オレゴン州ポートランドを歩いていると、時折漂ってくる紫色の煙。「パープル・ヘイズ」はたばこの煙を指すが、転じて大麻そのものの意味としても使われる。
この街では駐車場、路地裏、住宅地の一角からも大麻のにおいを感じ取ることができる。鼻腔(びこう)にほんのりと残る植物を燃焼させた独特の焦げ臭さ。特徴的なので、一度嗅げば忘れることはない。
日本人なら、大麻と聞くと違法で悪いイメージがあるだろうが、この街ではそういった後ろめたさは微塵(みじん)も感じられない。それもそのはず、2015年10月から医療用に加え嗜好(しこう)用大麻の販売、購入が全面的に解禁されたのだ。
「大麻合法化ムーブメントの最先端」として名高いオレゴン州ポートランドを旅して、大麻を取り巻くリアルに世界中の危険地帯を歩くジャーナリスト、丸山ゴンザレスが迫る!
■ポートランドってどんな街?
オレゴン州はカリフォルニア州の北、ワシントン州の南に位置するアメリカ西海岸の街だ。地理的には日本人と縁遠いと思われそうなオレゴンだが、実は『スタンド・バイ・ミー』『グーニーズ』『シャイニング』など、日本人にもなじみのある映画作品の舞台となっているのだ。
また、オレゴンの州都ポートランドは人口約60万人ほどの都市だが、スポーツブランドのナイキをはじめ、アウトドアブランドのコロンビア、若者に人気を誇るシューズブランドのダナーやキーンの本社が置かれている。
さらにポートランドは2013年の「全米ベストシティランキング」で見事1位に輝くなど、近年脚光を浴びている街なのだ。日本でも注目度が高く、オシャレな街として雑誌の特集が組まれるほど。ここまで言えば、オレゴンの持つ独特なクリエイティブ気質、カルチャーに対する意識の高さが伝わるだろう。
■大麻販売店へ潜入!
ポートランド国際空港に到着したのは深夜だった。ホテルに向かうタクシーから見えるのは、アメリカではおなじみの、なんの変哲もない大都会の夜景だけ。車窓をぼんやりと眺めている私に運転手が話しかけてきた。
「あんたみたいなの多いよ」
そう言ってたばこを吸うジェスチャーをした。それが何を意味しているかすぐに思い当たった。ここ最近、オレゴンには合法大麻を目的とした観光客が急増中で、運転手からすれば「おまえも同じなんだろ」と言いたいわけだ。
説明するまでもないが、日本では大麻は麻薬として取り締まりの対象となっている。所持や販売、使用すれば厳罰に処される。たとえアメリカで合法でも、日本人が現地で大麻を使用したら日本の法律で裁かれてしまう。日本人旅行者が軽い気持ちで大麻に手を出すことは許されないのだ。
翌日の昼過ぎに市内を歩いていると、青や緑の十字架がデザインされた看板がやたらと目を引いた。薬局や病院ではない。この表示こそが大麻販売店の目印なのだ。
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●丸山ゴンザレス 1977年生まれ、宮城県出身。國學院大学大学院修了。犯罪ジャーナリストとして世界中の危険地帯を取材中。現在はTBS系の『クレイジージャーニー』にも出演し話題。7月26日に新刊『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)が発売予定