皆さんは気づいているだろうか。最近、家電量販店の店頭で、やけに黒光りする渋い家電が目立っていることを……。高機能・高性能、そして抜群のインテリア性。今こそ「ブラック家電」で暮らしを引き締めよう!
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「ブラック・イズ・ビューティフォー! 50年の雌伏の時を乗り越えて、ついに黒の時代がやって来たぞ~!!」
夏のボーナス商戦を目前に控えたある日、東京都内の某家電量販店の前でひとりで大騒ぎしていたのは、毎度おなじみの家電ジャーナリスト、じつはた☆くんだ氏。もしかして、白髪染めのステマかなんかですか?
「そんなわけないでしょう、何を言ってるんですか! ついに全国6000万人の日本男子が長年待望してきた“黒色(ブラック)家電”の時代がやって来たんですよ!!」
黒色家電? 黒い家電ならテレビとかレコーダーとかラジカセとか……、別に珍しくもないですけど。
「ハァ……(深いため息)。相変わらず何もわかっていませんねえ。それはAV(オーディオビジュアル)系の、もともと黒色製品が多い“黒物(くろもの)家電”の分野の話でしょ。そうじゃなくて、従来“白物(しろもの)家電”といわれていた分野に、黒色の製品が激増してるっていう話ですよ!
戦後日本が東京五輪を契機に高度成長期に突入した1960年代、白物家電が各家庭へ一気に普及していく大ブームがありました。あれから約50年、ようやく『黒』が市民権を得たんです。これを革命と言わずしてなんと言う! エポックメイキングと言わずしてなん(以下略)」
黒色調理家電の“解放戦争”が始まった
白物家電って、冷蔵庫や炊飯器、洗濯機なんかのいわゆる生活家電のことですよね? それが黒の時代に?
「そういった家電がなぜ白物と呼ばれたか。もちろん、絶対的多数を占める王道の色が『白』だったからです。特に白物家電ブームの時代は、現代よりずっと衛生状態が悪かったですからね。
キッチンや水回りで使用する家電製品は、とにかく清潔な白! カビやゴキブリ、ネズミを連想させかねない黒は絶対NG! キッチン家電とナース服は白に限る! そんな“白神話”に日本人は支配されてきたんです」
ナース服は関係ないんじゃ……あ、でも確かに、最近は看護師の制服の色もバリエーションがいろいろです。
「(無視して)その神話に真っ向から立ち向かい、“掟(おきて)破り”の炊飯器を2006年に市場投入したのは三菱電機でした。強力な火力を武器とするIH炊飯ジャーと、純度99・9%の『本炭釜』の組み合わせが画期的だった、黒いボディのNJ-WS10です。
当時、まだ家庭用IHを目にする機会が少なかった人々は、そのパワーと炊き上がる米のうまさに驚愕(きょうがく)! そして、炭のイメージを最大限に生かすためのブラックカラーに衝撃を受けました。ここから黒色調理家電の“解放戦争”が始まったわけです」
★『週刊プレイボーイ』26号(6月12日発売)「夏のボーナス商戦は、『ブラック家電』を狙い撃て!」では、憧れのハイエンドからからお手軽ロープライスまで、各メーカーのブラック家電を紹介!
(取材・文/近兼拓史)