『週刊プレイボーイ』本誌で連載中の「ライクの森」――。
報道情報番組『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)ではメインMCを務める人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
今回は、鉄道マニアである彼女が「都電荒川線」の魅力を語ってくれた。
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現在、東京都が運営する唯一の路面電車である「都電荒川線」。都心の北側をぐるっと半円を描いて走る、全長12・2kmの路線です。市街地を縫うように小さな車両が走る姿は、レトロな佇(たたず)まいがあってとてもすてきです。
そんな都電に、愛称がつきました。その名も「東京さくらトラム」。外国人にも親しんでもらえるようにつけた名前だと思うんですが……。ちょっと納得がいきません! 確かに、都電沿線には桜の名所がいくつかありますが、季節によってはほかの花も楽しめるからです。
6月の今の時期だと、アジサイ。王子にある「飛鳥(あすか)の小径(こみち)」には1300株のアジサイが植えられています。このへんは、5月にはツツジが咲き誇る地域でもあります。
そして、都電といえばバラ。沿線の東側は、バラの名所として知られているんです。この地域のバラは、荒川区と「荒川バラの会」というボランティアグループの方々が育てているもので、その数、なんと1万3000株! 品種も140種に及び、春と秋には色とりどりのバラが沿線を埋め尽くします。私の中で都電の花といえば、この「バラの会」のおばさま方が丁寧に植栽したバラのイメージが強いですね。
そんな都電沿線のバラを楽しむために、今年の母の日は、母と一緒に都電に乗りました。「荒川遊園地前」や、「町屋駅前」の近辺は絶好の鑑賞スポットで、撮り鉄の人たちや、日曜画家のおじいちゃん、おばあちゃんもたくさんいました。私は、町屋の都電と京成本線が交差するスポットで、ふたつの車両が行き交う様子をiPhoneで撮ったりしていたんですが、母も自前の一眼レフでバラを中心に撮影していました。
全国の路面電車には、もっとしっかりしてほしいです
私の母は写真が趣味で、よくいろんな所に出かけては一眼レフで高解像度の写真を撮っているようです。でも、最近のiPhoneってすごくキレイに撮れるじゃないですか。私がそれで撮った写真を見せると、「iPhoneなんて誰でもキレイに撮れるからねっ」と、悔し紛れに早口で言うんです(笑)。
そして、都電も「王子駅前」まで来ると、バラが見られなくなります。その代わり、民家のすぐそばを走っていたそれまでの車窓の眺めから一転、大きく開けた風景が目に飛び込んできます。特に、王子から「飛鳥山」に向かうときの坂道が、私はめっちゃ好きです! この坂は、路面電車の基準ギリギリの急勾配になっていて、「こんな坂を走るの!?」といつもドキドキさせられます。
ちなみに、町屋駅前や王子駅前のように、路面電車って「○○駅前」っていう名前の停留場がけっこうあるんですよね。でも、これはおかしいと思います。だって、路面電車の停留場だって、立派なランドマークじゃないですか!? なのに、ほかの私鉄やJRの駅の付属物であるかのような「○○駅前」という名前をつけるなんて……。全国の路面電車には、もっとしっかりしてほしいです。
さて、飛鳥山の先にも、「面影橋」など味のある都電の停留場があります。だけど、今回はいくつかの駅で降りてたっぷり写真を撮ったので、途中の「大塚駅前」で降車し、うなぎの串焼きを食べてJRで帰宅しました(笑)。
●市川紗椰(いちかわ・さや) 1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、報道情報番組『ユアタイム』(フジテレビ)ではメインMCを務める。王子駅前で降車して、日本一短いモノレール「アスカルゴ」に乗るのも一興