お食事中の方、すみません!
日本では『うんこ漢字ドリル』が148万部を記録し空前のベストセラーになっているようですが、今回は旅人マリーシャがエチオピアで「ウンコラルフルフル」に出会ったお話です。
さーて、テナイストゥリン!(アムハラ語で「こんにちは」)。
エチオピアに到着してから一瞬も気が抜けず疲労困憊で、いきなり心が折れそうになった私。目的の少数派民族に会うには、アディスアベバからさらに長距離バスを乗り継いでいくため、その道のりはまだまだ長い。
エチオピアでは夜行バスの運行が禁止されているため、翌朝は4時起きし、5時にはバスターミナルに集合。でも空はまだ真っ暗で、これじゃほとんど深夜だよ!
眠たい目をこすりながらバスに揺られ8時間、アルバミンチという街に到着すると、
「今日は日本人が5人来たよ。皆でランドクルーザーをチャーターして民族村へ行くツアーはどうだい?」
小さな町なので日本人が何人いるかはバレバレで、客引きがゾロゾロついて来たが、私は長いこと飲まず食わずで腹ペコだったので、とりあえず目の前の飲食店に駆け込んだ。
まずビールはなんとか頼めたが、食べ物に関しては言葉が通じない。困ったなと隣のテーブルに目をやると、地元の人がランチに食べているのは…
でた! アレが噂の「見た目は雑巾、味はゲロ」と言われているエチオピアの主食「インジェラ」では!?
誰が言い出したのか、その失礼極まりないキャッチフレーズは旅人の間でとても有名である。…すると、そのテーブルの男が飢えた私の視線に気づいた。
「食べてみるかい? こっちへおいでよ」
ついに未知の味を、いや、その評判が本当であれば、ハメをはずして飲みすぎた時のあの味を“食べる”時が来たぞ(なんかスミマセン)。
第一印象は強烈な酸味!
インジェラは「テフ」という穀物の粉を水で溶き、数日かけて発酵させ、少し分厚いクレープ状に焼いたもの。色は灰色と肌色を混ぜたような感じで、表面には気泡でできた穴がブツブツブツブツブツブツブツブツと無数にあいている。
生地の見た目はイマイチだが、その上にはワットと呼ばれるカレー風の煮込みやジャガイモ、人参、キャベツなどの野菜が乗っていて、なんとなくカラフルに構成されているので、一応ギリギリ、インスタ映えするんではないかしら。
触ると少ししっとりモチっとした質感で、私は恐る恐るインジェラを手で小さくちぎって、具を乗せて口に入れた。
「す、酸っぱい!」
さすが発酵食品、第一印象は酸味! 具の味よりもインジェラの味が勝る。スポンジのような食感で正直おいしいとは思わないけれど、食べられなくもないし、具があればなんとかなる!
発酵食品といえば、日本にも納豆というソウルフードがあるけれど、外国人が納豆を初めて食べるよりかはインジェラのほうが抵抗が少ないと思う。ちなみに納豆は「コーヒー豆に鼻水を混ぜたような食べ物」などという海外の反応があるが、なるほどね…(私は納豆大好きです)。
私は日本人お得意の愛想笑いと、親指を立てた「いいね!」のジェスチャーでおいしい素振りをアピールした。
それにしても小麦粉で作ればいいのにと思ったら、実はこの「テフ」という素材は栄養価が高く、鉄分、タンパク質、カルシウム、ミネラル、繊維も豊富なんだそう。
さらに小麦粉と違ってグルテンフリーのため、健康志向の高い人たちの間で人気。最近ではビクトリア・ベッカムなどのハリウッド女優や先進国のセレブたち、そして道端姉妹も注目するスーパーフードなんです。だとしたら、ひょっとしたら日本でパンケーキに続いてインジェラブームくる? …いや、こないか。
まあ味的には経験として一度食べれば十分だと思ったけれど、その後もエチオピアの食事には大体、インジェラが付いてきた。
夕食にはラム肉の煮込みを頼んだが、これにはカラフル野菜もなく、インジェラ生地に茶色いものだけがドーンと乗っていて、見た目はウ~ン。しかしクタクタに煮込まれて柔らかくなったラム肉はコクのあるビーフシチューのようで絶品だったし、濃い味付けはインジェラの酸味を消してくれた。
「ウンコロール」に不意打ちされる
他にも「ティブス」と呼ばれる炒めた肉や「ゴメン」という日本語の謝罪のような名前のホウレン草風のもの、青々としたナゾの葉っぱなど、具は様々。
スパゲッティーをおかずにインジェラを食べているエチオピア人を見た時は「なんでやねん!」と思ったが、お好み焼きをおかずにご飯を食べる関西人を思い出した。
そんなある日、また現地人が食べているものをジーっと見つめていたら(欲しくて見ているのではありませんよ。何食べてるのかな?って思ってさ)、「食べなよ」ーーエチオピア人のレッドワン君にすすめられたインジェラには、これまでの茶色いものとは違う黄色っぽい具が乗っていた。
「コレは何?」と聞くと、「ウンコロールだよ!」だって!
「え?(笑) ウン……?」。不意打ちのネーミングに言葉を失う、私。
「だーかーらー、ウーンーコーラール、だってば!」
ほんの少し聞き間違えていたが、それでも笑いをこらえるのが必死で復唱できないでいると、周りのおじちゃんたちも口々に「ウンコラル! ウンコラル!」と言い出したので耐えられずに笑ってしまった。
詳しく聞くと、どうやらウンコラルは卵のこと。細かくしたインジェラと混ぜて炒めたスクランブルエッグは「ウンコラルフルフル」と言うそうだ。
インジェラの味に慣れたせいだろうか、それとも柔らかく優しい味の卵がほどよくインジェラと絡みフワフワしていたからであろうか、すごくマッチしていておいしかった。
それにしてもウンコラル(卵)入りとはいえ、インジェラのおかずがインジェラとは。いくら栄養価が高くても、さすがに「インジェラ飽き」したマリーシャであった。
ちなみに、実はアムハラ語で「ようこそ」は「ウンコアンデナマットー」と言い、その返事は「ウンコアンデナコイユ」だ。
とにかく日本の小学生なら大喜びしてしまう響きのアムハラ語であるが、インターネットの世界で2ch用語としても使われるAA(アスキーアート)のひとつ、「ヽ( ・∀・)ノウンコー」がアムハラ語から来ているとかいないとか。
一部では「キター」とほぼ同じ使い方をするなんて説も出ているようで、顔文字の動きはたしかにウェルカム感出てるけど…その真相やいかに…?
【This week’s BLUE】 宿のステージで始まったエチオピアンダンスのショー。小刻みに肩を動かしながらステップを刻む激しいダンスで、スピード感のあるアフリカンなリズムがカッコイイ!
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】