メルハバ!(トルコ語でこんにちわ!)
カッパドキアで熱気球に乗ったお次は、「パムッカレ」へレッツゴー!
パムッカレとはトルコ西部にある石灰棚(石灰華段丘)の絶景。ローマ帝国の都市ヒエラポリス遺跡とともに世界遺産に登録されている。
石灰を豊富に含んだ白い棚田に温泉水が湧き、白と青の幻想的な景色を作り出しているのが特徴なんですが、一部では「ガッカリ世界遺産」なんて言われてるんです。
確かに画像検索すると、見るからに加工しまくりな写真ばかりなので、期待しすぎたらそこにはギャップがあるのかもしれない。「プリクラやセルフィーで盛られたかわいいコと実際会ったら全然顔違いました」と同じ現象だろうか?
しかし、旅のルート的にちょうどよかったので、せっかくだし「本当にガッカリするか検証しよう」と夜行バスで8時間、デニズリ県にある小さな街に向かった。
まだ薄暗い早朝にバスが到着し、眠い目をこすると、まず飛び込んできたのは日本語!?
街の玄関口となるバス会社の停留所の真横には、堂々と日本食店があるではありませんか。実はここ、トルコを旅する旅人なら知らない人はいないと言われている伝説の有名店「ラム子の食堂」なのだ。
「噂のラム子…だっちゃ」
なかなかインパクトのある店名であり、また、ラム子と聞いて、ついつい『うる星やつら』を想像してしまう。
そして普段なら海外で日本食店には入らない私だけど、なぜだか無性に気になるお店だったし、どこも開いてない早朝にバス到着に合わせて開店してくれたので入ってみることにした。
「ラム子…。羊の肉でも使った料理なのだろうか、それとも緑色の髪をして虎柄ビキニを着た店員さんが出てくるのかしら、ドキドキ…」
すると、現れたのは優しそうな日本人女性、通称・ラム子さん! 元々、旅人だったそうで、トルコ人の旦那さんと結婚してからこちらに住んでいるのだそう。
「アラブの春(アラブ世界で発生した大規模反政府デモ)以降、日本人の観光客は減っちゃったのよね~」と言っていたが、こうやってこの街を通り過ぎる旅人を癒してくれているのだろう。
日本の家庭料理が並ぶメニューの中から、オススメの「親子丼」を頼むと、卵のふわトロ具合も味付けもバッチリでウマイ! 久々の故郷の味が身に染みた。
石灰棚のヌル~イ温泉で足湯
噂のお店で朝食も食べれたことだし、早速、パムッカレの石灰棚を見に行くか。
ラム子から5分も歩かないところにドドーンと現れたのは、真っ白で雪山のような石灰棚の丘とその前に広がる美しい湖の景色だった。
周辺にはプールやスパなどの看板があり、テーマパークっぽいところが旅人からのガッカリポイントのひとつとも言われている。
私はそんなことよりも、そこに写っている水着姿の女性の写真が気になった。さすがイスラム教の国、モデルが着用しているのはブルキニという肌の露出を抑え、全身を覆ったイスラム教徒の女性用水着だった。
隣には一般的なビキニ姿や奇抜なセクシー水着の女性も写っているが、一緒に並んでいると違和感がスゴかった。
そしていざ、35トルコリラ(約1050円)の入場料を払って石灰棚パムッカレとヒエロポリス遺跡に入場!
石灰の上を歩くには裸足にならなければいけないので、スニーカーを脱いでひと足踏み入れると……ヒンヤリ~!
上流から流れてくるのは温泉らしいが、下流や浅いところは早朝の気温の低さでだいぶ冷たくなっていた。
しびれるほど冷たかったので、急いで丘の上まで上り詰め、上流の温かいところで足湯をして、なんとかセーフ。
それでも想像している温泉とはほど遠く、まあヌル~イ温度で、熱々の温泉に慣れ親しんでいる日本人旅人からはこれまたガッカリポイントなんだとか。
そして一番のガッカリと言われているのが、観光地化すると共に環境破壊が進み、温泉の水量が減っているということ。
確かに乾いているところも多く見受けられたけれど、私はその美しい景色にガッカリするどころか少し興奮気味で、同じバスで来た中国人女子に「きれいだね!」と話しかけると、「中国にもあるから珍しくないし、ウチのほうがイケてるかな(笑)」だって。
中国の世界遺産「黄龍風景区」の石灰棚と比べているのだろうか。中国人の旅人からも少々ガッカリされていた。
「ラム子」の親子丼が忘れられない
石灰棚の丘の上にあるヒエロポリス遺跡は、イタリアのローマやギリシャのアテネで見たような景色だったので、サラっと周りベンチで休憩。
ウトウト眠りこけそうになっていたら(というか、実はマジ寝してたら)、いつのまにかトルコ人やベネズエラ人の女子たちに囲まれてセルフィータイムが始まった。日本人観光客が減っているせいか、やはりトルコではなかなか人気者になれる。
こうして私のパムッカレ旅は、期待のハードルを下げて挑んだせいか、他の旅人とガッカリポイントがズレているのか、終始満足に終わった。
ほのぼのした小さな街で一泊くらいはしてみたかったけれど、私はこの日も夜行バスで移動しなければならない。
街に戻ってバス待ちの間、ブラブラと散歩していると、日本語をチラホラ見かけ、過去にたくさんの日本人が来ていた様子が窺えた。
他にも気になる日本食店が何軒かあったけれど、私は先ほどの親子丼の味が忘れられず、再びラム子の食堂に戻り、もう一度親子丼を頼んだ。
ラム子の食堂は2008年夏に開業し、名前の由来はトルコで最初に飼い始めたペット「羊のラムちゃん」にちなんで付けられたそうだ(うる星やつらは関係なかった・笑)。
「この間、日本に一時帰国したら、ドアはちゃんと閉まるし、水はちゃんと流れるからやっぱり違うわね」と話すラム子さんだが、そんな生活の基礎的なことから違う秘境でどうやって日本の味を再現しているのだろうか。
「はじめは上手に作れなかったのよ。でもここで私ができることといえば日本食を作ることぐらい。試行錯誤しながら何回も作ってできるようになったのよ」
旅人の胃袋をつかむこの味は、ラム子さんが日本人として自分のできることをこの地で精一杯やってきたからこそ完成されたものだった。
この日はひとりでお店を回していたけれど、不在時にはレシピ化したものを現地のトルコ人スタッフに教えてあるので大丈夫だそうだ。
店内では中国人、韓国人、西洋人、現地トルコ人などのお客さんが日本食をおいしそうに食べていて、私は「どう? 日本のゴハンおいしいでしょ?」と得意気な気持ちになった。
パムッカレの水は少々枯れていたけれど、ラム子の食堂はうわさ通り、旅人のオアシスとして潤(うるお)っていた。
【This week’s BLUE】 ローマ時代の遺跡が沈んでいる温泉プール「アンティーク・プール」。大理石の柱などの遺跡がゴロゴロ転がっていて、まさに「テルマエ・ロマエ」の世界! ●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】