ここ最近、都内近郊で“焼きそば一本”で勝負するお店が次々とオープンしている。なぜ今、焼きそばなのか? そして、家では絶対に食べられない、そのこだわりの味に迫る!
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以前はほとんど見かけなかった「焼きそば専門店」が都内近郊で増えている。
食べ歩きブログ『焼きそば名店探訪録』管理人の塩崎省吾氏に聞いた。
「着実に増えていますね。その先駆けとなったのは、2013年開店の『みかさ』(東京・神保町)です。クチコミで徐々に人気となり、今や常に長蛇の行列。そのみかさがブレイクスルーとなり、首都圏では焼きそば専門店が次々と出店している状況です。
私自身は10年以上前から各地の焼きそばを食べ歩いていて、いつか専門店のブームも来ると信じていましたが、正直こんなに早く来るとは思ってもみませんでした(笑)」
実は、焼きそばには過去2度のブームがある。
第1次ブームは1975年のカップ焼きそば、そして、蒸し麺の「マルちゃん焼そば」(東洋水産)の発売にさかのぼる。それまで駄菓子屋や縁日などで食べるものと思われていた焼きそばが、自宅でも気軽に調理できるようになり、一気に家庭の味として親しまれるようになったわけだ。
第2次ブームは、B-1グランプリで優勝した「富士宮(ふじのみや)やきそば」や「横手やきそば」など、各地のご当地焼きそばが話題となった06年。
そして、専門店が次々と登場している今回が、第3次ブームである。
「どのお店も、家庭では決して食べられない一品を供しています。特に、焼きそばの命ともいえる麺は太麺で、作り置きの蒸し麺ではなく、自家製や製麺所に特別オーダーした生麺を使っているお店がほとんど。
その生麺を、注文を受けてからゆで、焼き、独特の食感を生み出しています。麺に限らず、ソースや具材など、どのお店も独自の味を追求しているので、食べ比べも面白いですよ」(塩崎氏)
今年オープンした注目の新店へGO!
ということで、まず訪れたのは、前述した「みかさ」の初代店主が開いた「真打みかさ」(東京・高田馬場)から暖簾(のれん)分けされた「真打みかさ 自由ヶ丘」(東京・自由が丘)。10席のカウンターには女性客の姿も目立つ。女性オーナーである本田秀珍氏はこう話す。
「私も、焼き場を任せている店長も女性なので、女性のお客さまが入ってきやすいのかもしれませんね。生ビールや角ハイなどのアルコール類も提供していて、夕方以降は“焼きそばで一杯”なんてお客さまも多いですよ」
高田馬場の「みかさ」で修業を積んだ本田さんのこだわりは徹底している。
「正直、修業を始めてみるまで、焼きそばなんて簡単だと思っていましたけど、やってみると本当に大変で(笑)。麺は生地を作ってからワインセラーでひと晩、低温熟成。その出来具合によって、ゆで時間も毎日変えています。ソースも自家製で、いったん煮込んだものを、1ヵ月以上寝かせています」(本田氏)
それだけの手間と時間をかけているだけあって、麺はコシが強くモチモチとした食べ応え。ソースのスパイシーなうまみを存分に受け止めながらも小麦の味が感じられる、実に強烈な印象!
「これでも神保町や高田馬場の『みかさ』と比べると、食べやすさ重視で、麺の太さを少し変え、味付けもマイルドにしています。また、さっぱりとした韓国風のスープを添えて提供しているのも違いですかね」(本田氏)
●自家製麺やきそば専門『真打 みかさ 自由ヶ丘』(7月29日オープン) 東京都目黒区自由が丘1-28-8 自由ヶ丘デパート3F TEL 03-5726-9216 (営)平日11時~15時・17時~20時 土曜・日曜・祝日11時~20時(全日、麺売り切れ次第終了) (休)水曜(加えて不定休あり)
★後編⇒『家では絶対に食べられない? 第3次「焼きそばブーム」最前線で注目の専門店』
(取材・文/牛嶋 健[A4studio] 撮影/髙橋定敬 五十嵐和博)