ただ料理が並ぶだけのビュッフェはもう古い!? ただ料理が並ぶだけのビュッフェはもう古い!?

好きなものを好きなだけ食べられてお得なビュッフェや食べ放題。GWや休日は行列になっていたりと今も人気のスタイルだ。かつては種類の豊富さをウリにしていたが、近年、変化が起きている。

「一番大きいのはパフォーマンスや体験型が増えましたね。最近だと、岩塩の上で肉を焼いている場面を見せたり、自分でパンケーキを作れるコーナーを設けたり、食材や料理だけでないエンターテイメント性サービスが増えています」

そう語るのは、ブッフェ評論家・グルメジャーナリストの東龍(とうりゅう)氏。料理を味だけでなく、目や香りで楽しめるようにしているというのだ。他にも、スイーツを目の前でデコレーションしたり、自分で串カツを揚げたりするビュッフェなど多岐に渡るとか。

「食べ放題やビュッフェは2000年代後半、デフレと呼ばれた時代にピークを迎えました。そこで競争が激しくなったことで、少しおいしいだけでは差別化ができなくなり、いろいろなことをやり尽した結果、最終的に食材以外に“満足感”を見い出すしかなくなったんです」(東龍氏、以下同)

かつての全盛期には個人店も含め、様々な飲食店で食べ放題形式のビュッフェスタイルが人気となった。ユーザーがコストパフォーマンスを求めたためだが、昨今は安かろう悪かろうで始めた店はかなり少なくなっているという。

「昔はお寿司食べ放題1500円という店もありましたよね。でも日本人の舌は肥えてますから自然と離れていきました。材料費も高騰しているため大手でないと価格を抑えられない状況で、そういう意味では評判が悪い店はほぼ淘汰されてきています」

そんな中、品質は一定のレベルを満たした上で、パフォーマンスなどエンターテインメント性も付加され、東龍氏いわく「まだ競争は続いているのでそれぞれ工夫次第で進化していく」そう。

“いい店”でチェックすべきポイントとは…

一方で、サービス面に関しては「時間制なのに料理提供が遅い」「ビュッフェ方式なのに目玉の料理が補充されない」「オーダー方式で量が少ない」などの声も未だに聞こえてくる。

3月には札幌パルコに入っていたオーダー制のビュッフェ店で、注文から15分以上経って苺ひとつしか運ばれずに炎上した例もある。店舗側が「原則1品につきひとつ」というルールをメニューに記載していなかったためだ。

「パルコの件は詳しいことはわかりませんが、業界も成熟している中で特殊な例だと思います。しかし、商業施設に入っている店舗は社員は店長だけでほとんどがアルバイト。先の食材費の高騰などもあり、そうでないとやっていけないのが現状です。だから安価な分、ある程度仕方ないとはいえお客様とのコミュニケーションが取れないと、こういうことになる」

つまり、店員側のスキルや教育が行き届かず、ユーザーへの説明不足などが起きてしまうというわけ。混雑時の提供時間や料理不足などもあらかじめ伝えておけば、ユーザーも入店するかどうか選べたはずだ。

「あと、お客様もルールを把握しておくことが大事です。バイキング制でも一部料理はオーダー制だったり、最初に決められたひと皿を食べるファーストディッシュ制だったりと最近はルールが複雑なので、それを理解していないと。お互いの認識が甘いところがあるかもしれないですね」

店側も安価で提供するため様々なルールを設けている。そして「値段に対応する権利があり、できる対応とできない対応ある」。だからこそお互いにまず確認することが大事なのだ。その上で“いい店”を選ぶのにポイントとなることは?

「入り口から料理が見えるビュッフェはいいお店の可能性が高いです。何があるかやしっかり補充されているかわかりますし、自信があるから見せてることが多いです。あとは気になる場合は『中を見せてください』と言えば見せてくれると思いますよ」

より進化していくだろう食べ放題やビュッフェ。失敗しないためにもルールを確認してから出かけよう。

(取材・文/鯨井隆正)