優先順位は低いけれど、できるなら彼女が欲しい――恋愛への関心が薄くなった昨今、そうした声はよく聞く。心のどこかでそう感じている人も少なくないはずだ。そうした中、話題になっているのが『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』(イースト・プレス刊)だ。
著者は各種媒体で多くの連載を持つ人気恋愛コラムニスト・トイアンナ氏。大学卒業後は外資系企業に就職、そこで培ったマーケティングスキルを活かし、恋愛分析を行なっている。これまでヒアリング調査してきた人数は800人を超える。
前編では「女性化する男性」が増えていると語ったトイアンナ氏。今回はそんな恋愛初級者が彼女を作るため、どうアプローチすればいいのか聞いた。
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女性慣れし、出会いを得たら、後はモテる…つまり、好かれるためにどうしたらいいかが問題だ。
まず大事なのが「清潔さ」。著作では「イケメンですら台無しなタブー3ヵ条」として「服装が奇抜」「連絡がおろそか」に並ぶNG事項としている。モテる第一歩としてもよく言われるが、「モテる以前の問題の人が多い」とトイアンナ氏は言う。
「目ヤニがごっそり付いてるとかメガネが脂ぎってるとか、前歯が虫歯でほぼかけてたり…。彼女を作る以前に会社で『不潔な人』と言われてしまう外見だと自覚のない人が多いんですよ。なので、上から目線でイヤなんですが、それは書かなきゃダメかなと」
実は、それが男性の想像以上に大事なことだと続ける。誰しも“雰囲気イケメン”であれば、なれる可能性は高いのだ。
「社会性のある服装と清潔感だけで女性は誤認するんですよ。女性のコミュニティで『イケメンだよね』って言われている人が全然イケメンじゃない例はたくさんあります。本物のイケメンのように清潔感があることを目指せばいいんです」
ネットだけでなく、今や日常生活でも聞く「ただしイケメンに限る」――当然、そういう趣向の女性もいるが、それは男性の作り上げた勘違いだそう。
「むしろ、『モテテクが通用するのはイケメンに限る』なんて言葉を使う男性のほうが女性を顔で見ていることが多いです。それでもいいんですけど、勝手に男もイケメンじゃないとモテないと誤解するなら、もったいないですよね」
さて、実際に好感を持ってくれるような相手ができたら、次はアプローチの段階。それなしで急に告白しても「友達だと思っていた」とバッサリいかれるのがオチだ。本書では「下心を小出しに」とあるが、それができたらモテているはず。モテない男こそ何をしたらいいのか、どんな態度を取ればいいのかがわからない。
「まず統計的に、付き合うまでのデートは3回くらいで、それ以降は女性も『友達枠』として見てしまいます。なので、理想は【1】デートに誘う(ふたりで会う)【2】次に繋げる【3】告白、です。その間に好意を伝えていかなければなりません。その時、いきなり好意をぶつけられても女性は“怖い”ので下心=好意を小出しにする必要があるんです」
そこで大事なのが、“友達よりちょっと上”を意識すること。「髪型が素敵だね」「そのアクセサリー、カワイいね」とモテテクでよく並ぶような言葉は恋愛初心者の場合、「付け焼刃なのでしないほうがいい」そうだ。
“小さな特別感のある好意”を積み重ねる
「最初は皆で遊んだとしたら、後からLINEなどで『一緒にいて楽しかった』『話していて面白かった』と褒めながら、そのコに興味があることを匂わせましょう。そこが居酒屋なら『これ好きだったよね、頼もうか』とか、会う前に『こういうお菓子好きって言ってたからお土産で買った』とかで十分です。その上で誘っていれば好意は伝わります。
そういう“小さな特別感のある好意”を積み重ねて、0.1の好意をどんどん増やしてデートや告白に持ち込むんですよ。言ってしまえば、その人の好きなところを探して喜ぶことをする。仕事の“接待”だと思えば、大体うまくいくと思います」
というわけで、好意を示しながら誘う流れも紹介しよう。例えば、BBQに行くなら…。
【1】事前の買い出しに行った時に相手の好きな具材を買う。 【2】次にまた少人数で飲みに行く。そこでコミュニケーションが取れていれば、「相手の興味ありそうなイベントや飲食店」に誘う。 【3】その「イベントや飲食店」でふたりで会った時にお互いの話で盛り上がれば、次の約束を。 【4】さらに「ちょっといい店」に行き、また誘って嫌がらなければ、次回は告白。
【4】の「ちょっといい店」とは「デートの体裁」がわかるところ。「相手の興味ありそうなイベントや飲食店」までは、あくまで建前があり、男性からしてみれば誘いやすい分、女性の受け入れ方も変わる。逆にそこで自分の話をしたり、相手のことを知って、盛り上がれば、次の「デート」もほぼOKなんだそう。
また「その人の好きなところを探して、喜ぶことをする」には相談することも大切。モテない人間は「『女性』の気持ちがわからない」と言うがもってのほかだ。
「女、とひっくるめている時点でわかってないんですよ。『理科がわからない』って言う人は、『生物の細胞がわからない』って言う人よりわかってなさそう感がありますよね。女性も同じです。ひとりひとり、好みも思考も違うんだから。女性の特徴を経験豊富な人に伝えて助言をもらうのがベスト。特に、初心者の『あと一歩で口説けそう』という相談は危ういですから」
自分では相手に好意があると思っても、LINEの会話を見ると嫌がっているというパターンはよくあるそう。もちろん、相談する相手選びも注意が必要だ。
「男性同士だと、励ましも込めて『いけるよ!』といってしまいがち。蛇の道は蛇、モテる女性がいいと思います。女友達がいないなら恋愛相談をしょっちゅう聞いている占い師もよい相談相手だと思います。女性から相談を受けてる人数でいえば私より多いだろうし、『占いナシでお願いします!』と相談しても価値があると思います」
女性同士であれば、恋愛相談なんて当たり前。男性も手探りで動くより、熟練者からアドバイスをもらうのが一番だ。「モテたいわけではないのだが」…それでも彼女は欲しいという男性に幸あれ。
(取材・文/鯨井隆正 撮影/山下隼)
■トイアンナ 慶応義塾大学法学部を卒業後、外資系企業にてマーケティングを4年間担当。800人以上の相談を受けた経験から、アラサー女性のキャリア・恋愛を中心に執筆。男女のキャリア・生き方をつづったブログ「トイアンナのぐだぐだ」は月間最高50万PVを記録。書籍は近著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』(イースト・プレス)他、『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか』(光文社新書)など多数。詳細はブログ【http://toianna.hatenablog.com/】、Twitter【@10anj10】にて