『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」――。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、鉄道オタクの彼女が、JR山手線内に誕生する新駅の名称のアイデアを語ってくれた。
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東京の東京のJR山手線内に、新しい駅が生まれます。場所は今の品川駅~田町駅の間で、現在は「品川新駅(仮称)」と呼ばれています。2020年の暫定開業が予定されており、同路線では1971年開業の西日暮里駅に続く30個目の新駅になります。
先日までこの新駅の名称が一般に募集されていたので、今回は新駅の名前を勝手にいろいろ考えてみました。
一番わかりやすい駅名は、周辺の地名にちなんで、「港南駅」や「高輪(たかなわ)駅」。ただ、「港南駅」だと横浜の「港南台駅」と混乱するし、「高輪駅」だとイメージする場所と現実の駅が遠すぎる気がします。
あとは「泉岳寺駅」。すでに周辺に都営地下鉄/京急に同名の駅がありますが、個人的には、JR東日本が他社の駅名にそのまま乗っかるイメージがありません。
ちなみに、駅名は鉄道会社によってなんとなく傾向があります。JR西日本の駅名は、私鉄の「〇〇駅」に対して、「JR〇〇駅」が多いので、この法則だと「JR泉岳寺駅」でしょうか。名鉄だったら「新○○」が多いので、「新高輪駅」とつけそうです。
一方のJR東日本は、西日暮里駅ができた当時は方角を入れることが多かったみたいですね。それでいくと、「北品川駅」がわかりやすいんですが、実は同名の駅がすでに京急にあります。
また、国分寺駅と立川駅の間に作られたことから両方の文字を取った「国立駅」の例に倣うと、「品田駅」になるでしょうか。なんだか字面的に「口」が多すぎますね(笑)。
今のトレンドを考えると、カタカナの駅名も十分にありえます。しかも、オリンピックを見据えた"キラキラ系"の名前になる恐れが......。新駅建設を含む一帯の再開発を手がけるJR東日本が掲げるコンセプトは、「グローバル ゲートウェイ 品川」。この一帯は芝浜と呼ばれる土地だったので、「サウスポート◯◯駅」とか「ピア◯◯駅」などの可能性もあります。
これに似た流行の言葉を入れるなら、「グリーンシティ◯◯駅」「サスティナ◯◯駅」「エコシティ◯◯駅」といった名前がありえます。特に"シティ"は危ないですね。小池百合子都知事の「3つのシティ」戦略とも共鳴してしまっていますし。
ちなみに、私が唯一許せるキラキラネームは、「高輪」を横文字にした「ハイループ駅」。「ハイループ」という観覧車も駅前に造って、周辺をにぎわせてほしいです。もう悪ノリですね。
実は、私もふたつ応募しました。ひとつは「みなと高輪」。近隣の地名の高輪と港南をミックスし、所在地の港区も連想させて高級感を演出してみました。"みなと"をひらがなにして、多少キラキラ感もプラス。カタカナと並ぶ今のトレンドですからね。
もうひとつは、「車両センター跡駅」。新駅が建設されている場所には「田町車両センター」という車両基地があったので、その記憶を次代に残すためです。武骨な駅名が多い京急なら、この「車両センター跡駅」もありえたかもしれません。あるいは「旧京急本社前駅」とか。19年に移転を予定している京急の本社が、今はここにあるんですよ。
なんにせよ、私はこういう実務的な、そっけない駅名のほうが好きです。
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J‐WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。本来の所在地名に合わせ、目黒駅→上大崎駅、五反田駅→東五反田駅、品川駅→高輪駅にし、新駅を港南駅にする手も