『週刊プレイボーイ 』31号では、ホンダN-VAN開発責任者・古舘茂氏を自動車ジャーナリストの小沢コージが直撃!

これぞ軽自動車新二刀流。大谷翔平もビックリの大革命の予感だぜ! それは7月13日新発売のN-VANのこと。ホンダがなんと19年ぶりに出す新型軽商用バンで、一応、商用のバモスやアクティの後継ってことだが、その実態は違う。業界を揺るがす異端児で、中身は現在人気爆発中の2代目N-BOX。つまり軽商用としては前代未聞、乗用FFプラットフォームの二刀流的戦略なのだ。

実は軽乗用と商用は似て非なる世界。全長3.4m、全幅1.48m、全高2m以下のボディサイズや660cc以下のエンジン排気量、最大4名の定員はまったく同じ。

だが、ラゲッジスペースを2列目より広く取らなければならなかったり、何より絶対車内スペースを稼ぐためにほとんどの車両がキャブオーバーのFRかMRプラットフォーム。つまりエンジンの上に人やキャビンを載せて室内長を稼ぎ、ドライブシャフトで後輪を駆動する特殊レイアウトだった。バモスやアクティもそう。

結果、乗り心地は悪いが室内が広く使え、さらに重い荷物をリアに載せて走る場合、真下の後輪を駆動させるのでスリップしにくいなどメリットは大きかった。しかも商用な分、軽自動車税は半額近くて税的メリットもアリ!

その実用性、信頼性の高さで現在スズキ・エブリイやダイハツ・ハイゼットの2大巨頭が業界に君臨。特に1996年から現在まで軽キャブバンクラスで22年連続の販売台数1位を記録する王者エブリイは、今から54年前の1964年に初代が登場。

27年後の91年に累計販売100万台、06年に200万台、今年6月には300万台を達成した超バケモノで、まさに池の主のような存在だ。

エブリイは60年生まれの老舗ライバル、ハイゼットシリーズと実質市場を二分しており、一見別の軽商用に見える日産NV100、三菱ミニキャブ、マツダ・スクラムもすべてエブリイのOEM(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャリング)、つまりエンブレム違いで、一方、スバル・サンバー、トヨタ・ピクシスバンはハイゼットのOEM。

つまり2台で業界を牛耳っていたわけだ。なぜなら最量販の商用エブリイでさえ販売は年7万台超で、市場規模は20万台と小さい。それだけに大メーカーがやり合う価値はなく、もっと言うと軽商用はいわゆる農家や街の量販店需要が主で、スズキ、ダイハツが得意とする業販、つまり街に根づいたバイク屋や自転車屋で販売するスタイルに合っていた。その面でも大型ディーラーで売るホンダには苦手なジャンルだ。

よってこのN-VANのチャレンジはヒッジョーに興味深い。確かにベースであるN-BOXの乗用車実績は半端じゃなく、11年末の発売以来、ほとんどの期間で販売1位に君臨。15年2月には累計100万台、昨年8月に2代目が大幅パワーアップして登場し、先月末には累計200万台を達成した。圧倒的な商品力をもってFFレイアウトの不利を蹴散らさんばかりに、革命的に作り込まれているのだ。

そのN-VANなのだが、最初の驚きはキャブオーバー式では見たこともない超広大低床フロアだ。そもそもドライブシャフトが下になく床が低いのに、その低さをシートのダイブダウン機構で助手席側にまで拡大。ノーズにエンジンが入っているFFなのにもかかわらず室内長は最大2635mmと圧倒的! 大人が本気で車内で寝られるほど。

さらに前代未聞のハイルーフぶりで最大1.96mと、ライバルをしのぐ高さを獲得。結果普通サイズの段ボール箱が最大71個、ビールケースが40個積めて圧倒的だし、極めつきは軽商用バン初の助手席ピラーレス構造。最大積載量350kgなので長尺ものはもちろん家具の運搬も楽勝だ。

加えてエンジンはN-BOX譲りの低燃費型で、53馬力のノンターボと64馬力のターボが選べ、ターボですら最良23.6km/リットルと良好で6MTも選べる。走りの質もN-BOX譲りだとか。

そのほかモノをつけやすい壁のフックやユーティリティナットも豊富で使いやすさの塊だし、いまどきないと不安な先進安全は最新ホンダセンシング全車標準。グレードもシンプルな仕事用の「G」「L」のほか丸目でキュートな「+STYLE FUN」やロールーフの「+STYLE COOL」まで選べる。

N-VANはプロはもちろん、趣味に没頭する男たちがたぎりまくる道具感の塊である。『週刊プレイボーイ』31号(7月14日発売)では、その真の狙いを開発責任者、ホンダ・古舘茂氏に聞いている。