不規則な食生活、ストレス、そして運動不足…。現代人の生活は、かつて「オヤジ病」といわれた病気の低年齢化をグイグイ進行させていた!
名医たちの指南で、2017年こそ心機一転、健康なカラダとココロを取り戻せ!
■30代、40代のⅡ型糖尿病患者が増加
栄養バランスのよい食事を取り、毎日適度に運動して、ストレスはゼロ――もしこんな生活が営めるなら、人間は120歳まで生きる可能性があるという。逆に言えば、悪い食事、運動不足、ストレスが命を削るわけだ。
特別長生きしなくてもいい、と思う人もいるだろう。だが、40代以降は生活習慣に起因する病気にずっと悩まされ続ける……という未来もありえることを忘れてはいけない。
「実を言うと、医者でも若いうちは自分の老後の健康をあまり考えないものです。私もかつては大好物のメロンパンとカツ丼中心の食事で、昼の診療や手術のほか、夜勤もしばしばという不規則な生活を送っていました」
そう語るのは、山王病院副院長呼吸器センター長の奥仲哲弥先生。それを百八十度転換したのは30代の後半だった。
「血液検査の結果、中性脂肪値が正常値の4倍以上に当た700mg/dl。焦って生活習慣を改めました。自分の体の数値を知ることは大事です。今の若い世代は甘党でぽっちゃりした人が多いので、ぜひ血液検査で中性脂肪や血糖値を確認することをオススメします。糖尿病と診断されなくても、標準より血糖値が高い“糖尿病予備軍”は案外多いと思います」(奥仲先生)
糖尿病は、膵臓(すいぞう)で作られるインスリンというホルモンの不足で血糖値が上がり、筋肉や内臓のエネルギーが失われていく病気だ。先天的にインスリンの分泌が悪いⅠ型と、生活習慣の影響で発病するⅡ型がある。以前は若年性糖尿病といえば先天的なⅠ型を指し、Ⅱ型の発病年齢は60歳以上といわれたが、近年は30代、40代のⅡ型患者が増えてきたという。
糖尿病Ⅱ型の主な原因は、栄養の偏りと運動不足。食事療法と運動療法でそれを解消することが治療の基本だ。まだ深刻な症状が現れないうちは、低カロリーでバランスのいい食事と運動でかなり改善が図れる。
若い世代に覚えておいてほしい病気
■がんが見つかっても手術ができない
ただし、だからといって糖尿病を侮ってはいけない。それ自体が直接の死因にならずとも、進行すると全身に合併症を引き起こすからだ。
一般に食後血糖値が140mg/dlを超えると糖尿病予備軍、あるいは境界型糖尿病と呼ばれるが、この時点では多くの人がなんの不調も感じない。そのまま生活を改善せずに10年から20年たち、皮膚や目や足の先などに合併症が出てから初めて糖尿病だとわかるケースが多いのだ。
「そこで悲惨な現実を突きつけられるのが糖尿病の怖さ。一番怖いのは合併症による感染症です。免疫力が一気に落ちてあらゆる感染症にかかりやすく、薬は効きにくくなり、命に関わることもある。
糖尿病が進むと、最後は全身の血管が弱くなり、血流が滞(とどこお)るため毛細血管がさびつくこともある。こうなると、たとえがんが見つかっても手術はできません。毛細血管が機能せず、傷口がふさがらないからです」(奥仲先生)
また、いわゆる生活習慣病ではないが、奥仲先生は「若い世代に覚えておいてほしい病気」をもうひとつ挙げる。
■若くても死に至るエコノミークラス症候群
「肺血栓塞栓(そくせん)症、別名エコノミークラス症候群です。かつてサッカー日本代表選手もかかったので聞き覚えがあるかもしれませんが、長時間身動きができないとき、主に脚の静脈の中にできた血の塊が血流に乗って肺に運ばれ、動脈をふさぐ病気です。突然呼吸が苦しくなるのが病気のサイン。若くても死に至る場合もあるので、エコノミークラスに限らず、飛行機やクルマのシートに長く座るときはこまめに足を動かし、水分を十分補給してください」
肺塞栓症防止用の「弾性ストッキング」も市販されているので、長旅には利用したい。
「ここでは糖尿病を中心にお話ししましたが、身近に迫り来る病気だと実感いただけたでしょうか? もし自分の生活習慣に不安要素が見えたなら、カップ麺を減らす、電車のひと駅分を毎日歩くなど、ひとつでも体にいいことを心がけてください」(奥仲先生)
●山王病院副院長呼吸器センター長 奥仲哲弥先生 1958年生まれ、埼玉県出身。『サンデー・ジャポン』(TBS系)に隔週レギュラー出演中。『健康寿命より快楽寿命をのばしなさい!』(主婦と生活社)、『禁煙バトルロワイヤル』(集英社新書、爆笑問題・太田光氏との共著)ほか著書多数
★週刊プレイボーイ3&4号「今年こそ拡大する『オヤジ病』の低年齢化を食い止めろ!!」より
(取材・文/浅野恵子 協力/世良光弘 イラスト/スズキサトル)