「10時間過ごすのだから、ひとつの街みたいにいろいろな施設があるといい。豪華客船に近いイメージかな」と語る石原良純氏

JR北海道が大ピンチだ。島田修社長いわく、「バケツに穴が開いたような状態」の赤字構造に、人口減少、莫大な除雪費用、高速道路拡張といった逆風のなか、逆転の策はあるのか? 

そこで、お天気キャスターだけでなく、最近はコメンテーター、さらに鉄道タレントとしても活躍する石原良純(よしずみ)氏が改革案を提言。エンターテインメント業界に長く身を置いているからこそのアイデアがJR北海道を救う?

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―北海道の鉄道の思い出は?

石原 小学校の林間学校で十勝岳に登ったんです。当時は飛行機が正規料金しかなく、めちゃくちゃ高いから鉄道でした。青函連絡船で函館に着き、キハ80の特急「おおぞら」に乗って旭川まで。寝台列車も乗ってます。札幌から稚内(わっかない)や釧路まで。道内は遠いけれど、夜行で行くほどの距離じゃないから、途中駅で時間調整しながら行くんだよね。

うちの子供も鉄道が好きで、去年の夏に函館から渡島当別(おしまとうべつ)までローカル線に乗せた。俺と奥さんはレンタカーで先回りして待っていたら、そこに観光バスがいた。同じことをバスツアーがやってたんですよ(笑)。

―ツアーでわざわざローカル線に乗るというプランがある。

石原 今はローカル線に乗ることがブームなんです。景色がゆっくり流れて、車窓を眺めるというのがみんな好き。特に田舎の景色がいい。そう考えたら、北海道は一番に自然が残っている。だから、線路自体をアミューズメントパークと考えてみるといいんじゃないかな?

オススメは宗谷本線。特にいいのが稚内から旭川までの区間。お客さんには稚内まで来てもらって、1日かけて札幌まで行く。特急だと5時間くらいで行けちゃうのだけれど、ゆっくり10時間ぐらいかける。途中駅で海を見に行ってもいい。きっとラッコやトドがいるでしょ?

あとは、冬の雪原。それだけ時間がかかるから食事も車内。車窓を見ながら食べるのもいいし、景色が良ければ途中駅で外に出て弁当でもいい。これは話題になるんじゃないかな。

―時間を贅沢(ぜいたく)に使った旅。

石原 ディズニーランドやUSJ、京都の街並みにはかなわないですが、北海道で唯一無二なものは、大平原をゆっくりゆっくり列車が走ること。それが一番の魅力だと思います。

それと北海道を観光する際は、レンタカーを使うことが多い。するとお父さんはお酒が飲めないんですよ。羽田空港のラウンジから我慢しなければいけない。でも鉄道なら運転しなくてもいいからうれしい。

「30両編成とか、できるだけ長くしてほしいね」

札幌と稚内を結ぶ特急「宗谷」。春のダイヤ改正によって札幌直通は1往復のみになった(写真/photolibrary)

―お酒もいくらでも飲めますね。さて、どんな車両を使いましょうか?

石原 どこでも走れるようにディーゼルカーだよね。お座敷列車もいいかも。列車が揺れて、おっとっとって酒がこぼれるのも醍醐味(だいごみ)。子供を安心して遊ばせる場所もいるよね。小さい子供を連れていくと、親はあまりくつろげないじゃないですか。

子供を預けておける安全な遊び場をつくる。それなら奥さんも喜んでこの旅のプランに参加してくれるでしょ。あとは30両編成とか、できるだけ長くしてほしいね。10時間過ごすのだから、ひとつの街みたいにいろいろな施設があるといい。豪華客船に近いイメージかな。カジノがあったり、ショーが見られたりもいいね(笑)。

―その列車の名前をつけていただけると。

石原 なんだろーな。センスが問われるからいやだな(笑)。やっぱり「北」って字はつくよね。でも、鉄オタが喜ぶような名前をつけるとダメなんですよ。「ロマン紀行えぞじ」とか。むしろ女性や子供を意識したほうがいい。どうせ鉄オタは、名前がなんでも乗っちゃうし、写真を撮りに来るんだから。

「キタキツネ物語」とかどうかな(笑)。子供は喜ぶでしょ。駅でキタゴンみたいなゆるキャラにお出迎えをさせて。お土産も売れそうだよね。キタキツネ物語スナックカニ味、ホタテ味みたいな(笑)。

『週刊プレイボーイ』16号(4月3日発売)「JR北海道 私ならこう立て直す!」では、石破茂、鳥塚亮、原武史の各界を代表する鉄道マニアが改革案を提言!

(取材・文・撮影/関根弘康)

●石原良純(いしはら・よしずみ)1962年生まれ、神奈川県出身。大学在学中に俳優デビュー。1997年に気象予報士免許を取得。日本の四季、気象だけでなく、地球の自然環境問題にも力を入れている