不規則な食生活、ストレス、そして運動不足で「オヤジ病」の低年齢化が加速している! 不規則な食生活、ストレス、そして運動不足で「オヤジ病」の低年齢化が加速している!

不規則な食生活、ストレス、そして運動不足…。現代人の生活は、かつて「オヤジ病」といわれた病気の低年齢化をグイグイ進行させていた! 

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■現代社会は老化の元凶だらけ!

肺炎、肺結核、糖尿病、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、動脈硬化…といった病名を並べても、普通に暮らしている20代や30代なら「オヤジたちの病気だから俺には関係ない」と思うに違いない。

しかし今、こうした「オヤジ病」を発症する年齢が確実に下がってきているという。

東京・山王病院副院長で、呼吸器外科医の奥仲哲弥先生はこう警告する。

「24時間、ファストフードや様々な食品が手に入る便利な社会ですが、それに頼っている人は注意が必要です。例えば、菓子パンやハンバーガーは1個食べるだけでも体に余分な糖分、脂肪分がたまります。こうした食生活を若いときからずっと続けていると、昭和世代の先輩たちより生活習慣病の発症が確実に早まってしまう。血管の老化が急激に進み、30代で若年性心筋梗塞や脳梗塞になるかもしれません。

問題は食事ばかりではありません。ストレスと運動不足も免疫力を弱め、老化の元凶になります。私自身、呼吸器疾患の外来に、免疫力が強いはずの若者が肺炎や肺結核でやって来る姿を目の当たりにしています。医療現場では、かつては“高齢者特有”だったはずの様々な病気に若い年代がかかるようになったとあちこちで言われ始めているのです

年齢が上がればただでさえ病死のリスクはどんどん高まる。生活習慣でさらに老化を早めることは、この上なく危険なことなのだ。

 病死といえば老人と思い込むのは危ない。20代、30代、40代でも年齢が上がるにつれ病死件数はどんどん増えている 病死といえば老人と思い込むのは危ない。20代、30代、40代でも年齢が上がるにつれ病死件数はどんどん増えている

心のバネ自体が十分に育っていない

■「心のバネ」が育っていない

一方、精神科領域の外来では何が起きているだろうか。日本で初めて受験生を対象にした心療内科クリニックを開いた、本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし先生は「心のバネが弱い若者が多い」と指摘する。

「レジリエンス(精神的回復力)という言葉があるのですが、私たちはこれを『心のバネ』にたとえています。バネは普段から適度に伸ばしていると柔軟性が持続され、徐々に強くなっていきますが、伸ばしすぎるともう元に戻りませんよね。

心のバネもそれと同じで、日頃から適度に伸ばして柔軟にしておかないと、いざ強いストレスがかかったときに伸び切ってしまい、戻らなくなります。これがうつ病や抑うつ症状のモデルですが、今の若い世代はそもそも心のバネ自体が十分に育っていないため、急に伸ばそうとすると壊れやすいのです

心のバネが育っていないのは、社会的な要因が大きい。少子化でひとりっ子が増え、昭和世代と比べて親にはとにかくかわいがられ、塾へ行けば王子さま扱い…というケースも少なくない。

「今の若い世代は、ある意味で対人関係のスキルを身につけるチャンスのないまま大人になった人が多いといえるかもしれません。特に20代は地域や学校にもよりますが、運動会で順位をつけない徒競走をした世代でもあり、ストレスやプレッシャーに打ち勝つ訓練の機会は極めて少なかった。

その子供たちが受験、あるいは就職先での成績争いや対人関係といったプレッシャーに耐えられず、続々とうつ症状になるのは、社会がもたらした当然の結果ともいえるのです」(吉田先生)

うつ症状は20代から30代にかけて発症率がグンと上がり、40代でピークを迎える。

 日本人男性のうつ症状患者数は40代がピークでなんと10万人オーバー。30代でも6万人以上。ただし、これはあくまでも表の数字であり、“予備軍”ははるかに多いと考えるべきだろう 日本人男性のうつ症状患者数は40代がピークでなんと10万人オーバー。30代でも6万人以上。ただし、これはあくまでも表の数字であり、“予備軍”ははるかに多いと考えるべきだろう

今の40代までの人は総合的に筋力が弱い

■運動習慣の有無が老化速度を決める

また、吉田先生が指摘した「順位をつけない徒競走」は体力強化の面でもマイナス効果があった…と、整形外科領域のドクターは言う。

「子供時代は骨や筋肉を育てる大事な時期で、精いっぱい運動することがとても重要です。順位をつけない徒競走や、一部では手をつないでゴールする徒競走も行なわれたといわれていますが、これでは体は強くなりません。

診療現場で実際に診ると、20代、30代だけでなく、今の40代までの人は総合的に筋力が弱い。この世代の人が過去に大きなケガを経験していた場合、筋力の低下などによって将来、関節の軟骨がすり減る変形性関節症などを発症する危険性は大きいと思います」(山王病院整形外科上席部長・南和文[かずふみ]先生)

「大人になってからも運動習慣がない人は、様々な運動を試し、自分に合うスポーツを今のうちに探したほうがいい。自分の筋肉や持久力は今どの程度あるのか、常に状態と体の扱い方を把握しておくことが老化速度を遅らせるコツです。20歳を過ぎたら、すでに老化は始まっています」(山王病院リウマチ科部長・中村洋[ひろし]先生)

筋力、持久力、瞬発力、バランス機能といった能力はすべて20歳前後がピーク。その後、ただでさえ衰え始める体に糖分やストレスばかり与えていては、将来の健康など望むべくもない。

 フィジカル面のあらゆる能力は20歳をピークに下がっていく。データは『スポーツ医学研修ハンドブック[基礎科目]』(文光社/監修・公益財団法人日本体育協会指導者育成専門委員会スポーツドクター部会)より フィジカル面のあらゆる能力は20歳をピークに下がっていく。データは『スポーツ医学研修ハンドブック[基礎科目]』(文光社/監修・公益財団法人日本体育協会指導者育成専門委員会スポーツドクター部会)より

週刊プレイボーイ』3&4新年合併特大号(1月5日発売)では、若い世代が今から注意すべき病気と、それを防ぐための心がけをジャンルごとに詳しく解説しているので、是非チェックしていただきたい。

●総合監修:山王病院副院長呼吸器センター長 奥仲哲弥先生 1958年生まれ、埼玉県出身。『サンデー・ジャポン』(TBS系)に隔週レギュラー出演中。『健康寿命より快楽寿命をのばしなさい!』(主婦と生活社)、『禁煙バトルロワイヤル』(集英社新書、爆笑問題・太田光氏との共著)ほか著書多数

(取材・文/浅野恵子 協力/世良光弘 イラスト/スズキサトル)