あけましておめでとうございます!
2017年の縁起の良いスタートに向けて、私はちょっとフライング気味に昨年末からパワースポットが集中するアメリカ西海岸の「グランドサークル」を旅してました!
まずはロスに住む友人宅でしっかり充電。そして、ラスベガスで旅友とレンタカーをしてこの旅一番の運試しに挑むことに。
夢にまで見た秘境“ザ・ウェーブ”への挑戦です!
ザ・ウェーブとは今から8年前の2003年、とある写真家によって偶然発見されたユタ州とアリゾナ州の州境に位置する流線模様の砂岩。それは非常にもろい砂質で、その貴重な自然を保護するためアメリカ政府により入場制限がされていて、なんと抽選で1日20人しか入れないという。
しかも、そのうちの10人は事前のオンライン抽選で決まっていて、現地での前日抽選の当選枠はたったの10人。これぞキング・オブ・秘境!
旅人としては“死ぬまでに見たい絶景”のひとつだが、道なき道を行くザ・ウェーブへの冒険は危険と隣り合わせで、これまでには遭難者や死者も出ているんだとか。
旅友からは「冬のウェーブは参加希望者が少ないから当選確率は上がるけど、遭難した時に凍死するから気を付けてね~」と忠告を受けていたが、「希少性を高めるために大げさに言ってるんじゃないの? 地図もらえるんだし遭難なんてしないっしょ。とにかく当たることが大事よね!」と、私は鼻息荒く、当たるまで毎日抽選に挑む覚悟で、拠点となるカナブという街のモーテルに待機した。
翌早朝、抽選会場に向かうと欧米人とアジア人が半々というところだろうか、30人くらいが集まっていた。繁忙期は150人も集まるというが、閑散期のその日はやっぱり倍率約3倍と少ない様子で、これなら期待できるかも~。
しかし、そこにいる人々は皆ライバルとでも言わんばかりにピリピリとしていて、まるで受験会場のような緊張感が漂っていた。
並べられた椅子の前のホワイトボードには「日の出・日の入り時間」「天気」「気温」や「ひとり最低1ガロン(4リットル弱)の水を持て」と書かれていた。そして、その横にはガラガラ回すレトロなビンゴ…。
B・I・N・G・Oで運命の女神が…
そう、「ザ・ウェーブ」のその抽選方法とはなんと、B・I・N・G・O、ビンゴなのだ!
いかにもアメリカ人が好きそうな単純な抽選方法で運命が決まっちゃうワケなんだけど、ジャンケンよりかはマシかな。それに私は結婚式の二次会のビンゴで景品を外したことがない強運の持ち主。
ガラガラとビンゴが回り出すと、中国人夫婦やアメリカ人の2人組に続いて、なんと私もサクっと当選! 3回は覚悟してたし5回は挑戦しようと思っていたけれど、一発当選とは嬉しい!
それに続いて韓国人の男女、そして単独参加の日本男子や、同じ宿で一緒に朝食を食べたアメリカ人マルコも当選した。
ハズれた人たちは早々と部屋を出て行き、ハイタッチを交わす浮かれ気分の私たちは、秘密の地図をもらい「死なないように」と釘を刺された。
早速、翌日の荷物を用意するが、「荷物が重いと体力に支障出るよな~。水1ガロンって多すぎでしょ」と、私は1.5リットルだけショルダーに入れた。
懐中電灯・方位磁針・GPSなどマルチに役立つスマホはフル充電して、あ、それから万が一の時のために旅中にどこかでもらった笛と、ワンピースで行っても平気かな~、ルンルン♪
翌朝、いよいよザ・ウェーブの入り口へまずは車で向かうわけだが、その道のりは天候によってはタイヤがハマってしまうほど悪路になる未舗装のダート道だという。抽選に当たったとて、悪天候なら四駆車のレンタカーが必須だったり、最悪、入山できないこともあるらしいが…私は幸運続きで天気の女神がビッグスマイル。
宿から45分、アスファルト道を走った後、霜が張っている13kmほどのダート道をゆっくりと1時間ほどかけて慎重に進み、普通車で無事通過することができた。
そしてスタート地点にある入山帳に許可証番号や名前をサインをしたら、片道5kmのトレッキングにいざ出陣!
