スマホ認知症、スマホの長時間使用で首が伸びたままになるストレートネックや、小指の変形などなど。最近、スマホの使いすぎによる体へのダメージ問題が多発中。
そんななか、最も身近で発症しやすいといわれるのがスマホ老眼だ。しかも、これ、思いのほかダメージが大きいとか!
老眼のガチ勢である40代以上だけでなく、最近では20代、30代でも続々と発症中というスマホ老眼のメカニズムをチェックしてみましょう。
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スマホ老眼とはどのような症状を起こすのか? その原因とは? 『老眼のウソ』(時事通信社)や『1日5分かけるだけ! 100円メガネで視力は回復する!!』(永岡書店)などの著書がある眼科専門医の平松類先生に聞いてみた。この表ですと、何項目ぐらい当てはまるとアウトですか?
平松 20代、30代でこちらの「スマホ老眼の症状」にひとつでもチェックが入った場合は、スマホ老眼の可能性が高いです。
―ひとつでもですかっ!
平松 はい。特にスマホを長時間使用するだけでなく、仕事でパソコンを長時間使う人に発症することが多いのです。また、暗い所でスマホを使う。ちょっとした休み時間にすぐ使うというのも原因になります。
―ディスプレイがあるデジタルデバイスの使用頻度が高く、さらにいろいろ間違ったスマホの使い方をしていると発症しやすい?
平松 そうなります。通常の老眼は加齢による眼球の毛様体筋の“衰え”が原因です。しかし、スマホ老眼は“間違ったスマホの使用法”が原因となり、毛様体筋の“コリ”を発症するのです。ですから年齢に関係なく発症します。ずっと同じ姿勢で座り続ければ、若い人でも腰痛になりますよね。これと同じことが目に起こっているのです。
―スマホ老眼が発症するメカニズムはわかりました。では、加齢による老眼との症状の違いは?
平松 加齢による老眼は“近くのものが見えづらくなる”ことが主な症状です。しかし、スマホ老眼では“頭痛”や“肩コリ”も併発するのが特徴なのです。
―視界がぼやけて、さらに頭痛や肩コリって最悪かよ! スマホ老眼の予防・改善策とは? 目が幸せになれるスマホの設定などはありますか?
平松 まず基本となるのはスマホやパソコンのディスプレイの輝度(明るさ)を弱くすることです。多くのデジタル機器はディスプレイがきれいに見えるように標準設定が必要以上に明るくなっています。ですから、標準設定より輝度を7、8割下げるのが効果的です。
ブルーライトを防ぐ「NightShift」機能
―なぜ輝度が強いと目にダメージが?
平松 本来、人間は光を直接見ることはありません。しかし、ディスプレイは常に光を発していますので、これでは目に負担がかかります。
―近年、スマホやパソコンが発するブルーライトによる目への影響がトピックスとなることも多いですが?
平松 実は、ブルーライトは一日の生体リズムを整えるのに必要な光です。しかし、ブルーライトを長時間見続けるのは失明するほどのダメージになるのです。もちろん、スマホ老眼の原因のひとつです。
―ブルーライト、危険すぎ! これを防ぐには?
平松 目と端末の距離です。スマホは30cm以上、パソコンなら40cm以上の距離をとることで軽減できます。そして、iPhoneならブルーライトをカットする「NightShift」機能がありますので、これを設定するのがブルーライトの対策として有効です。
―iPhoneだけでなく、多くのAndroid端末にも、そのような機能設定がありますね。では、文字がぼやけて見えづらい場合に、文字サイズを大きく表示するのはどうでしょう?
平松 効果的です。文字が大きければ目を力ませずにディスプレイを見ることができ、目のコリを防げます。しかし、スマホの文字サイズを大きくしすぎると、ディスプレイの表示範囲が狭くなります。これにストレスを感じるようでしたら、初めからディスプレイの大きな端末を選び、文字を拡大表示するのがいいでしょう。
―なるほど。スマホ老眼対策としては大画面ディスプレイのほうが有効だと。最近はiPhoneXやGalaxy Sシリーズのように有機ELディスプレイを搭載したスマホも増えています。これの効果は?
平松 一般的に有機ELのほうがブルーライトを抑え、目に優しいと考えられます。しかし、使用している人が少なく、実証データがありません。まだ効果があるとは言い切れないのが現状ですね。
やはり、効果的なのはディスプレイとの距離を保ち輝度を抑える。そして、90分ほど作業したら休憩し、遠くを見て目をリラックスさせることです。
―でも、スマホでマンガや小説を読んでいると、時間とかあっという間かと!
平松 電子書籍は「Kindle」などのブルーライトが少ない電子ペーパーを採用した専用端末のほうが目に優しいです。
また、こちらのほうが文字の判別もしやすく、読書スピードもアップします。
―Kindleは価格的にもお手頃なので、読書が多ければ幸せになれそう!
100円ショップの老眼鏡で目の緊張をほぐす方法
―ここまでスマホやパソコンの予防・改善策をチェックしましたが、それ以外にもありますでしょうか?
平松 会社や自宅で手軽にできる方法としては、タオルでまぶたを温めることです。濡らしたタオルをレンジで約40秒加熱し、人肌よりやや温かい40℃ほどにします。これをまぶたの上に5分間置く。一日2回、10分間行なってください。
―簡単すぎっ! これはどのような効果が?
平松 温かいタオルはまぶたの周りの血行をよくし、目のコリを和らげます。また、ドライアイの改善にもなります。
―このほかにも、平松先生が考案したスマホ老眼回復メソッドがあるとか?
平松 老眼鏡を使用した予防・改善策があります。
―CMでおなじみの、ハズキルーペ!! 安心の日本製ですか?
平松 いえ。100円ショップで販売されている老眼鏡で十分です。ただし、度数は必ず「+2.0」を選んでください。
―老眼鏡を使用するって、普通すぎなのでは?
平松 度数が+2.0の老眼鏡ですと、ほとんどの人がピントが合わないはずです。この状態で1~3m先のポスターなどを毎日5分間眺めます。
―本当だ! ピントがまったく合いません。
平松 これは強制的にピントが合わない状況にして“ぼやけた視界”をつくるのが目的なのです。
―その効果は?
平松 ぼやけることで目の緊張をほぐし、ピント調整能力がアップするのです。目をストレッチしている感覚ですね。これはスマホ老眼だけでなく、眼精疲労の回復にも効果があります。
―最近、スマホ老眼への効果をアピールする目薬も多く発売されています。これらは有効ですか?
平松 予防・改善策を行ないつつ、目薬はそのサポート的な役割と考えてください。ただ、目薬を点眼する方法が間違っていると、効果は半減します。
―正しい点眼方法は?
平松 点眼したら、パチパチとまばたきせずに、目頭を押さえてまぶたを1分間閉じます。これで点眼した目薬が涙で薄まることなく効果を発揮します。
―例えば、加齢の老眼とスマホ老眼の併発は?
平松 現在、加齢とスマホ老眼を併発している方が多くなっています。100円老眼鏡は、そのどちらも回復が見込めるので、毎日5分、就寝前に行なうのを習慣づけていただければと思います。
―そしてスマホ、パソコン使用時は適度な休憩もお忘れなく!
(取材・文/直井裕太)