加齢臭と違い悪臭を放つ「疲労臭」! 加齢臭と違い悪臭を放つ「疲労臭」!

最近、仕事が忙しくて疲れ気味…。そんな場合に危ないのが、加齢臭と違って年齢にかかわらず、汗がおしっこのような悪臭を放つという恐怖の「疲労臭」。その発生メカニズムと予防法とは!?

■おしっこクサい汗の原因はアンモニア!

8月某日深夜。ようやく仕事を終え、終電を逃すまいとダッシュで到着した駅のホームでふと気がついた。

「あれっ、ひょっとして俺の汗、クサくねえ!? ていうか、超クセェんだけど……(自分にドン引き)」

確かに見た目はフケているが、筆者は30代前半。加齢臭にはまだ早い。ワキガでもない。シャワーも毎日浴びている。服もちゃんと洗濯している。なのに、何が起きた!?

そこでワキガ、体臭、多汗などの治療を行なっている五味(ごみ)クリニック(東京都新宿区)を訪問。カラダのニオイのスペシャリストである五味常明院長、このニオイがなんなのか教えてください!

「ちょっと服のニオイをかがせてください。うん、これは間違いなく『疲労臭』ですね」

ひ、疲労臭~! なんですか、それは!?

「疲労臭は、汗にアンモニアが含まれることで発生するニオイのことです」

アンモニアっておしっこで有名なアレですよね! つまり、俺の汗はおしっこクサいってことか(泣)。

 ビクビクしながら五味院長のニオイチェックを受ける筆者。「完全に疲労臭だね」。アウト~!(泣) ビクビクしながら五味院長のニオイチェックを受ける筆者。「完全に疲労臭だね」。アウト~!(泣)

では、なぜアンモニアなんて恐ろしいブツが汗に!?

「体内のたんぱく質が分解されて発生するアンモニアは、肝臓のオルニチン回路を経て尿素になります。この尿素は通常、尿や便として排泄(はいせつ)されることが大半ですが、オルニチン回路がうまく働いていないと、アンモニアは尿素にならない。そして、その尿素にならなかったアンモニアが血液中に含まれるようになり、汗と一緒に体外に出てくるわけです。

肝臓のオルニチン回路は、疲労が蓄積すると働きが弱くなるため、疲労臭と呼ばれるようになりました」

えーと、要するに、疲れすぎると肝臓がヤバくなって、アンモニアがダダ漏れするってことですね。でも、確かに仕事でヘロヘロに疲れることは多いけど、毎日、大好きな肉をガッツリ食べてスタミナ回復に努めてますよ!

「あー、最悪です。アンモニアが体内で発生するのはたんぱく質、つまり、摂取した肉や体内の筋肉などが分解されたときですから、肉ばかり食べていると当然、疲労臭は発生しやすくなります」

確かに、健康な人でも肉ばかり食べていると体臭がキツくなるという話は聞いたことがある。

「その体臭は、カラダの表面にいる細菌が、汗に含まれるミネラルなどを分解したときに発生するニオイを指すもの。ニオイも、ニオイが発生するメカニズムも、疲労臭とは別物です」

疲労臭が発生しやすい生活習慣とは

なるほど~。では、ほかにも疲労臭の原因になるものはありますか?

「まず、運動不足が挙げられます。汗をあまりかかないことで、汗を分泌する汗腺の働きが弱くなるからです。

そもそも汗とは、汗腺が血液中に含まれる水分、ミネラルなどを吸い上げて体外に放出したもの。でも、汗腺は吸い上げたすべての成分を汗として放出しているわけではなく、同時にミネラル、さらには疲労臭の原因となるアンモニアなどの一部を再び血液中に戻す作業もしている。

これを『汗の再吸収』と言いますが、このサイクルが崩れると、アンモニアなどを含んだ粘り気のある濃度が高い汗をかき、肌がベトベトします。一方、ウオーキングやランニングなどの有酸素運動を続けている人は、汗腺がきちんと働いていて汗もサラサラ。ニオイもきつくありません」

有酸素運動なんてここ数年やった記憶がないし、エアコン大好きだから、そもそも汗をあまりかいてません!

「それから、メタボ体形ですね。カラダへの負担が増えて疲れやすくなるのはもちろんのこと、脂肪は一種の断熱材にもなるので、カラダの内側で発生した熱がこもりやすくなります。その熱を冷ますためには急激に汗をかかなければいけません。そうなると、やはり汗の再吸収が難しくなります」

デブでごめんなさい!

「お酒好きの人も注意が必要です。お酒は肝臓に負担をかけますよね。もしも、飲みすぎで脂肪肝にでもなってしまったら、オルニチン回路も働きにくくなります。

また、ストレスも大敵です。人間は過度のストレスを感じたときに、いわゆる冷や汗や脂汗をかきます。これも急激な発汗なので、汗の再吸収がしにくい」

五味院長、疲労臭の原因って、働き盛りのサラリーマンなら誰でも身に覚えのあるものばかりな気がします。

「おそらく、今は大丈夫だとしても、大半の方が予備軍といっていいでしょう」

やっぱり!

「ちなみに疲労臭は、加齢臭などほかの体臭と組み合わさることで、よりきついニオイになります」

さらに凶暴になるのか!

疲労臭予防の対策とは!?

 ニオイセンサーでも疲労臭認定。「つまり不健康。気をつけたほうがいいですね」(五味院長) ニオイセンサーでも疲労臭認定。「つまり不健康。気をつけたほうがいいですね」(五味院長)

●疲労臭予防にはこれが効く!

もはや絶望的な気分になってきましたけど、何か有効な対策はないんですか!?

「基本はやはり健康的な生活を送ること。定期的な有酸素運動でしっかり汗をかき、暴飲暴食などしないようにして肝臓をいたわる。これだけでかなり違うと思います。

そして、アンモニアを尿素に変えるオルニチン回路で使われるオルニチンは、シジミに大量に含まれているので、シジミの味噌汁やサプリなども効果的でしょう。また、疲労臭と複合してクサくなりがちな『ミドル脂臭』の主成分には、レモンや梅干しなどに含まれるクエン酸が効果的と言われています。

また、疲労回復にも、汗腺をきちんと働かせるためにも、毎日シャワーで済ませるのではなく、たまにはお風呂に入って血行を促進することをオススメします」

どうやら、乱れた生活を根本から見直さないとダメそうですね……。

「疲労臭の根源的な理由は、疲労と脂肪が蓄積した肝臓のオルニチン回路がうまく働かなくなることですからね。とにかく疲れないようにすることが一番です」

それでも、筆者みたいに疲労臭が発生してしまった場合は、どうすれば?

「汗拭きシートでぬぐっても、結局、汗をかいてしまってはどうしようもありません。同様に制汗スプレーも高い効果は望めません。ただ、アンモニアはアルカリ性なので、酸性の消臭剤ならば非常に効果的です。例えば、ドラッグストアなどでミョウバンを購入し、その溶液を服の内側にスプレーして乾かす。これでかなりニオイを抑えられるはず」

了解です! これでおしっこクサさとはオサラバだ!

(取材・文/牛嶋 健[A4studio] 撮影/髙橋定敬)