ギラギラストーンでバブリーなスカルメイクの女性と私。平野ノラさんではありません(笑)

この日をどれだけ待ったことか。

世界一周中に行きたかったイベントのひとつ、メキシコ最大級の行事「死者の日」(Dia de Muertos)。

故人を偲(しの)ぶメキシコの伝統行事で、日本のお盆に近いと言われていますが、その内容は全く異質!

10月31日の前夜祭や11月1日(子供の魂が戻る日)、2日(大人の魂が戻る日)に向けて1週間ほど前から賑(にぎ)わっていると聞いていたので、この時期に照準を合わせ、私は首都メキシコシティーにやってきました。

メキシコでは3千年ほど前から祖先のガイコツを身近に飾る習慣があったそうで、この時期、街中はガイコツだらけ!

広場や公共施設にはマリーゴールドのお花や「死者のパン」などの食べ物、ガイコツのオブジェや砂糖菓子で飾られた祭壇が置かれ、ガイコツの仮装をした人々で賑わっている。

日本では「死」にまつわる行事は暗いイメージがあるけれど、それとは真逆でとにかく明るいメキシコ。ポップでキュートで楽しく歌って踊って騒いじゃう!というこの行事にいつか絶対参加したいと、ずーっと狙っていました。

パペルピカド(薄紙の切り絵飾り)と死者のパン。ペルーのクスコで売ってたパンに似ている…

オフレンダ(祭壇)はマリーゴールドや死者のパン、ガイコツの砂糖菓子、故人の遺影、十字架、ロウソク、砂絵…等で装飾されている

そしてこのイベント、昨年公開された映画『007スペクター』のオープニングに登場し、日本でも話題となりました。

そのシーンは「死者の日」に行なわれる盛大なパレードにジェームズ・ボンドが潜り込んでいるというもので、衣装は華やかだしパレードは超豪華。各メディアでは「死者の日、完全再現!」などと言われてたから、「あのパレードが生で見れるんだ!」とすっごい期待していたんだけど…。

なんと! 実は映画はフィクションで、今までにそんな豪華なパレードは存在しなかったという事実が、行く直前に発覚しました!

「キャー!! マジ? じゃあ実際はもっと地味なのかしら。ううう…」

とショックを受けていた私ですが、それと同時に「映画きっかけで、今年は007風のパレードをやるらしいよ」との噂も浮上し出した。期待は高まるものの、前例がないだけに情報が全くない! その話が真実かどうか、日時も場所もわからず、旅人もお手上げ状態。

しかたない、情報は現地調達の「行けばわかるさスタイル」で、とりあえず街中を歩き回ることにした。

街中で見つけたカワイいガイコツちゃん

数日前から街中はガイコツだらけ~

ついに登場!ガイコツの大パレード

それにしても、メキシコシティーの人口の多さといったらヤバイ。週末の渋谷スクランブル交差点も顔負けの人口密度で、渋滞は当たり前。

そして「死者の日」直前の週末、土曜日の昼過ぎ。大通りはこれまた群集で埋め尽くされ、そこにはフェンスが設置されていた。「これはなんかあるぞ」と私は群集の中に座り込んだ。

何かが起こりそうなざわめきの中、本格的なガイコツの仮装をする人々が増えていき、中にはメイクではなく顔にガイコツのタトゥーが入っている本気モードの人もいる。

とにかく人が多いメキシコシティー。スリに気を付けないとなー

クオリティーの高いガイコツたち

午後3時をとうに過ぎた頃だろうか、遠くからズンドコズンドコ地割れ音が響き渡ってくると、歓声が沸き上がった! テンポの速い派手なリズムとともにやってきたのは…。

パ、パ、パレードだー! 噂は本当だったんだ!!

先住民族の衣装をまとい、ガイコツに化けた人々が激しいダンスを踊りながら大通りを練り歩く。ガイコツになりきった表情や、観客を驚かしたり煽(あお)るパフォーマンスは大迫力で、クオリティーは高い!

パレードの噂は本当だった!

そしてやってきました大きな骸骨の山車! こ、これは007で見たやつだーー!

小道具のいくつかは実際、映画に使われたものらしく、想像していたよりも派手なパレードに大歓喜!

パレードには50万ドル(約5200万円)を超す費用がかかっていて、数百人ものボランティアが参加。3.5kmの道のりを練り歩くパレードをひと目見ようと集まった観客は25万人との発表もあったほど、とにかくかなり多くの人…いや、ガイコツでビッシリ!

007のオープニングを思い出し、気分はジェームズ・ボンド

演者も観客もガイコツ

メキシコ人はマナーが良い。でも…

目をまんまるにしてパレードを見る子供たち

それにしても、メキシコ人はマナーが良い。れだけの人数なのに、押したりモメたりしている人たちはおらず、目の前のパレードをキラキラした目で見つめている。

それから屋外での飲酒が禁止されていて酔っ払いもいないので、とても整然とした様子。テキーラ飲んで「アミーゴ」とか言いながら適当にやってるイメージだったけど、そんな人はひとりもいない(今までそう思っててゴメンナサイ)。

男性はバスで席を譲ってくれたりドアも押さえてくれる紳士ばかりだし、セクシーな女性たちは目が合うとニコっと微笑みかけてくれる。

メキシコシティーは治安が悪いと聞いていたので警戒していたけど、優しい人たちばかりでかなり安全に過ごせました。

メキシコの人たちは優しくて良い人たちばっかり!

しかし、その裏側ではガイコツの顔をして誰が誰だかわからないことを利用したこんな犯罪も起きていたのです。

11月に入って「死者の日」本番が始まると、宝石店にゾンビやミイラの仮装をした5人組の強が入り、総額約760万円相当の宝飾品を奪って逃走したそう。彼らはゾンビやミイラの他にピエロ、ホラー映画『チャイルド・プレイ』に登場する殺人人形「チャッキー」などの仮装をし、武器で武装していたんだとか。

私はこのイベント中に何人ものチャッキー目撃した。犯人はまだ捕まっていないというが、もしかしたらその内の誰かが犯人…? キャーー!!

『チャイルド・プレイ』のチャッキーを着て踊る子供

そんな怖いこともありますが、何はともあれこの007風パレードはメキシコの歴史に新たな風を吹き込んだのではないだろうか。

メキシコの伝統文化にインスパイアされた映画が世の中に衝撃を与え、こんどはその映画ににインスパイアされて伝統文化が生まれ変わるという…この歴史的瞬間に立ち会えた喜びに、テキーラで乾杯!

このパレードが来年以降も続きますように

【This week’s BLUE】子供の頃からガイコツに囲まれているメキシコ人は、ガイコツを描くのが上手!

●旅人マリーシャ平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】