「日焼け止めを使用しないと皮膚がんが増える」と危惧する皮膚科医もいます

アメリカ・ハワイ州のデービッド・イゲ知事が、サンゴ礁への有害性が指摘される成分を含んだ日焼け止めを禁止する法案に署名。2021年1月1日から施行される。こうした法律がアメリカで制定されるのは初。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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夏です。日焼け止めは塗りますか? 海や山に行くときは塗るけど普段は塗らない人が多いかも。でも、ヒューは塗ったほうがいいって言ってます。ヒューです、ウルヴァリンです。

ご存じヒュー・ジャックマンはオーストラリア出身。アウトドアに親しむオージーたちは、かつては日焼け止めを塗る習慣がなく、ヒューも紫外線を浴びまくって育った結果、現在までになんと6回も皮膚がん除去手術を受けています。「とにかく日焼け止めを塗ってね!」と繰り返し訴えているヒュー。日本でも夏は野外で遊ぶことが多いですから、特に気をつけたいですね。

ちなみに現在オーストラリアでは国が「サングラス、長袖、帽子、日焼け止め」を提唱。今や紫外線対策は皮膚がん予防の常識です。特に子供の頃のケアが大事なので、わが家の息子たちも通年で日焼け止めを使用。特大サイズの日焼け止めがそこら中に売っています。

そんななか、常夏の島・ハワイでは、2021年から大半の日焼け止めの販売・流通を禁止する法律が制定されました。

理由は、サンゴの保護。日焼け止めに含まれるオキシベンゾンとオクチノキサートという成分がサンゴの白化現象の一因だとして、これらの成分を含んだ製品の販売や流通が禁止されます。大半の製品に含まれる成分なので、メーカーは反発。「日焼け止めを使用しないと皮膚がんが増える」と危惧する皮膚科医もいます。

サンゴの白化現象は地球温暖化による海水温の上昇などほかの要因もあるのだから、日焼け止めを禁止してもどれほどの効果があるかわからず、それよりも皮膚がんに罹患(りかん)する人が増えるリスクのほうが重大だという指摘には一理ある気もしますね。

医師が処方したものや海外から持ち込んだものは対象外のようですが、この動き、ほかの地域にも広がるのでしょうか。

もちろん、サンゴの死滅は生態系にも甚大な影響を与えますから放ってはおけません。人にも地球にも優しい新しい成分が開発されるまではラッシュガードでしのぐのがいいかも。ご存じ、紫外線を遮断するラッシュガードは便利なアイテム。私が家族と暮らしているオーストラリアのパースはインド洋に面しているので海と親しむ生活ですが、海流が冷たいので夏場でもラッシュガード必携です。 

そういえばオーストラリアのデザイナーが売り出したムスリム女性用のブルキニという水着もあります。顔以外のほとんどの皮膚を覆うスタイルで、体形や紫外線を気にする人にも人気とか。これの男性版も作れば、サンゴを守りつつ皮膚がんのリスクを気にせず泳げます。全身タイツ型スイムウエアですね。40代には懐かしい、モジモジくんスタイルです。肌にも地球にも優しい男、いかがでしょう。

●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など