私はなんとなく当選仲間たちを追うようにして進んでいたが、カメラの調子がおかしいので一瞬だけ下を向いて歩いたその直後だった…。
「おーい! おまえ、道を外しているぞ! 少し引き返してこっちに登ってこい!」
岩場の高い位置から韓国人チームに大声で呼ばれた。スタート付近にだけある、最初の入り口となる標識を見逃していた私は、なんと開始5分で道を外したのだった。危ない危ない!
しかし標識に気づいていたとしても、道なき道は足場がただの土や岩場で方向がハッキリせず、どちらへ進んだらいいのか本当にわからない。嘘のような話だが、過去には日本人旅人で私と同じように道を外し、せっかくその権利を獲得したのにウェーブを観ずに帰ってきた者もいるらしい。
私は今度こそ前方にいる人を常に視野に入れながら、通ったところを注意深く意識して歩いた。
1時間ほど歩いた頃だろうか、目の前に広がる絶景はウェーブまで行かなくても十分なくらい壮大で、自分が悟空だかナウシカにでもなったかの気分だった。
「この世にこんな秘境があるなんて…!」
感動のため息をついて何枚も写真を撮ったが、正直、素人が何枚シャッターを切ろうが、肉眼で見るその絶景にかなう写真は撮れなかった。
ついにウェーブ現る!しかし…
そして2時間くらい歩くと、ついに岩肌が波打ち始めた。ウェーブだ!
赤土色をした砂岩が層になってキレイな流線を描き、この世のものとは思えぬ神秘が存在していた。大自然の静寂の中で静止した大きな波は、まるで時が止まったような不思議な空間を作り出している。
この絶景をたった20人で観れるなんて贅沢~! 私は最高の波乗りを楽しんだ。
他にもウェーブの周りには、セカンドウェーブと呼ばれる小規模のものや、ハンバーガーやメロンパンのような形をした岩などがあり、皆が思い思いに秘境を堪能していた。
中には、週2でウェーブに来ているというガイドさんを雇っている参加者もいたけど、私は「自力で挑んでこそ秘境の醍醐味が味わえるでしょ」と生意気なことを心の中で呟いた。
そして帰りたくない気持ちでいっぱいだったけど、日が落ちて暗くなると怖いので、旅友とひと足先にウェーブを後にすることにした。
一度通った道はなんとなく記憶しているような気になって、「帰りは余裕だね」などと調子に乗っていたが、言ったそばから気付くと見たこともない景色…。
「え、ちょっと待って、ここどこ…?」
道なき道で方角を失うと、右や左の2択ではなく、360度どちらに向かったらいいのか全くわからない状態。目印となる山はどれも同じに見えたり、岩底に迷い込むと視界は阻まれて遠くの景色が見えなくなってしまったり…。そんな不安な時に限って、冷たい突風が吹き荒れ始め、頭には「遭難」の2文字がよぎった。
「コワイコワイコワイコワイコワイ!」
すでに太陽は落ちてきて寒くなってきているし、一気に恐怖心が高まった私はパニック! 慌ててポケットに忍ばせていた笛を震える唇にあて「ピーッ!ピーッ!」と鳴らし始めた。今思えばおかしな光景だけれども、その時の私は超本気。
そしてスマホの方位磁針を出すと、残りの充電を気にしながら「落ち着け、落ち着け」と、とにかく北へ北へと向かい、なんとか地図に乗っていた目印の山を発見! さらに先ほどのガイドさんの蛍光色の服が見えた!
「た、助けてくれーい!」
さっきはごめんなさいと反省し、私はガイドの袖に泣きついて無事生還したのだった。
こうしてザ・ウェーブの冒険は奇跡的な幸運に始まり、最後には死を予感する経験をして幕を閉じた。
水は結局500ミリリットルくらいしか飲まなかったけど、「自然をなめたらあかん」と深く肝に銘じ、今後の旅も慎重にと心に決めたのだった。
【This week’s BLUE】 セカンドウェーブの上で「石の上にも三年スタイル」。私の旅も3年かー!
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】