「結婚することになりました。フィレンツェの教会で彼とふたりきりで式を挙げるの」ーー。
あ、私じゃないですよ。ビックリした?
本当は自分のアモーレ報告でもお届けしたいところなんですが、そんなロマンチックな連絡をくれたのは日本の親友からだった。
「ハワイと迷ったんだけど、昔、料理修行でフィレンツェに住んでた友達が地元の教会を紹介してくれたから、これを機に憧れの初ヨーロッパに行くことにしたの」
元々はそのコの容姿がカワイイから、一緒にチームを組みたくて私がナンパしたダンス仲間。当時からモテモテだった現ヨガティーチャー。
モテ女の嫁ぎ先が気になって、私は呼ばれてもいないのに「モロッコから駆けつけるよ!」と言ってイタリアへ飛んだ。
フィレンツェは歴史的建築物や美術館はもちろん、王室御用達の革鞄屋や世界的ブランドGucciのミュージアム、そして「イタリアンクラシック」なメンズファッションも注目されるおしゃれな街。
その街の真ん中で、親友との久々の再会に盛り上がりすぎる私。そんな状況にちょっと引き気味なのは、親友の旦那となる黒ブチメガネをかけた中村獅童似の日本人男性だ。
私と親友はフィレンツェ名物のパニーニをかじりながら会話をはずませた。
「結婚相手に彼を選んだ理由は?」「楽だから(笑)」
言葉のチョイスに思わず笑ってしまったけれど、「一緒にいて居心地が良い」という意味のこの理由は、実はかなり結婚に重要な要素な気がする。
もちろんそれだけではなく「威張ることなく自分を対等に見てくれて、心が安定していてブレがない男性。アンド、思っていたより英語が喋れて、海外で頼りになる!」。そっか! これが結婚相手に大事なことなのかな?
彼女はヨガ修行でインドに行ってから「心が浄化され自分と向き合えた。自分と合う人がわかった」と言う。
旅は時に恋愛や人生を左右する、のかも。私、マリーシャがインドに行った時は、ガネーシャ様のお告げはなかったけれど。
翌日、結婚式はほっこり温かく、美しい彼女の背中を見つめながら目頭が熱くなった。日本から遠く離れたイタリアの地で、普段会えない親友の門出に立ちあえて本当に良かった。おめでとう!
ローマ・ベストカルボナーラにボーノ!
せっかくフィレンツェに来たので、近郊の有名都市にも足を延ばそうとやってきたのは、初の女性市長誕生が話題のローマ。実はカルボナーラの発祥地だって知ってた?
インド人経営の安宿に泊まると、日本からイタリア料理の修行旅に来ていたシェフ、N君と出会った。彼はイタリア料理について書かれた辞書のような分厚い本をパタンと閉じてこう言った。
「そうだ、今夜はカルボナーラを食べに行こう」
食の都イタリアで出会うバックパッカーは旅人ばかりではない。このように本場の味を求めてシェフだって旅をする。
(そういう旅の仕方、いいなー。)
この人は美味しいものを知っているに違いない! よし、お供させてもらおう。
ローマの夜道は意外と治安に不安はなく、ライトアップされた遺跡がよい雰囲気。そして、夜のローマ観光をしながら私たちがたどり着いたのは…「ロショーリ」! 地元で評判のグルメ雑誌「ガンベロロッソ」誌が選んだ「ローマベストカルボナーラ」部門第1位に輝いた名店だ。
23時という遅い時間にもかかわらず店内は満席。慣れた様子で1時間後に来いと言われる。でも、入れてラッキー。そして着席するなりN君は言った。
「伝統的で硬派なカルボナーラは、生クリームを使わないんだ。生クリームが入ってるのは軟派だね。卵はパスタの熱で固まってしまわないように気を付けて和(あ)えなくてはいけないけど、温度が温かくないと美味しくない“ヌルボナーラ”ができちゃうんだよ」
絶妙な温度加減が必要なんだ。人生と一緒で、パスタって実は奥が深いな。
テーブルに現れたカルボナーラは、モチモチの太い手打ち麺に濃厚な卵黄が絡み合い、カリカリのパンチェッタの塩気と黒コショウはパンチが効いていて、ボ、ボ、ボ、ボーノ!!
身近だと思ってたカルボナーラだけど、やっぱり自分で作るのなんかとは全然違うよね(笑)! すると、シェフN君が言った。
「カチョエペペも食べてみようか?」
へ? カト……ペ?? 何それ。カトちゃんペ?
究極のシンプルパスタ・カチョエペペって?
日本ではあまり見かけないのですが、イタリア語で「カチョはチーズ、ペペは胡椒」とその名の通り、チーズと胡椒だけがかかったパスタ。見た目こそカルボナーラに似てるけど、シンプルだからこそ、より麺の質感や茹で具合が際立つ。
これこそ硬派な男子パスタじゃない? 家で「材料ないけどこんなの作れます」なんてササっと作られたら、ああカッチョ・エエ! 惚(ほ)れちゃうかも。
すっかりパスタにハマった私は、その後もイタリア各地でパスタを食べ続けた。ミラノ在住シェフおすすめの新鋭店、ボローニャといえばボロネーゼetc…。そんな中、私が恋に落ちたのはピサで食べたパスタ。
そのパスタとは、コーヒー&ケッパーという異色のコンビにトマトパウダーがかかったもの。さすが、スタバが進出できないほどコーヒーにこだわっているイタリア。
粉末状にしたコーヒー豆は香ばしく、口に入れるとケッパーの独特の風味が広がる。疑いながら口にしたけど、これが絶品。
こうして散々パスタを食い散らかした結果、私は軟派と言われようがカルボナーラは結局、生クリーム入りが好きだった。これはN君には秘密にしておこう。
パスタ三昧(ざんまい)の毎日は満たされていたけれど、その代償は大きくお腹がポッコリ。いけない、いけない。私はこの後、ピサの公園にある青空ジムで毎日運動!
…とか言いつつ、運動後に必ずジェラート舐(な)めちゃう、花より団子なマリーシャでした。
【This week's BLUE】 ミラノの大聖堂ドゥオーモ。スギちゃんファッションのイケメン入り。ワイルドだろぉ?
●旅人マリーシャ 平 川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、Sサイズモデルとしてテレビやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】