『すべての疲労は脳が原因』シリーズの著者・梶本修身先生 『すべての疲労は脳が原因』シリーズの著者・梶本修身先生

最新科学が解明した疲労の原因、それは脳だった! そんな研究結果を詳細に解説し大反響となった昨年4月発売の新書『すべての疲労は脳が原因』(集英社刊)。

その好評に応える形で、より実践的な疲労回復方法に踏み込んだシリーズ第2弾『すべての疲労は脳が原因2<超実践編>』が昨年末に発売。2冊とも専門的な内容にも関わらず、計15万部超の大ヒット。慢性的な疲労に悩まされている人の多さが伺える!?

今回、そうした疲れを感じている現代人がどうしたら「疲労を改善できるのか」、また「疲労に関する素朴な疑問」を同シリーズの著者で東京疲労・睡眠クリニックの院長を務める医学博士・梶本修身先生に伺った!

* * *

仕事に集中した後は「精神的に」、スポーツをしたり体を動かしたりすれば「肉体的に」と疲れた様子を表現する。ところが、その根本を突き詰めると、どちらも自律神経の中枢がある脳が疲労の源になっているという。

なぜ、脳が原因なのか? 運動をすれば心拍数や血圧が上がり、呼吸が速く大きくなり体温が上がる。この動きを秒単位で制御しているのが自律神経。そのため、運動が激しくなるほど自律神経が働き、疲れてくる。そんな時に自律神経を酷使するのを避けるべく、脳が体に警報を鳴らすのが「肉体的に疲れた」状況だ。

仕事などデスクワークにおいても同様。集中して同じ作業をし続けることは、緊張を維持するために自律神経、特に交感神経を高める。さらに同じ神経細胞ばかりを使うことで脳のある一定回路に負荷をかけることになる。そこで脳は“この神経細胞を使わないでくれ”と司令を出し、「飽きた~」とのシグナルが出て、それが過ぎると「精神的に疲れた」となるのだ。

その疲れを回復する唯一の方法は「睡眠」だと梶本先生は言う。日中の活動で体内に生じた疲労物質を回復させる物質が充分に分泌されるからだ。また、疲労回復に有効な睡眠のコツも教えてくれた。

「週末は自然に起きるまでゆっくり寝るなどの日があったほうが疲労回復になります。ただ、人間は”寝だめ”という眠りの貯金はできません。週末にたくさん寝ることで、平日の疲れの借金を返しているだけなんです」

この時は朝に遅く起きるよりも、夜に早く寝ていつも通りの時間に起きたほうが生活リズム的にはいいとのこと。

以上のような内容はもちろん、疲労物質の正体や疲労回復に対する実践的アプローチなどが『すべての疲労は脳が原因』シリーズには詳しく書かれている。しかし、最新の研究結果を記した、一見すると難しそうな新書がこれほどヒットする…なんて思ってましたか、梶本先生!

「意外でしたよ(笑)。ただ、ひとつ言えるのは、本を買って読もうと思うほど日本人は疲れている人が多いのかもしれません。購買層は男性が45~50歳、女性は40~45歳が多かったんですが、実は当院を受診される方々とほぼ同じ年齢層。病院へ行くほどでもないけれど、今の疲れをなんとかしたい、と自覚を持つ人がとても多いんだと思います」

睡眠の質が悪いと、10時間寝ても眠いでしょう

そんな疲れた日本においても、トップレベルに「疲れた」を連呼している男、それが週プレNEWSスタッフのオブチだ。そのため、疲れにいい方法を食事・睡眠・環境編で具体的に記した『すべての疲労は脳が原因』シリーズを熟読。

ところが、「…で、疲れをとるには眠るのがいいのはわかったんですけど、この本の中の何をしたら、寝起きバッチリで疲労感がとれるようになるんスかね?」と、ひと言。睡眠が必須なのは理解しできても、心当たりが多すぎて何を実践していいのかわからず、迷子になっていた。

というのも、途中で起きたら再び眠れない、冬でも寝汗で起きる、寝ても寝足りない等、睡眠のコスパが最強に悪いのだ。そこで、オブチの悩みを梶本先生にぶつけてみたのだが…。

「途中で起きる中途覚醒は、90分の睡眠リズムが乱れている状態です。自律神経が疲れている、またイビキをかいていると運動をしているのと同じことになり自律神経を自分で起こしてしまうんです。また、特に暑くないのに大量の寝汗をかくのは、自律神経が高ぶっているということですね。

寝ても寝足りないのは睡眠の質が悪いからです。夢をよく見ます? それは眠りが浅く、睡眠の質が悪いということですよ。中途覚醒をする人は、浅い睡眠を繰り返して、深い眠りのノンレム睡眠までいかないんです。寝ている間に4回くらいはノンレム睡眠にならないと翌日がシンドイ。オブチさんの状況では、10時間寝ても眠いでしょうね」

自律神経が機能していると、環境に合わせて自分の体調を整えられる。質の良い睡眠をとるためには、自律神経がバランス良く働いているほうがいいわけだ。

★後編⇒『すべての疲労は脳が原因』でわかった、実践すべき“5つの睡眠方法”。意外な奥義「衝動を大切にする」とは?

(取材・文/渡邉裕美)

●取材協力/梶本修身先生 医学博士。大阪市立大学病院疲労医学講座特任教授。『東京疲労・睡眠クリニック』院長。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗う疲労食薬開発プロジェクト」の統括責任者。

『すべての疲労は脳が原因』本体700円+税 『すべての疲労は脳が原因2<超実践編>』本体720円+税(いずれも集英社刊)