ついにやってきました、サハラ砂漠!
アフリカ大陸の3分の1の面積を占める世界一大きな砂漠…って、知ってるよね?
私たちはラクダツアーの拠点となる、アルジェリア国境近くの「メルズーガ」という街へ着いた。車から降ろされたのは、だだっ広い砂利の地にポツンと佇(たたず)む建物の前。
待ってました!とメンバーは必死に日焼け止めを塗りたくり、ベルベル人のように頭にスカーフを巻いたりしてる。
「あ、日焼け止めもスカーフも両方忘れちゃったよ。やっべっぞ!」
私はキャップだけかぶると、開き直ってサハラの太陽に焼かれることを覚悟した。
皆より先に準備が終わって、ヒマな私はガイドのベルベル人とお喋り。すると、
「『ベルベル空手』知ってる? こうやるんだ。 必殺・ベルベルカラテ~!」
と、石で私の頭を殴ろうとする。なんじゃそりゃ。日本の「空手」を舐(な)めてもらっては困る。こう見えても私は空手経験者(子供の頃に少しやって、すぐ辞めたので白帯)。
「ジャパニーズ空手のパンチをお見舞いだー!」(パンチと言ってるあたり、私こそ空手家に怒られる?)。
「ううう……オレの負けだ。それではラクダに案内しよう」
そう、砂漠の足といえばラクダ! ついにラクダとご対面!
「きゃーん! マツゲ長~い!」
盛りギャルのつけまやエクステも敵(かな)わない、おめめパッチリのラクダちゃん。どのコに乗ろっかな~♪ しかし、
「オマエ、コレ乗レ。ベイビーキャメルだ」
選ぶ間もなく、一番後ろのひと回り小ぶりのラクダへ。
ラクダの寿命は25~60年とバラつきがあるが、どうやらこのコは6歳で赤ちゃんというほどではないけれど、ベイビーと呼ばれるほど小さい。どうみても一番小柄な私がそれをあてがわれるのは仕方がないか。
サハラ砂漠を鬼ダッシュするも…
「よっこらせ」と後ろ足から一気に立ち上がるラクダに、一瞬落ちそうになるが、のっぽラクダの背中からの視界は良好。ノッシノッシという歩きに揺られながら、ふと周りを見ると、すぐにサハラ砂漠が広がり始めた。
「わぁ……。素敵!」
どこまでも広がる青い空とオレンジ色の砂のコントラスト。静寂の中、ラクダの歩く音だけが響く。非日常的な空間にいるこの不思議な感覚こそ、旅をしていて良かったと思うまさにその瞬間だ。
「地球上にはまだまだ見たことのない場所がいっぱいあるな。砂漠を渡る遊牧民になった気分……」
ラクダの乗り心地は決して快適とは言えないけれど、ワクワクが止まらぬまま、あっという間に2時間。今夜泊まるテントが見えてきた。
「ラクダたちよ、ご苦労さま!」
改めてラクダの顔をマジマジ見つめていると、「グワシグワシ! ギシッギシッ!」と歯ぎしりのような妙な音を立て始めた。
「ラクダはね、胃の中の食物を戻してそれをまた食べるのよ。本当よ」
知的なモロッコ美女のイマンちゃんが教えてくれた。これは反芻(はんすう)というある種の哺乳類が行なう食物の摂取方法らしいが、今まで可愛かったラクダがちょっとコワイ(それにちょっとクサイ・笑)。
「オーイ、おまえら! サンセットだぞ。沈んじゃうから急いで急いで!」
ベルベル人が叫ぶ。え? 急ぐの? 目の前の砂漠の山はなかなかの急斜面。てっぺんに登らなければ太陽は見られないので、サハラ砂漠を鬼ダッシュ~!
しかし、砂の坂道ってのは走っても走っても足がすくわれて前に進まない。天然のランニングマシーン。
結局、てっぺんに辿(たど)り着いた頃には日は沈んでいた。悔しいですっ!
だけど、砂に腰をかけ景色を眺めると、砂の作るエッジとドレーブの美しさに胸を打たれた。
メンバーは砂に触れたり、寝転がったり、ドレスに着替えをして撮影をしたり、思い思いに砂漠を満喫していた。
日没の砂漠でなぜこの話題?
そしてこんな雄大な砂漠のど真ん中で、なぜかみんなの話題は「同性愛」になっていた。
「ヨーロッパでは普通の光景だし、結婚ができる国もあるよ」
「でも世界には自然の摂理に反しているという人もいたり、国によっては性交渉が重罪のところもあるんだよね」
実はモロッコでは同性愛は重罪(最長3年の禁固刑)。今年、男性カップルが集団に襲撃される事件があり、裁判では被害者カップルが禁固刑、襲撃犯もまた罪に問われた。この公判は物議を醸(かも)し、地元住民は襲撃犯の釈放を求めたそうだ。
「日本はどうなの?」と聞かれて私は、ドキッ。
「えっと、確か法的には結婚はダメだったかな。でも、そんな厳しい雰囲気はないよ。世間ではオカマやオネエが大人気で、TVで見ない日はありません。ハイ」
的外れな回答をしちゃったかしら(ちなみに昨年、東京都渋谷区で同性カップルを結婚に相当する関係と認め、パートナーとして証明する条例が可決したそうですね)。
みんなの話は白熱し、神の教えや宗教的な話も加わってきたので私はすっかり蚊帳(かや)の外。
すると、砂漠のふもとから、「おーーーい! 夕飯だぞ! 降りてこーーーい!」
ホッ。いつもの通り、タジンを食べた後は、暗闇に広がる満点の星空の下、民族音楽のエキゾチックな調べに包まれた。
翌朝は5時に起こされ、一行は行きの倍の速度でサクサク進む。すると最後尾の私のベイビーキャメルはついて行けず、引きずられるように進むもんだから上下の振動がスゴイ。
その上に乗る私は、ピョコンピョコン腰が浮いて振り落とされそうなロデオ状態。「ラクダはラクじゃない!」
そんなだから私が一番ハードだったと思うけど、みんなも筋肉痛や睡眠不足で帰りの車でダウン。特にモロッコ人は現地民なのに完全にノックアウトだった。
190cmの長身ドイツ人女性ルイーザが席を変わってほしいというので「足長いもんね! 羨(うらや)ましいよ!」と快くOKすると、彼女は悪気なくこう言った。
「私はショートレッグピーポーが羨ましいわ」
ショートレッグピーポーて…(笑)。
【This week’s BLUE】 指3本! これがベルベルピースだ! ベルベル民族のフリーダムを表す記号を表現している(記号は魚座マークのような形)。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】instagram【marysha9898】