文化と交易の中心として栄えてきた無形文化遺産「ジャマエルフナ広場」 文化と交易の中心として栄えてきた無形文化遺産「ジャマエルフナ広場」

サラーム! ここモロッコ!

シャウエンが「青い街」なら、マラケシュ「ピンクシティ」と呼ばれる。ピンクといっても決してセクシー系のソレではなく、淡い茶ピンクの建物で統一された街。

これまでもいろいろな国で思ったけど、建物の高さや色が統一された街の景観はとても美しい。高層ビルがニョキニョキ乱立するTOKYOと比べると、まるで異次元。

マラケシュのメディナ(旧市街)は1985年に世界遺産に登録され、西洋人に人気の旅先のひとつ。そんな素敵な街で、ついに“モロッコの洗礼”を受けることとなった。

 マラケシュピンクと呼ばれるピンクの街。赤い街とも呼ばれているようです マラケシュピンクと呼ばれるピンクの街。赤い街とも呼ばれているようです

実はモロッコは旅人の間でひそかに「世界3大ウザい国」と言われている。よその国に勝手に行っておいて「ウザい」なんて失礼な話だけど、要は“旅人泣かせ”“凄まじく強気”な人々が存在するらしい(ちなみに、あとの2ヵ国はインドとエジプト)。

これまでのシャウエンやフェズではそんな印象はなかったし、「モロッコ人て控えめで優しいなぁ~」と思っていたんだけど、恐れていた“もうひとつのモロッコ”がついにベールを脱ぐ…。

 2009年に「無形文化遺産」として登録された、マラケシュのメディナの中心「フナ広場」 2009年に「無形文化遺産」として登録された、マラケシュのメディナの中心「フナ広場」

さあ、到着したのは夜のジャマエルフナ広場(アラビア語で 「死人の集会場」とは、なんだか意味深です)。

モロッコ最大規模のスーク(市場)とフナ広場は夜中までギラギラとライトアップされ、日本の夏祭りみたい。見ているだけでもワクワクと胸躍るその中心に近づいていくと、人々の喧噪に交じり、どこからか音楽が流れ、屋台からはモクモクと煙が上がる。

人気屋台は地元のお客でビッシリ。みんな白身魚やイカ揚げ物をほおばり、肉の煮込み汁にパンを浸しては、手づかみでむしゃぶりついている。

 屋台のごはんは20DH(約140円)程度。脳みそなんかも並んでいた 屋台のごはんは20DH(約140円)程度。脳みそなんかも並んでいた

フェズでも飲んだオレンジジュース屋はズラリと20軒ほどが並び、どこも4DH(約48円)均一。隣同士がライバルのように「ジャパン、ウチで 買って~」と営業合戦。

「おい、ジャパン」って呼ばれるのは心外だし、何軒ものお店に声をかけられるのは大変だけど、ん~、この程度ならまだまだ想定内。活気があって治安も悪くなさそうだし、「門限は24時くらいまでに適当に~」ってことで、宿主公認の(?)夜遊びを満喫した。

 混雑する人気屋台 混雑する人気屋台

罵声が飛び交う昼の広場

 マラケシュのランドマーク、クトゥビーヤ・モスクのミナレット マラケシュのランドマーク、クトゥビーヤ・モスクのミナレット

ところが一夜明け、ギラギラと太陽がふりそそぐ昼のフナ広場は、昨夜と全く別の顔を見せた。

賑(にぎ)やかだった屋台は閉まり、その代わりに馬車やトゥクトゥクが走り、ヘビ使いや、パターゴルフ、手品やコントなどパフォーマーが芸を披露する。体重計や全身鏡を置いただけで商売しようとしている人だっているのが面白い。

