「憧れのサハラ砂漠を歩きたい!」
ついにその夢を叶える時がやってきた。モロッコでのメインイベント「ラクダに乗る砂漠ツアー」だ。
マラケシュから行くには「SABAKU? RAKUDA?」と路上での勧誘もあれば、個人で途中の街などに寄りながらバスで向かう方法もある。
旅人としては断然、後者を選びたいところだけど、バス・タクシー・宿・食費・チップなど予測不能のお金がかかるし、砂漠の街メルズーガまでは550km以上の距離があるので時間もかかるし結構、過酷?
結局、私は宿泊していた安宿のオーナーが勧めるツアーに行くことにした。
「2泊3日で宿代と朝食&夕食付き。途中のガイドとランチは別だけど、星空とラクダ込み!」
控えめで優しいモロッコ人オーナーは信頼できたし、料金も良心的な 750DH(約9千円)。フェズで言われた価格の半分だ。
翌日早朝に集合場所に集まると、意外にもモロッコ人の参加者もいる。そりゃぁ モロッコ人だってサハラ砂漠行きたいよね。他の街から来たモロッコ人は、私と同じように観光客なわけだ。
同じようなツアーに行く車が何台も並び、どの客をどの車に乗せるか割り振られていく。
「ヘイ、ジャパン。俺は東京の“渋谷”に行ったことがあるぜ。“シブヤ”って呼んでくれ。隣に座ってもいいかい?」
うーん。私はこのチャラいモロッコ男と砂漠でメモリーを作るのか。でも悪い人ではなさそうだし、ま、いっか。
「もちろん。シブヤ、どうぞ座って」
と覚悟を決めたのに、どこからか現れたモロッコ女性がこの車に乗るのはイヤだと言ったところ、「そうかい、ベイビー」とそのコの肩を抱いて別の車に消えていった。
…なんやねん。告ってもないのにフラれた気分。
結局、数人のモロッコ人と、他にもイギリス人、ドイツ人、アメリカ人、オーストラリア人など多国籍の老若男女を12人乗せて、さぁ砂漠ツアーへ出発だ!
高ぶる気持ちとともに、まず行った場所はガススタ。ガクッ。
「先に入れとこーよ!」
このパターン、どこの国でもよくあります(笑)。
『グラディエーター』ロケ地の要塞村へ
そんなスタートから5時間。マラケシュからアトラス山脈を越え、まず着いたのは世界遺産「アイトベンハッドゥ」。その昔、先住民族ベルベル人がアラブ人から逃れるために築いたカスバ(要塞)の村だ。
数々の映画が撮影されている観光客に人気の場所で、『グラディエーター』のロケ地としても有名。剣闘士たちが闘うシーンを思い出すと、ゾゾゾッと鳥肌~!
ベルベル人のガイドに「ひとり25DH(約300円)のチップを払ってくださいね」と言われ、後をついてゆく。以前は10DHだったみたいだけど、どうやら値上がりしたっぽいぞ。
1時間ほどで周れるくらいの小さな集落には、今も10世帯ほどの家族が住んでいて、ガイドさんの家もこの中にあるんだそう。世界遺産に住むってどんな気分だろうか。
頂上に辿(たど)り着くと、川の対岸にある新市街が一望できた。その壮大な景色を見ていると、まるで自分が映画のワンシーンにいるかのような気分。
太陽がギラギラなのはさすがアフリカ大陸といった感じで、風が吹けば気持ちが良い。
しかし、このツアーメンバーはバックパッカーのような旅人ではなく、バケーション旅行からの参加がほとんど。長時間の車移動と炎天下を登る石階段でイギリス人女性レイチェルの疲れはピークに。
「アイム、ハングリー…」
ガイドが「ランチはタジンとクスクスだよ」と励ますが、彼女はクスリとも笑わなかった。
夕食もまたタジンとクスクスに迎えられ、食後は民族音楽の演奏でもてなされた。お酒が欲しいところだけど、疲れのせいかすぐ眠りについた。
ベルベル”ピカソ”の絨毯が欲しい!
2日目はティネリールという街で、再びガイドさんに25DH払うとカスバの中の建物に連れていかれた。
中は絨毯屋となっていて「モロッコウイスキーです」とお決まりのギャグでミントティーを振る舞われ、絨毯作りの紹介が始まる。ガイドが説明を始める前に、メンバーのモロッコ人のおばちゃんが、
「私、それ知ってるで。こうやってこうやんねん」
と先に説明してしまうもんだから、絨毯屋も苦笑い。どこの国もコテコテのおばちゃんには勝てない。
サフランやインディゴなどの天然染料で染められた、羊やラクダ、サボテンなどの毛の絨毯。これがとってもかわいくて、造り手によってデザインのパターンがいろいろある。
「これはベルベル”ピカソ”のデザインだよ!」
大きな絨毯は数万円するみたいだけど、玄関マットくらいの小さいものなら 700DH(約8400円)と言われた。ううう。欲しかったけども、絨毯を担いで旅するわけにもいかない。あきらめよう。
そしてモロッコのグランドキャニオンと呼ばれるトドラ渓谷に行くと、流暢(りゅうちょう)に日本語を話すモロッコ人に出会った。
「俺、ハッサン。日本に7年住んでたんだよ。絨毯安くするよ。800DHでどお?」
さっきより100DH高いよ!
それにしても、モロッコに来てから「ハッサン」という名に出会ったのは3人目だ。モロッコの「太郎」? 他にも「モハメド」「オマール」という名前の人がいっぱいいた。
ハッサンは「ツアーはつまんないでしょ?」と言っていたけども、充実の内容に私は大満足。
ところで砂漠はまだかしら? どうやらこの後が、待ちに待った砂漠らしい。
次回、ついにサハラ砂漠の登場です!
【This week’s BLUE】 アイトベンハッドゥで見た、あぶり出しの作成現場。上手に濃淡をつけてモロッコの景色を描き上げていく。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】instagram【marysha9898】