市の中にあります。だからこそ、局所的な別世界として、ギャップの面白さが味わえるんです。スラムといっても、人が普通に暮らしている生活の場なのだということを、リアルに体感できると思いますよ。

―NGO主催の見学ツアーも存在するようですね。

丸山 不安な人はそういうツアーを利用するのもいいでしょう。ただ、どうしても主催者側が見せたいエリアを優先的に押しつけられてしまいます。スラムという貧民エリアの現実を肌身で理解するためには、自由に行きたい所に行くほうが有意義です。

―丸山さんはスラム街を訪れる際、主にどのようなポイントをチェックしますか?

丸山 普通に彼らの家屋を見せてもらうこともありますが、どんな店があり、そこで何が売られているのか。また、人々がどんな仕事を営んでいるのか、といったことに注目します。

都市とは多面体ですから、いろんな角度から眺めなければ実態はつかめません。スラム街という一面も、間違いなくその都市の一部です。街の外観も人の姿も日本とは大きく異なりますが、細部をつぶさに見ていくと、彼らが決して遠い世界の人間ではないことがわかるはずです。

 フィリピンのセブ島、セブ市の中心地にあるロレガのスラム街。土地柄、人々はとにかく明るくノリがいいのだとか。リゾート地として知られる島に存在する「もうひとつの顔」 フィリピンのセブ島、セブ市の中心地にあるロレガのスラム街。土地柄、人々はとにかく明るくノリがいいのだとか。リゾート地として知られる島に存在する「もうひとつの顔」

ガラス、犬、ウンコに注意!

―これまで思いがけない発見をしたことも?

丸山 例えば、ジャカルタのコタ地区で驚かされたのは、住民たちがお金を出し合ってプロパンガスを共有していたこと。他のスラムではたいてい練炭を燃料にしているので、これはある意味、上級スラムです。彼らはスラムに住んではいるけど、ちゃんと仕事をして経済活動を営んでいる。発展が著しいインドネシアならではの現象かもしれません。

―スラム街の旅は、世界の今を知るスタディツアーとしての側面もありそうですね。ビギナーはどのようなことに注意すればいいでしょうか。

丸山 日没前に訪れることは大原則として、僕が普段から気をつけているのは、ガラスの破片を踏まないこと、犬に噛(か)まれないこと、ウンコを踏まないことです。基本的に足元ばかり見ています(笑)。あたかも無法地帯のようなイメージばかりが先行していますが、街に入っていきなり撃たれるようなことはありません。

―他には、どのようなスポットがオススメですか?

丸山 島国育ちの日本人としては、陸路で国境を越えられる場所というのは、稀有(けう)な体験になるんじゃないですかね。これは国内では絶対にできないことですから。アジア圏ではタイがオススメです。マレーシアやラオス、ミャンマーなど、隣接する国の数が多くて交通の便がいいので、頑張れば3日ほどで完遂できるのではないでしょうか。

―なるほど。歩いて国境を越えるというのは、なかなかピンとこない体験です。

丸山 例えば、タイにあるミャンマーとの国境の街、メーソートは面白いです。国境を越えた途端に、当然ですが通貨が変わり、言葉も変わります。タイで買ったSIMがミャンマーに入ってしばらく進むと使えないとか、「本当に国が変わったんだ」ということを実感できます。

スラムもそうですが、文化の切り替わりを意識させられたりすると、一生忘れられない思い出になるんじゃないでしょうか。

(インタビュー・文/友清 哲 撮影/有高唯之〈丸山氏〉)

 日本ではできない陸路での国境越え。手前がタイ、奥がミャンマー。通貨、言葉など、文化が一変する様子を肌で感じてみては? 日本ではできない陸路での国境越え。手前がタイ、奥がミャンマー。通貨、言葉など、文化が一変する様子を肌で感じてみては?

●丸山ゴンザレス 1977年生まれ。ビジネスにも裏社会にも精通する犯罪ジャーナリストで、海外のアンダーグラウンドにも詳しい。主な取材・執筆分野は、猟奇殺人、都市伝説、古代遺跡の盗掘など多岐にわたる。近著に『闇社会犯罪 日本人vs.外国人 悪い奴ほどグローバル』など