 アクロバットの人たち アクロバットの人たち

ちょうど民族衣装のオジサンが観光客と記念写真を撮ってお金をもらっていたので、遠くからその風景をそーっとパチリ…。すると、

「テメー、撮ったろ? 金出せ! オラァ」

と、民族衣装のオジサン3人がこちらに猛突進。私はあっという間に囲まれてしまった。なんとかかわしたけど、あ~コワかった~。カツアゲに遭った気分です。

オーストラリア人の旅友ニックは、猿を肩と頭と3ヵ所くらいに乗せた写真を撮ったら、200DH(約2400円)と言われたそう。「高すぎる!」とモメて、最終的に20DH(約240円)で決着。昼のフナ広場でパフォーマーを撮りたければ、多少なりともお金を払うしかなさそうだ。

 一見、平和なお昼のフナ広場だが… 一見、平和なお昼のフナ広場だが…

そうこうしていると、突然、グッと力強く腕を掴まれた。

「ヒャッ!! ナニ!?」

タトゥー屋のおばちゃんが私の手の甲にヘナタトゥー(数日で消えるタトゥー)を入れようと引っ張ったのだ。私はビックリして腕をひっこめ「NO!」と言った。すると「ファッ○ュー!」と、おばちゃんはすごい形相で私のことをニラむのだった。

ドキドキ。おばちゃん、口悪いし、こえーぜ。

その後も、全く関係ない通りがかりのオヤジに、キスされるくらいの距離で顔面を近づけられ、「ふあつ○ゆー!」と滑舌(かつぜつ)よく言われたり…。

「な、なんでぇ???」 …くすん。

 スーク(市場)では値段交渉が必要 スーク(市場)では値段交渉が必要

禁断のアレに手を出す

なんだか、すっかり緊張と疲れでノドが渇いた。

オレンジジュース屋台の群れに向かうと、やっぱり激しい勧誘に遭う。でも、私はすでにお気に入りのお店があったので「ごめんね」という感じで手前の店をやりすごすと、

「ジャパニーズクレイジー!」

と憤慨され、シッシッと手で払われる仕打ちまで。まぁ、確かに私はクレイジーかもしれないけど、ジュースを買わないだけで初対面の人にそう言われる筋合いはない。

 モロッコといえばオレンジジュース!というくらいフェズでもマラケシュでもオレンジジュース屋が目立つ モロッコといえばオレンジジュース!というくらいフェズでもマラケシュでもオレンジジュース屋が目立つ

「はぁ……」

モロッコ人は本当はイイ人がいっぱいだってことは知っているけど、ここまで連続で暴言を吐かれたら、ちょっと滅入る。このように不良モロッカンがいることについては、現地の人も頭を抱えているらしい。つまり、モロッコが世界3大なワケではなく、マラケシュのフナ広場限定で結構、ウザいぞ(笑)、ってとこかな。

ちょっぴりストレスが溜まった私は、オレンジジュースよりもスカッと一杯やりたい気持ちになり…実は前々から、モロッコにはお酒が飲めるところがあるという噂を聞いていたのだ。

フナ広場を見渡していると、ちょっと派手めなレストランがあったので、私は恐る恐る客引きに「ビア?」と聞いてみた。すると、

「あるよ!」

あっけなく発見。

 お酒やシーシャ(水たばこ)を扱っている観光客向けのレストラン お酒やシーシャ(水たばこ)を扱っている観光客向けのレストラン

ついにイスラム圏で禁断のルービーをやることとなった。プハっと久々のアルコールは体に染みる。たまには観光客らしくテラスも心地良いなぁ。

それからは毎日、フナ広場の洗礼から逃げるように観光客向けのレストランテラスに避難。昼はミントティー、夜はビール。広場を見下ろすと、そこはどこか遠い場所のような気がした。

テラスからは自由に広場の撮影もできたけど、観光客の特権とばかりに高みの見物をする私は、モロッカンから見たら、やっぱり「ファッ○ユー」な存在なのかしら…?

 テラスに上がれば誰にもどやされることなくカメラを構え、自由にフナ広場を撮影できる テラスに上がれば誰にもどやされることなくカメラを構え、自由にフナ広場を撮影できる

【This week’s BLUE】 マラケシュの鉄道駅はなかなか立派。マクドナルドも隣接している。

●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】instagram【marysha9898】