アメリカ西部をぐるりと廻るグランドサークルの旅を終え、次の出発に向け、しばらく日本で充電したマリーシャ。
いよいよ“世界一周の壁”となっていたアフリカを目指し、再出発!
日本からアフリカ大陸へは、CAのコスチュームがかわいいエミレーツ航空にも乗ってみたかったけれど、バジェット派の私は中国系の格安航空を乗り継ぎ。
日本を出発してから中国で1泊し、乗換えの飛行機では『君の名は。』や『ラ・ラ・ランド』など5本も映画を観て、やっとまずはロシアの地に降り立った。
というわけで、ズドラーストヴィチェ!(ロシア語でこんにちわ)
経由した中国に続き、英語がほとんど通じない上、基本の挨拶さえ複雑なロシア。モスクワの空港に着くと「Ж」とか「Φ」とか「Д」とか、顔文字みたいな文字ばかりで何も読めないし、入出国カードにプリントされた私の名前は「MAPИKO」。
「私は…、マップンコ…( ΦДΦ)?」
なまじ形がローマ字にも似ているもんだから、変な読み方をしてしまい実に厄介だ。
そして空港で働く人ですら英語が話せなかったりするので、街中で道を尋ねてもなかなか情報が得られない。
わりと無表情な人が多く声もかけづらいし、混雑の地下鉄構内では大きなロシア人からしたら私みたいなおチビは視界に入らないのか、ぶつかられることばかり。
なんだかドラえもんの秘密道具「石ころぼうし」をかぶった気分だった(かぶると、まるで道端の石のように周りから一切認識されなくなる)。
心が折れかけた瞬間、カタコトの英語を話せるロシア女子たちに助けられ、宿に到着。親切にも、わざわざ遠回りをしながら一緒に地下鉄に乗ってくれたのだ!
相手のおかげだけどコミュニケーションが取れたことで、やっとロシアっ子の笑顔もゲットできた。
スパスィーバ(ありがとう)!
スタイル抜群なロシア美人が大集合
ロシアの国土が大きいせいか、宿に泊まっているのは外国人よりもロシア人の国内旅行者のほうが多い様子。
挨拶をしながら部屋に入ると、ロシア男性に話しかけられたリ荷物を持ってくれたりと親切にされるが、とにかく皆さん無表情なのはナゼ(笑)?
その内のひとり、キャメル色のロングコートを着た長身の男、彼は英語ができたので私は嬉しくなってニコニコ会話をすると、彼は無表情のまま「おい、おまえ、ロシアをどう思う?」と聞いてきた。
「え…いや、昨日着いたばっかりだから」と言うと、「違う! 着いて5分でどう思ったかだ!」と言うので、そのただならぬ雰囲気に「え…寒くて、いろいろ大きいかな」と曖昧(あいまい)に答えておいた。なんだろうか、この男、ロシアに恨みでもあるのかしら…。
しかし宿で出会った人たちだけでなく、その後もロシアの男たちの笑顔はほとんど見られなかった。
「ロシアの男性はシャイか内向的なのかしら? なんだか女のコのほうが話しやすいかも」と、私はロシア美人を探すことにした。
すると、ラッキーなことにその日は中心地で「メルセデスベンツファッションウィーク」が開催されていたため、すぐにスタイル抜群なロシア美人をたくさん見つけたのだ。
ただでさえ長身で足長のロシア女子たちはさらに高いヒールをはき、ツンツンした顔で気取ってみせる。
正直、日本男子にウケるような童顔や困り顔みたいなタイプではないけれど、女子目線では超カッコイイ!
カッコよすぎて同じ場所にいたくないくらいだったけど、せっかくモスクワのオシャレっ子たちが集結してるんだからと、私はカメラを向けた。
それにしても、結局男性だけではなくロシア女子もまたあまり笑わず、こちらが微笑み光線を送っても、とにかくスッとした表情をしている。
またもや石ころぼうしをかぶった気持ちになっていたら、カメラに気付いたコが意外とキメ顔してくれたりするから、このツンデレ効果にちょっとキュンとしてみたり。
顔は笑ってないけど実は心を開いてくれているのかな、なんて思いました。そしてこれがまんざら間違いでもなく、実はロシアの人々が笑わないのには理由があったのです。
「意味のない笑顔はバカの印」
ロシアでは笑顔は礼儀正しさの表現ではなく、作り笑顔は「形式的微笑」と呼ばれ、偽善や裏表があると捉えられているんだそう。だから知らない人には笑顔を見せないし、笑顔には笑顔で答えるという習慣がない。
なんなら、上下の歯を見せる笑顔は卑俗と見なされ「馬の笑顔」と呼ばれるんだって。そしてなんと「意味のない笑顔はバカの印」ということわざまであるんだそうです!
笑顔は超大事と思って生きてきた私にとっては衝撃の事実!
私、ずっとヘラヘラ笑ってて、ロシア人にどう思われてたんだろう? 「笑う門には福来たる」の日本人からしたらビックリだけど、これですべて謎が解けた(笑)。
ある朝、私がチェックアウトの準備をしていると、その日もキャメルコートの男は無表情で淡々と話しかけてきた。
「窓を開けてくれ。日本の写真を見せてくれ。僕は今日は彼女に会いに行く。とても嬉しい。そして今度イギリスに行くんだ。僕は自分探しの旅をしているんだ」
彼は終始、無表情だったけれど、いろいろ会話が続いた。そして別れ際に「あ、そういえばカムチャッカから日本が見えたよ」と少しだけ唇の端を上げて、握手を求めてきた。
その時はなんのことかわからなかったけれど、もしかしたらアレは“彼なりのユーモア”だったのかもしれない。
普段、クールな表情しか見せない彼がほんの少しだけ笑顔を見せた時、少なからず私はきゅんとしたと思う。
【This week’s BLUE】 さすが、歴史的にバレエが盛んで新体操の強豪国でもあるロシア。赤の広場で演技をかまし撮影するロシア女子たち。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】