2017年4月23日、その年のNo.1セクシー女優(AV女優)を決める祭典『DMM.R18アダルトアワード2017』が開催された。同イベントはスタートから今年で4年目。今やアダルト業界最大級の賞レースとなっている。
創成期からスタッフとして関わってきたライターのO氏はこのイベントの企画段階から参加しており、毎年、プレス担当という役目を担っている。今回はそんな彼に“AV女優のアカデミー賞”の舞台裏を聞いた。
■緊張感が漂う阿鼻叫喚の楽屋裏!?
DMM.R18アダルトアワード(以下、DMMアワード)で、最も名誉がある最優秀女優賞はこれまで上原亜衣(2014年)、湊莉久(2015年)、大槻ひびき(2016年)と続き、今回の2017年は三上悠亜が受賞した。
「このイベントは、AVファンなら誰もが考える『真のNo.1女優は誰なのか?』という疑問に答えを出すべく企画されました。また、AV女優という仕事を選択した女性たちに感謝の気持ちを伝える場を作りたいという思いもあります。
女優のスピーチを主軸に進行しますが、これはアカデミー賞や某アイドルの総選挙の影響ですね。彼女たちの気持ちを本人の口から直接伝えていただくことで、ひとりでも多くのファンの方々に感動や共感を得てほしいという願いがありました」(O氏)
「賞の発表を前にした楽屋にはいつも緊張感が漂う」とO氏は言う。
「特に新人賞のノミネート女優さんたちは例年、ものすごく緊張しがち。2014年の新人賞にエントリーした桜井あゆさんは本番前から目を真っ赤にしてポロポロと涙を流していました。でも、根が勝ち気な関西人の彼女ですから『こんなんじゃアカン!』と言いながら気合いを入れ直していましたね」
AV女優といえども、2千人を超える人の前でのスピーチにプレッシャーを感じないわけがない。
「緊張の一番の要因は『ファンの期待』を背負っていること。受賞できるのはほんのひと握りですから、賞を獲得できなければ、応援してくれるファンを失望させてしまうと考えている女優さんばかりです。そのプレッシャーは相当大きいと思います。
例えば、今年の最優秀新人女優賞を受賞した高橋しょう子さんは、楽屋口で細かい足踏みをしていました。『緊張しているの?』と聞いたら、『あまり緊張はしていないですよ。でも、お腹がちょっと痛くて…』と言うので『それはたぶん緊張からくるものだと思うよ…』と答えておきました(笑)」
今年のノミネート女優のひとりだった市川まさみも、こんなことを言っていたという。
「楽屋裏では余裕があるように見えたんです。でも、話しかけみるとかなり緊張していた。『スピーチで何を話そう?と考えていたら朝4時まで眠れなかった(笑)。昨日、イベントでファンに会って激励をもらったんです。横断幕を作って会場で手を振るよ、と。ファンがいないと、もっと緊張しちゃうかも。本当にありがたいです』」
歴代受賞者から読み解く勝者の条件とは?
■2017年は例年とは違う雰囲気
しかし、2017年の現場は比較的落ち着いていたという。
「例年と違って、楽屋裏は和やかでした。ノミネートされた19名(1名は体調不良で辞退)のうち6名が『恵比寿★マスカッツ』に在籍していたこと。さらに、同じ事務所に所属している、作品やイベントで共演したことがあるなど、共通項を持つコたちが多かった」
昨年の受賞者であり、今回、プレゼンターとして登壇した大槻ひびきとAIKAの存在も大きかったという。
「彼女たちは出演する側の気持ちがわかっているだけに、楽屋裏で各女優さんに積極的に話しかけて場を和やかにしてくれました。むしろ、一番緊張していたのはAIKAさんでしたね。終始、『あ~、誰が(最優秀女優賞を)獲るんやろ? 考えるだけで緊張するわ~。お腹が痛いわ~』と(笑)」
■歴代受賞者から読み解く勝者の条件とは?
毎年のノミネート女優は、そうそうたるメンバーばかり。並みいる強豪を押しのけて1位に輝くには、何かしら理由がある。
「アワード初開催の2014年。記念すべき最初の栄冠に輝いた上原亜衣さんに後日、勝利の理由を聞いたところ、『企画単体であることが重要でした』と語っていました」
専属女優は他社の作品に出ないのでリリース本数は月に1本程度。一方、作品ごとに契約をする企画単体女優は、オファーさえあれば制限なく作品に出演できる。
「彼女には専属のオファーもあったそうですが、それを断り、物量作戦に出ました。多い時は月に30本近くもリリース。作品数が増えれば、おのずと人気も高まる、という手法でNo.1を勝ち取ったんです」
2015年の最優秀女優賞である湊莉久も企画単体女優だが、彼女はSNSに特化した投票呼びかけに力を入れていた。
「ノミネートが決まった後にTwitter上でつながっているファンに呼びかけ、“湊作品の中で一番よいもの”を挙げてもらい、1位になった作品を多くの人に拡散してもらえるように頼んだそうです。また授賞式当日には真っ先に帰宅し、ツイキャスでファンと交流の場を作っていましたね」
三上悠亜は努力で1位に輝いた!
今年のプレゼンターを務めた昨年度受賞者、企画単体女優・大槻ひびきも熱狂的なファンの後押しが勝敗を左右した。
「彼女は従来の作品数やSNSに加えて、ビデオショップなどのイベントを増やし、ファンとリアルで接触することを続けていた。そうすることで都心部や地方のファンが連携し、強力なサポーター集団へと変貌していったのです」
そして最後に、今年の女王となった三上悠亜。
「受賞スピーチの後、舞台裏に降りてきた彼女は大きなスカートに青いティアラを着けていた。私が『お姫様みたいですね』と言ったら『プリンセスだもん』と、頬を赤らめていました」
彼女はメーカーの専属女優であり、“元国民的アイドルグループ所属”という過去を持っている。その経歴が受賞の決め手だと思われがちだが…。
「それは少し違いますね。彼女は現在所属する『恵比寿★マスカッツ』のメンバーからも努力家と言われています。本業であるAVの撮影の他にTV番組のレギュラー、スポーツ新聞や週刊誌での連載などを持っていて、オファーがあれば、ほぼ断らずにこなしています。その合間をぬってSNSを更新し続け、さらにイベントでのファンとのふれあいも忘れない。
彼女は、今までの受賞女優以上のハードスケジュールで動いていた。そして、それを笑顔で乗り切れる“努力の天才”だったんです。これは最優秀新人女優賞に輝いた高橋しょう子さんにも言えることだと思います。
三上さんの努力を象徴する出来事がありました。スタッフが機材の撤収を終えて帰ろうとした深夜11時過ぎ、他の女優さんはすでに帰宅している中、彼女だけは最後の最後まで会場に残っていたんです。そして会場の外で待っていたファン数十名と直接会い、改めて感謝の言葉を伝えていた。この光景を見た瞬間、彼女が“肩書き”で最優秀女優賞を受賞したのではない、ということがよくわかりました」
DMMアワードでは“もっとも努力をした人が勝つ”という、スポ根さながらの成功法則があるようだ。
写真協力/(C)DMM.R18 ADULT AWARD 2017