エジプトから南下する王道コースで、ついにアフリカ大陸編スタート!
「旅人マリーシャ、エジプトで資格を取ります!」…と言っても、ピラミッド検定とか砂漠ソムリエとかではありません(そんなものはありません)。
実はここエジプトは古代遺跡だけではなく、世界屈指のダイビングスポットとしても有名なんです。「世界一美しい海」とも言われる紅海は透明度が高く、固有種の魚もいたりと世界中のダイバーの憧れ。
そしてファンダイブなら1ダイブ2千円程度と世界最安値を叩き出していて、エジプトに来た旅人の多くはダイビングを楽しんでいるのです。
「紅海に来て、潜らないなんて後悔するぞ!」というわけで、私はここでダイビングライセンスのレベルアップに挑むことにしました!
紅海に面したシナイ半島で、バックパッカーの中でド定番なのは、ダハブ。
日本人の集まる有名宿があり、物価や滞在費の安さ、海のきれいさ、ダイビングによる“つり橋効果”で恋に落ちやすいといった理由から「恋するダハブ」と呼ばれていて人気だ。
居心地の良さから「沈没スポット」としても名高く、南米で出会った旅友(男・30代)は恋すらしてないものの、すっかり旅を中断し、その地で『ドラクエ』をクリアしてしまうほど完全沈没してしまったという。
ダハブに行ったら私も沈没してしまうのではと心配していたが、私がまず向かったのはダハブからほど近いハルガタというダイバーの聖地(フルガダとの表記も)。トルコからなんと5千円という破格の航空券を見つけたからだ。
しかもダハブが「ビーチエントリー(ビーチから潜る)」なのに対し、ハルガダは「ボートエントリー(魚のいるポイントまでボートで行って潜る)」なので、さらにダイビングには適している。
エジプト有数のリゾートと言われているわりに街中は廃墟だらけの印象だったけれど、紅海は噂通り美しくバツグンの青さで輝いていた。
ついでにプールやジムのついたオーシャンビューの高級ホテルも1泊2千円代のセールをやっていたのでこれも超ラッキー。翌日からダイビングだというのに、テンション上がって夜遅くまでジムでワークアウトしちゃった!
紅海の魚たちに感動!
さて今回、私が取得しようとしているダイビングライセンスはPADIのアドバンスド。
初心者が取得するオープンウォーターが潜れる水深18mより、さらに深い30mまで潜水することができ、洞窟や沈没船の所や、夜に潜れたりとダイビングの幅が広がる。
以前、東京での取得を考えてショップに問い合わせると、ネット広告に出ていた基本料金以外にも機材レンタルや教材、ライセンス申請、海までの送迎や宿泊などなんだかんだで軽く10~20万円はかかると言われ断念した。
エジプトでは5分の1程度の価格というのが嬉しいが、中にはいい加減なショップも存在し、インストラクターが未熟だったり、機材がひどかったりという話もある。ダイビングは時に命に関わる事故が起こりうるアクティビティなので、ショップ選びは慎重に行ないたい。
そんな中、ハルガタで唯一日本人がやっているダイビングショップがあるというので、やはりジャパンクオリティーを信頼してそこで申し込むことにした。
当日ショップへ向かうと、明るく迎えてくれた日本人女性は頭にヒジャブ(スカーフ)を被り、すっかり地元の人のようであった。インストラクターであるエジプト人の旦那様と結婚して20年以上エジプトに住んでいるそうだ。
先日トルコで出逢ったラム子さんもだが、アメリカやヨーロッパなどではなく、特に異文化度の高い地に嫁ぐ日本女性たちは本当によく覚悟を決めたなと思う。
さて、早速ベテランインストラクターの旦那様アブドゥと、なんと2歳半から海に潜っているという息子(身長180cmのイケメン)と一緒に海へ向かう。
ライセンスの取得には2日間必要で、講習内容は学科講習と海洋実習5ダイブ、基本的には難しいことはなく楽しんでクリアできるという。
しかしこのコラムを読んで下さっている方はご存じだと思いますが、私はアクティブそうに見られるが実は相当な運動音痴で、船酔いには弱いし、マリンアクティビティーにはいつもビビってばかり。
