総務省統計局の「住宅・土地統計調査」によれば、全国平均の持ち家率は約6割(2013年時点)。これが、東京に絞ると3割近くまで下がる。
記者も含めて、賃貸物件に住んで家賃を払い続けている人は多い。これまで払ってきた金額を合計すれば、家の一軒も買えたんじゃないか…誰もが一度は思うことだが、何しろ東京では家の値段が高すぎる。
しかし、試しに不動産情報サイトで「中古マンション 23区内」という条件で検索してみると1千万円以下の物件が100件以上ヒットするではないか。おお、場合によっては「買い」? いや、やはり安物買いの銭失い?
ここはひとつ、プロの見解を知りたい。住宅関連の著書が多数あり、今年6月には『年収300万円でも家が買える!』(WAVE出版)を刊行した住宅ジャーナリストの榊淳司(さかき・あつし)さんに聞いてみると「実は、若い独身のサラリーマンこそマンションを買うべきなんです!」という心強い言葉が返ってきた。
「若い独身のサラリーマンの多くは、都心から離れた地域にワンルームマンションを借りて住んでいます。仮に賃料が5万6千円だとすると、入居時の経費や更新料などを含めると10年間の総費用は約700万円。ところが、築20年程度の中古ワンルームも同じく700万円程度で買えるんです」
もちろん、700万円の大半はローンで払うため、総額は買うほうが高い。しかし、10年程度でローンを完済した後は自分の所有物になる。その後は、売るのも貸すのも自由。トータルで見ると「買い」というわけだ。さらに、榊さんは言う。
「バブルの頃にはマンションの大量供給ブームがありました。価格相場は23区内だと16平米のワンルームでも2千万円以上。バカな時代ですよね(笑)。こうした当時の新築物件が今、500~600万円台で売りに出されているんです」
確かに、不動産サイトで検索してみると、なんと500万円台のワンルームが簡単にひっかかる。
例)江戸川区 東新小岩 550万円のワンルーム
不動産情報サイト「SUUMO 関東版」より
購入時のチェックポイントを伝授!
例)板橋区 西高島平 550万円のワンルーム
不動産情報サイト「SUUMO 関東版」より
なるほど、俄然、やる気が湧いてきました。とはいえ、人生最大の買い物ゆえ、失敗はできない。というわけで、購入時のチェックポイントを教えてもらった。
1)狙うは1982年以降の販売物件 1981年6月に建築物の新耐震基準が施行されたため、建築確認が下りるであろう1年後の1982年6月以降に売られた物件はいろんな意味で安心。
2)駅徒歩は10分以内がマスト 中古マンション購入希望者は駅徒歩10分以内で探す。安さにこだわって駅徒歩10分以上の物件を選ぶと、売ろうという段になって買い手が見つからない。
3)内見ではひと通り試してみる サッシや建具をすべて開閉して問題がないかを調べる。また、給湯器は約10年で寿命が来るので、キッチンや浴室のお湯がちゃんと出るかの確認は必須。
4)自転車置き場と掲示板をチェック 整然とした共有スペースは管理体制がしっかりしている証拠。逆に自転車置き場が汚かったり、古い掲示物が残っている場合は管理が行き届いていない。
5)管理組合の「総会議事録」を見せてもらう 修繕積立金が1戸あたり50万円以上あるか、管理費の決算が赤字になっていないかなどをチェックし、組合がちゃんと機能しているかどうかを確認する。
「総会議事録」は仲介業者に頼むと嫌々(笑)取り寄せてくれるそうだ。相当、メンドくさい客だと思われることも多いらしいが、もちろん遠慮している場合ではない。
「さらに、必ず値引き交渉をしてください。激安マンションは買う人が少ないので、仲介業者も1割増し程度で値付けしているケースがほとんどなんです」
なお、気になる周辺環境については「これは人によって捉え方が違うので、歩いてみて気にならなければOK」(榊さん)とのこと。これらの注意点をクリアした上でフィーリングが合う物件が見つかったら、夢の「持ち家ライフ」はすぐそこかもしれない。
(取材・文/石原たきび)