江川芳章氏が制作した世界一の車両。車体にふたつついたプロペラの秘密は? 江川芳章氏が制作した世界一の車両。車体にふたつついたプロペラの秘密は?

8月に開催された「国際鉄道模型コンベンション」で自作のリニア型の鉄道模型を走らせ、時速3546キロ(実車換算)という驚異のスピードを叩き出した男・江川芳章(よしあき)氏。いったい何者なのか? 前編に続きレポートする!

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ギネスを出した車両は、フォルムも個性的だ。

「実は今回ぐらいのスピード(実車換算しないで時速40キロ程度)だと、形状はあまり関係ありません。最初に台車の形が決まって、そこにどんなボディが合うか考えた結果、リニアモーターカー型にしただけなんです」

それでも気になるのが車体にふたつついたプロペラだ。これは何?

「普通の鉄道はモーターで車輪を回して走りますが、これはモーターでプロペラを回して走るプロペラカーなんです」

見慣れない形だが、1930年代のドイツでは、模型でなく実際にプロペラで走る車両が造られ大きな話題になったのだそう。

「ちなみに去年もプロペラカーでしたが、今年は車両を3分の2ぐらいに短くして軽量化しました。それとモーターを1個にしてます。そのほうが電流がひとつのモーターに集まって、スピードが出るんです。そして動力がないほうの車輪は空転しないようにゴムベルトをつけました」

 モーターはスロットカー用のものを使うなど、部品はすべて市販品で、材料費は合わせて1万円ほど。部品の価格よりも、シビアな調整がものをいう世界だ モーターはスロットカー用のものを使うなど、部品はすべて市販品で、材料費は合わせて1万円ほど。部品の価格よりも、シビアな調整がものをいう世界だ

バージョンアップを重ねて参加した今年の大会。見事に優勝したが、いつもとは違うプレッシャーがあった。

「ギネスの測定は1回だけなんです。失敗したらどうしようって。実はこの車両は足回りをふたつ作っていて、調子のいいほうが最初に3758キロを出したんです。でもギネス挑戦前にクラッシュして、羽根が曲がっちゃった。なので、もうひとつで走ったら3546キロでした」

コンテストに9人しか出てないんです

これだけでもすごい記録だが、江川氏はもっとスピードを出す自信があったという。

「4000キロや5000キロはいくと思ってたんです。でも今年は電源が踏ん張り利かない感じでしたね。私しかわからない感覚かもしれないですけど、内部抵抗が大きくて、コントローラーをフルパワーにしても規定の12V6A(アンペア)がこないような」

電源のわずかな違い。もう神の領域だ。次の展開はどう考えているのだろう。

「今回はプロペラを使いましたが、モーターで車輪を回す方法でも速くできるんじゃないかという感触があって、次回はそっちで戦おうかなと。サスペンションなどについては、ほぼ完成形だと思うので、ほかをどう変えるか」

彼が一番望んでいることは、この競技の活性化とライバルの登場だ。

「コンテストに9人しか出てないんです。本物の車両メーカーやロボコンをやってる高専の人とかどうですかね。あと鉄道模型はアメリカやイギリスが盛んで、きっとスピード狂のクレイジーなヤツがいると思うんですよ。新幹線を開発した国の代表としてぜひ戦ってみたいですね」

 自宅に広がる鉄道模型のレイアウト 自宅に広がる鉄道模型のレイアウト

 本物の運転指令員さながらに、さまざまな車両を動かすのが江川氏の至福の時間 本物の運転指令員さながらに、さまざまな車両を動かすのが江川氏の至福の時間

(取材・文・撮影/関根弘康 写真/IMON)

●江川芳章(えがわ・よしあき) 部品メーカー経営、かつて大手モーターメーカーに勤めていたこともある57歳。5年前に趣味全開の家を建て、週末はこもりっきり。スピードコンテストでは無敗の3連覇