もちろん今回も例外ではなく、1日目のダイブは15m程と何度も経験済みの水深でありながらも緊張しまくりで余裕がなく、相変わらず中性浮力を取るのもヘタクソだった。
なのに、体が小さいせいか、なぜか人よりもエア(酸素タンク)の減りが少ない。そんなわけで超親切なアブドゥは、団体から外れて私だけを引っ張って、エアがある限り海底の魅力を教えてくれた。
海中でパニック状態に…
紅海のダイビングは最高であったけれど、旅の疲労がたまった中で3本潜ったのは結構、体に堪えた。
そして昨夜のジムのせいもあったのか、太ももはパンパンで激しい筋肉痛と全身はクタクタ。夜になるとお腹の調子も悪く、吐き気と頭痛で熱っぽい。尋常ではない体の状態と、明日潜る30mへの極度の緊張に、このまま潜ったらアクシデントを起こしてしまうかもと不安を感じ始めた。
ダイビングは肉体状態も精神状態もしっかり自分で把握し責任を持って挑まなければいけない。私は自分の身体に極限状態を感じ、ライセンスを諦めなければいけないかもと思いながら、せめてまずは体力回復のために眠りについた。
しっかり睡眠を取った翌朝、体調はまあまあでまだ不安な気持ちは残っていたが、時間は待ってくれず、すでにボートの上。
「紅海の海は透明度が高いから30m潜っても明るいし怖くないよ! ギリギリまでやってみて無理だと思ったらそこでやめればいいから、楽しんでやってごらん!」と皆に励まされ、2日目ともなると周りの機材準備の動きも早く、気づいたら海に飛び込む瞬間となっていた。
迷う暇もなく海に飛び込み、ついに深海につながるロープをつたいながら水深30mへと潜水…。
「ハァ、ハァ、ハァ…、ハッ、ハッ、ハッ…」
しかし、やっぱり体力のなさと緊張といろいろなものが相まってか呼吸が落ち着かず、息切れが激しくなり、少しだけパニック状態なのを感じた。
私はロープを掴んだまま動けなくなり、アブドゥを見つめて目とハンドサインで訴えかけた。
「アブ、私、ダメかも。浮上かも。てゆうか、動けない。お願い、ちょっと止まって。ゆっくり、ゆっくり…」
しかし、水深30mの世界では水圧から呼吸も深くなるため、一緒に潜る他のダイバーの酸素量も限られている。呼吸の確保はとても大事だし、またエア切れは潜水事故の元。ゆっくりなどはしていられないのだ。
水中メガネの奥に見えるアブの心配そうな目がこう言っていた。
「大丈夫、オレについてこい」
「ああ、これか吊り橋効果…」
そう思っているうちに私の呼吸は落ち着いてきた。
ロープから手を放し、海底までさらに降りて講習が始まった。
空のペットボトルが水圧でペッシャンコになっている状態を確認。また減圧症になっていないか、地上と同じように脳が働いているかのチェックで数字を1から探すゲームをしたり、光が吸収された深海では赤色が黒っぽくに見えたりすることを勉強。
そして私はアブドゥに手を取られながら、無事に30mに沈む沈没船の周りを一周。手取り足取りの海中デートスタイルで、なんとかライセンスを手に入れたのだった。
命を預かるダイビングインストラクターの仕事には本当に感心したし、きっと日本人の奥様はあの目に惚れてエジプトに嫁ぐことを決めたんだろうなと思った。
海外で暮らすにはいろいろ苦労や悩みもあるだろうが、「エジプトは意外と学歴社会でね。期末テストがすべての進路を左右するのよ。ウチは子供たちが勉強嫌いだから困ってるのよね~」と、どこの世界でも母の悩みはそう変わらないようだ。
「紫外線が強いから肌が大変なの~」と、女性の悩みもまた一緒だった。
もちろん私も同じ悩みを持っているので、ライセンス取得後に必要な顔写真は海から上がりたてのスッピン写真ではなく、まるで別人のようにメイクした写真を用意したのだった。
【This week’s BLUE】 オーシャンビューの人気レストラン。ヒジャブをかぶった女性がシーシャをくゆらすシルエットがエジプトっぽい。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】