『週刊プレイボーイ』本誌で連載中の「ライクの森」――。
人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
今回は、最近日本でもお店が増えてきた「タコス」について熱く語ってくれた。
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ついに、タコスの時代がやって来ました! アメリカから日本に来たときからずっと“タコス飢餓”にあえいでいた私にとって、最近のタコス屋さんの増殖は喜ばしい限りです。
……え、タコスを食べたことがない? それは人生の半分を損してると思います。タコスは、トウモロコシ粉から作った薄い生地にお肉や野菜をのせて食べる料理。元はメキシコの国民食ですが、もはやアメリカでも国民食です。
アメリカのシットコムではやたらタコスが出てくるので、海外ドラマが好きな方にはなじみ深いかもしれません。アメリカ人=ピザが好きというイメージもあると思いますが、実際にはピザよりもよく食べられているし、どこでも買えるファストフードです。日本の手巻きずしのような感覚で、うちの家でも週に2回くらい食べていましたね。
日本では、タコスより先にトルコ料理のケバブがはやりましたが……。「タコスも同じようなものでしょ?」と思わずに、一度食べてみてください! まったく別物です!
そんなタコス好きの私にとって、日本にやって来た頃の絶望感はハンパではなかったです。その頃は、タコスの超有名チェーン「タコベル」が日本から撤退する時期で、タコスを食べられるお店が限られていました。
一時期はロイヤルホストのメニューにもあったんですが、それもなくなってしまった後は、わずかに「エルトリート」というチェーン店のメキシカンレストランで食べられるくらい。
思い余った私は、“タコスの密輸”に手を出したことも……。どういうことかというと、友達にお願いして、米軍基地の中にあるお店で買ってきてもらうんです。当時はインターナショナルスクールに通っていたんですが、インターの部活は米軍基地の学校とよく対外試合を行なうんですね。
そこで、運動部に入っている友達にお願いして、試合があるときに基地の中から持ち帰ってもらっていたんです。貴重なタコスを自ら手に入れるために、私も部活に入ってみましたが、文系の部活だったので基地の学校と交流もなく、すぐやめてしまいました……。
「なんでアメリカまで来てタコベル食べてるの?」
たまにアメリカに帰ったときも、必ずタコベルに寄っていたので、「なんでアメリカまで来てタコベル食べてるの?」とあきれられたものです。たとえるなら、中国に行ってチェーン系の中華料理屋に入るようなものでしょうか。
そんなタコス氷河期に終止符を打ってくれたのが、タコベルの日本再進出。ちょうど3年前に渋谷の道玄坂にお店ができた際は、私も2時間並んで買いました。まあ、お客さんが多かったというよりも、店員さんの手際が悪くて提供が遅かったことで行列ができていたんですが(苦笑)。
タコベルは、世界で6000店以上を構える最大のタコスチェーンで、魅力はその安さ。オーソドックスなタコス2個セットでたったの320円なんです。初めての方は注文に戸惑うと思いますが、まずは生地をカリカリのクランチにしてください。そして、「スプリーム」というトマトとサワークリームのトッピングをつければ最高です。
来週(5月25日配信予定)は、タコベル以外のオススメのタコス屋さんを紹介します!
●市川紗椰(いちかわ・さや) 1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。タコベルの「シュリンプ&アボカドブリトー」「タコライス」は日本限定メニュー