湾岸諸国周遊をなんとか無事に終え、いよいよ次はコーカサス3ヵ国、アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアを巡る。
さて、この3ヵ国だが、ひとつ気を付けなくてはならないのが、アゼルバイジャンとアルメニアはとても仲が悪いということ。行く順番を間違えると入国ができない可能性もあるというので、慎重に事前調査をして、まずはアゼルバイジャンの首都バクーから入ることに決めた。
ドバイからの空路でスムーズに出入国するためにも、事前に"第三国へ出国する航空券か日本への帰国便"を用意していきたい私は、いつものように直前で航空券をチェック。
格安航空券検索サイトにてカタール航空の良いチケットを見つけたので、直接カタール航空公式サイトにアクセスしようとすると、んん? 「このサイトはUAEでは閲覧できません」との表示。
「これはもしや、インターネット制限てやつ? こんな超インターナショナルなドバイで?」
昨年からUAE、サウジアラビア、エジプト、バーレーンなどは、カタールと国交断絶しているのでありえなくはない。結局、私は別のチケットを手に入れ、とにかく出発した。「世界には仲の良くない国々がいっぱいあるんだな......」
しかし、世界には仲の良い国々もあるんです。アゼルバイジャンは空路入国の場合アライバルビザ(現地で取得できる観光ビザの一種)で入国できるが、"日本人だけ無料"という親日っぷり! すんなり入国できた私は、アゼルバイジャンと日本の良好な関係に感謝した。
そして、バクーの空港がとても洗練されていたことに感動。近代的でシンプルモダンなインテリアにボタニカル調のオシャレカフェ、待合いには快適なソファ席とバッテリーチャージが完備。
フリーWi-Fiもサクサクで、思わず長時間居座ってしまいました。「空港ってやっぱりその国の玄関だよなぁ。第一印象良いし、親日もうれしいし、これは期待が持てるぞ!」
ご機嫌の私は、市内へ向かおうとバスチケット販売機の前に立つと、全く言葉の通じないゲジ眉おじさんが助けてくれて誘導されるがままにチャージ式のカード購入。
カード代2マナトが含まれた合計10マナト(約660円)分のカードについて、英語ができる別のゲジ眉おじさんに尋ねると......(この国は眉毛の太い男性多し!)。
「空港から市内までバスの運賃は1.30マナト(約85円)。市内のバスは0.20マナト(約13円)だから30回以上乗れるよ!」
「は? アゼルバイジャンのバス安すぎジャン! てゆうか使いきれないジャン!」
完全にチャージしすぎだった(ちなみに日本のような払い戻しはできません)。
仕方がないので、もうバクーではバスに乗りまくることにして......。
1918年の独立宣言から建国100年目のアゼルバイジャンは、カスピ海の油田開発によるオイルマネーでジワジワと都市開発が進んでいて"第2のドバイ"との呼び声も高い。
この国もイスラム圏であるのだが、他のイスラム諸国に比べるとかなり戒律は緩いほうで、街中では女性も普通に歩いている。ミニスカート率も高く普通の洋服で堂々と体のラインを強調しているし、ラマダン中なのにレストランやパン屋なども日中から営業している。
湾岸諸国周りのイスラム圏のように日中静まり返ったラマダンの様子とはえらい違いで、目抜き通りなんかはヨーロッパのような雰囲気がした。
そして旅人の心を掴むのは、物価の安さ!
一泊5.40マナト(約350円)の、インドやタイに並ぶほどの激安宿に着くと、経営するのはパキスタン人の青年だった。彼に関しては厳しいラマダンを実行していたためか声が蚊のように細く......聞こえないぞ!
「ちょっと! 空腹でパワーが出ないんじゃない? ところで私もラマダンに挑戦してたんだよ!」
私は元気のない彼との会話を盛り上げるため、これまでのラマダン体験を話そうとしたのだが、実行中ととらえられてしまい歓迎ムード。
しまった......。
せっかく戒律の緩いところへ来たのに、彼の前で飲食がしにくくなってしまった。彼は水一滴でも飲んだらラマダンは終了だと言う。
「水分も煙もなんだってそうさ。喉に何かを通してしまったら、そこであなたのラマダンは終了だ」
う......。
実はこれまでのにわかラマダンでは、水をちょこちょこ飲んだりしていたのだが、彼には言えない。
しかも、ここバクーの日の入りの時間はドバイとは異なり、20時だって! 長期戦ではないか! すでに超ハラヘリなんですけど! 私はなんとなく彼の監視下から逃げるように街へ飛び出した。
宿でオススメしてもらった「カーペットミュージアム」は期待してなかったのだが、これが外観からいきなりインパクト大!
4年前にオープンしたその博物館は、まるで『アラビアンナイト』の空飛ぶ絨毯のような、絨毯を丸めた形の建物。
「ナニコレ! カーペット愛が半端ないジャン!」と思ったら、アゼルバイジャンの絨毯は2010年に世界遺産に登録されているそう! なるほどね。
中にはズラリと絨毯が展示され、各地域の特徴的な模様だけではなく、まるで絵画のような人物像や景色など、カーペットのイメージを超える芸術的な作品が並んでいるではないか。
その素晴らしい出来栄えに見入ってしまって長居、おかげで空腹を忘れることができた。
その後も街を散歩しながら結局夜の8時まで空腹に耐えると、ラマダンの時間が明ける合図らしき大砲の音が聞こえた。
宿近くの飲食店の窓を覗くと客は見事に男しかいなかったが、そんな状況はとっくに慣れていたので、ひとりで入る。注文した"ドルマ"はこれまで私がウズベキスタンなどで食べたひき肉がブドウの葉で巻いてあるものではなく、ピーマンの肉詰めであった。
熱々のそれを食べながら、なんだか日本を思い出したのだけど......、この超親日国アゼルバイジャンでは今年の10月末、大規模なジャパンエキスポがあるらしい。
バクー国際空港税関では「日本の東北エリアを含め、日本の食品やお酒を輸入する際の規制は原則ありません」としているが、これは急成長するアゼルバイジャンでビジネスチャンスのにおいがするぞ......?
観光地としても世界から注目度急上昇中のこの国。きっといつかまた来る気がするので、バスのICカードのチャージ余っちゃってもまた使えるな......。
と、ビッグビジネスには不向きそうなケチケチ思想の旅人でした。
【This week's BLUE】
ニザミ通りでスタバ発見! 恒例のご当地マグチェックでは、もちろんバクーデザインがありました。
●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】