いつの頃からかオワコン扱いされてきたMT車。しかし近年、注目のモデルが次々に登場したこともあり、MT車の魅力が見直され始めているのだ。
人気を牽引する国産車は? イマドキMT車の実態とは!? ATに惨敗してきたMTに光が…。
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昨年12月、MTの設定や専用チューニングされた足回りを備えるアルトワークスがアルトのラインアップに追加された。名車の復活を喜んだ旧モデルのファンも多いが、現在、その販売比率が異様なことになっているそうだ。
「お客さまから数多くのご要望をいただき、5速MT車を発売しました。直近では販売の約9割がMTで、購買層は40代の男性が中心ですね」(スズキ広報部・小林氏)
MT率9割と言われても、いまいちピンとこないが…そこで「いやいや、これはスゴい数字ですよぉぉぉ!」と、熱く登場してくれたのは、2台の愛車がどちらもMTという自動車評論家のマリオ高野氏だ。
「月平均1万台近く売れているアルトの約2割がアルトワークスだと聞いています。その9割がMTですよ! AT全盛の今の時代にMT車が月2千台も売れているというのは快挙に近いです!」
運転免許統計によれば、AT車の普及に伴い1991年に「AT限定免許」が誕生して以降、AT免許を選ぶ人は増え続けている。2009年に「AT限定免許」の割合は50%を突破し、14年には56%に。
「若い男子に取材すると、『操作が面倒くさいし、MT車ってもう売ってないでしょ?』と言う。特に都市部でその傾向は強いです」(『CARトップ』編集部・横山氏)
確かに新車販売のMT比率は年々下がってきており、日本自動車販売協会連合会によれば、85年頃には50%強だったのが、00年には10%を切り、現在では1%に近い数値だという。
どうしてMTはこれほど衰退したのか。その背景には、AT(CVT含む)の劇的な進化があった。「フォルクスワーゲンのDSGなどは、すでに人間が操作するより変速スピードが速い。最新のATは変速がスムーズでショックがありませんし、燃費も悪くないんですよ」(前出・マリオ高野氏)
しかし、日本と同様にATのメカニズムが進化している欧州では、AT車の普及率はわずか20%以下なのだという。なぜか?
「欧州は自動車文化発祥の地。クルマは自分で運転して楽しむという考え方が浸透してるんです」
アルトワークスの「MT率9割」は、日本市場でのMT復活の狼煙(のろし)となるか…。男たちよ、面倒かもしれないが、今こそ自分でギアを決めるMT車に乗ってみないか!?
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(取材・文/安藤修也 撮影/本田雄士)