大学院卒業後、モデルとして活動するはるかさん。イベントには裏方として関わりたかったため、「三十路祭り」の運営に参加した

「もう徹夜とかキツいよ」「カラオケでオールとか無理でしょ」…多くのアラサーから漏れる“老い”の言葉。記者自身、30歳を迎えたばかりだが、20代半ばまでの若さが懐かしく思える。

そんな中、「人間、三十路から面白くなる!」と言うのは今月29日に行なわれる「三十路祭り1986-1987」代表のはるかさんだ。三十路祭りとは一体、なんなのか?

HPを見ると、『20代までの自分を少しでも振返り、30代からの様々なチャレンジの後押しやコミュニティ作りのきっかけになる場』とあるが、そこには「3000人で乾杯」や「三十路コン♪」、「三十路夢神輿でお祝い」など、パリピ感溢れる惹句が…。まるでリア充たちがわいわい楽しむイベントのようだ。

「いやいや、そんなウェイウェイ系のイベントではないんです。私たちが目指しているのは、“30歳のムーブメント”です。20歳の成人式のように『30歳になったら三十路祭りで三十路の節目を祝う』。そんな日本の文化にしていきたいと思っています。いろいろな経験を経てきた三十路がつながりを作って、そこから何かを生み出していけるようにしてほしいんです」

“つながり”…今度は、パリピだけでなく意識高い系が使う言葉が出てきた。やはりウェイウェイしたいだけなのでは…。地元に引きこもり、平凡な日常を過ごす記者には、どうもそう聞こえてしまう。

「ホントにそんなことないんですよ…。年を重ねると、なかなか普通の友達ってできないじゃないですか。知り合うのは仕事関係だったり、何か立場がある上で出会う人ばかりで。だから同じ30歳の同級生というだけの“素の自分”を見てくれる友達ができればいいと思っているんです」

確かに、余程のリア充やウェイウェイ系の活発な人でないと、新たな出会いは少ない。あったとしても合コンのように異性との出会いの場。ただの友人を作る機会はめったに無いような気がする。

「でしょ! それに30歳ってすごく面白いんですよ。自分の中では当たり前、普通だと思っているかもしれないですが、社会人になって仕事や趣味などで経験も積んでいるから、違うコミュニティの人から見るとモノの見方や思考が全然違うんです。それこそ神輿職人って知り合いにいないですよね。でも、そんな30歳もいるんですよ」

神輿職人――まぁ普通、そうそう出会うことはない。しかし、今回のイベントで使われる神輿を作った宮田宣也さん(30歳)は、神輿職人として日本文化振興のため世界各地で活躍しているそう。

普段はモデルとして活動するはるかさん自身もこのイベント運営を通じて、初めて宮田さんに出会ったという。同様に今回、アドバイザーをお願いした元歌舞伎町No.1ホスト(30歳)とも初めての出会いで、普段は接点のない人々との巡り合わせの連続だったのだ。

そんなはるかさん自身、この運営を通じて三十路との出会いに意欲的になったという。

「元々、人と一緒に何かすることはあまり得意ではなかったんですよ。特にタメの人よりも年上の人のほうがいろんな学びがあると思っていたんです。でも、この運営には大企業の人もいれば、フリーランスで働く人、フリーターの人といろんな30歳がいて、見た目も環境も何もかも違って面白いなと思ったんです」

30歳は“行動”に移しやすい年齢?

確かに学生時代までは“学生”というくくりの中で“差”はできにくい。しかし、30歳にもなれば結婚や転職など、個々が様々な“人生の選択”をしてきた年齢だ。それぞれの環境も含めて、三十路こそ個性が発揮されていくのかもしれない。

しかし繰り返すが、こちとら生粋の内気人間。仕事モードでもなければ、初対面の人にいきなり話しかけるなんて、及び腰になることは見えている。同級生がいるから、出会えと言われてもツラいのだ。それでもはるかさんは「ボッチ参戦、大歓迎!」だという。ハードルが高すぎる…。

「…と思いますよね。でも大丈夫です。そうだと思って、こちらでちゃんと会話のきっかけを作ってあります。ネームプレートを付けてもらうんですが、そこに『○○な三十路』と書いてもらいます。趣味でも得意なことでも、キャラでもなんでもいいんですけど、周りはそれを見て興味を持ったことや共通点があれば、話しかけやすいと思うんですよ」

他にも、地方出身者が共感できるような地域を紹介ブースや「こういう三十路と会いたい」と思った時に探してくれる「縁故び隊」スタッフ、プロフィール登録をすることでメッセージが送れるマッチングシステムなど、様々な出会いのきっかけを準備しているそう。とにかく趣味友達や同郷の人など、様々なタイプの出会いができるよう用意周到にしているのだ。

「参加できるのは30歳だけなんですけど、その家族の方々もOKです。保育園や幼稚園に行っても都内だと親の年齢って高いじゃないですか。同世代のパパ友ママ友って貴重だと思うんですよね。皆、悩みもすごく多いと思うので、それを等身大でわかり合えるつながりを作ってほしいです」

最後に、はるかさんは「三十路だからできることややりたいことが増えてきた」と言う。20代半ばまでフットワークが重いことに悩んでいたが、それがアラサーになって変わったというのだ。

「若い時は悩んだし、何かを始めるにも方法がわからなくて不安もあったけど、30歳が近づいて過信をやめたのかな。ただ毎日を生きていても自分が動かなきゃ何も始まらないし、もう30歳だからやらなきゃって思えるようになったんです。

それは自分だけでなく、周りに何かのスキルを持った人やアドバイスをくれる人がいたからですね。30歳ってそういう人とのつながりもできて、すんなり行動を起こせる年齢だと思うんですよ」

実際、はるかさんは30歳の誕生日に会社を設立したそう。自分自身への誕生日プレゼントとしてだ。現在はまだ動いていないが、「三十路祭り」が終わったら本格的に事業を始めるというのだ。29歳までは起業なんて考えたこともなかったが、それも周りからのアドバイスを得たからやる気になったと話す。

成人式から10年――。大人として熟し始めた“三十路”が集まり、出会うことでこれからの人生、何かが変わるのかもしれない。

(取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)