牛丼チェーンなどを中心に、参入が相次ぐ「ちょい飲み」サービス。
そのブームにあやかろうと、パチンコ業界も動きだした。短時間で楽しみたいというファンのニーズに応え、短時間でさくさくと勝負できる「ちょいパチ」をこの6月にデビューさせたのだ。パチンコメーカー、大一商会の販売担当が説明する。
「当社の『ちょいパチ』は『CR天才バカボン~V!V!バカボット!~』という機種です。スペックは大当たり確率30分の1で、出玉は200個ほど。初当たりまでの遊技金額は2000円未満を想定しています。これなら30分もあれば、数度の大当たりを引ける。大当たりのドキドキ感を体験したいライトユーザー向けの台ですね」
確かに昨今のパチンコは大当たり確率300分の1~400分の1のハイスペック機種が主流で、初当たりを引くまでに1、2時間、投資金額も数万円になることもしばしばだった。これでは時間なし、カネなしの庶民は手が出ない。でも「ちょいパチ」なら、気軽にパチンコホールに立ち寄れるようになる。
それにしてもなぜ、こんなコンビニエンスなパチンコが今お目見えしたのか?
「ちょいパチ」登場の背景には、「パチンコ業界の監督官庁である警察の強いプレッシャーがある」とささやくのは、パチンコ業界誌編集長だ。
「パチンコ業界は今年末までに138機種72万台ものパチンコ台を撤去・回収する羽目になっています。昨年、業界団体が遊技くぎをチェックしたところ、まったく玉が入らない穴があるなど、行政の検定時と違う性能のパチンコ台が流通していたことが明らかになり、警察が撤去を要請したためです。
それでなくても警察は、『パチンコは賭博ではなく、遊技であるべき』と、ギャンブル性の高すぎるパチンコ業界の営業のあり方には警鐘を鳴らしていた。そこに72万台もの不正機の存在が発覚したわけですから、もうどうにもなりません。ハイスペック機など、ギャンブル性の高いパチンコ台を段階的に自主撤去し、業界として『自浄作用』を行政にアピールするしかない。サイフに優しい『ちょいパチ』の登場はその絶好の材料なのです」
某パチンコメーカーの開発担当者もうなずく。
「『ちょいパチ』販売にあたって、メーカーは『8台以上の導入、4円遊技専用』という条件をつけている。これがミソなんです。4円パチンコは1円パチンコに比べ、投資金額がかさむ分、ギャンブル性が高くなる。でも、その4円パチンコの島に8台以上のボリュームで『ちょいパチ』があれば、ギャンブル性の高くない営業を警察に印象づけることができるというわけです」
ただし、「ちょいパチ」にはこんな難点が。
「さくさくと大当たりするのでスランプがない。そのため、くぎ調整の良しあしなど、出る台と出ない台の区別がはっきりとわかるので、プロの餌食になりやすいんです。当然、ホールはくぎを辛くして防衛するしかない。そうなれば、『ちょいパチ』の魅力は半減しかねません」
果たして、「ちょいパチ」は不正機72万台撤去に揺れるパチンコ業界の救世主となれるのだろうか?
(取材・文/本誌ニュース班)