半電動SUVとしての実力がスゴい、三菱 アウトランダー PHEV G プレミアムパッケージ

執念! これぞ三菱電動化魂の執念と言わずとしてなんと言う。それが今回5年ぶりに大改良を受けた半電動SUVの偉大なる元祖、三菱アウトランダーPHEV(プラグインハイブリッド)の2019年度モデルで、8月23日に発売された。

知る人ぞ知る話、日本製EV(電気自動車)の元祖は三菱だ。2010年末発売の日産リーフが、一見日本のEVの元祖にも思えるがその1年以上前の09年夏に三菱アイ・ミーブが国内発売。量産EVとしては世界初も、残念ながらアイ・ミーブはしょぼい軽サイズもあってか鳴かず飛ばずだった。

だが、その電池技術や電動化技術を応用して13年に投入されたのがアウトランダーPHEV。ピュアEVではないが、既存のSUVに当時トンでもなく画期的なPHEVを搭載。駆動システムは前代未聞のツインモーター4WDで、前後タイヤをそれぞれ別の82馬力モーターで駆動。電源としてピュアEV並みの12kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。2リットルガソリンエンジンを一部高速で駆動用として使いつつ、ほぼ発電機として使用した。

今やエンジンを発電用と割り切り、モーターで駆動する電動車は16年発売のベストセラーカー、日産ノートe-POWERでおなじみだが、アウトランダーPHEVは3年以上も先取り。

同じプラグインハイブリッドでも当時、初代トヨタプリウスPHVの電池搭載量はわずか4.4kWh。ざっくりアウトランダーの3分の1にすぎず、よってプリウスが「PHV」なのに対し、アウトランダーはよりEVに近い「PHEV」。

しかも、いまだにツインモーター式SUVはテスラのモデルXしかなく、PHEVとしてアウトランダーPHEVの電池量を超えたのは今年出たホンダのクラリティPHEVとポルシェカイエンのPHVぐらい。

ちなみにアウトランダーPHEVのデビュー当時の価格は300万円前半スタート。モデルXの約3分の1であり、バーゲン価格どころか電池代タダで売っていたようなもん。どんだけアウトランダーPHEVが進んでいたかがわかるって話だし、現在世界累計販売16万台超でプラグインハイブリッドSUVとして世界一って話にも納得!

【SPEC】 ●全長×全幅×全高:4695mm×1800mm×1710mm●車両重量:1900kg●エンジン:2.4リットル直列4気筒DOHC●最高出力:128PS●最大トルク:20.3kgm●モーター出力:(前)82PS(後)95PS●モータートルク:(前)14.0kgm(後)19.9kgm●車両本体価格:479万3040円(税込)

さらにここにきてガワをほとんど変えずに中身をシブく超絶進化させた。早速、千葉県にある「フォレストレースウェイ」で走ったがオザワは思わず涙がチョチョ切れた。

まずはメッチャクチャ速い! 今回エンジンを2リットルから2.4リットルに拡大。最高出力を118馬力から128馬力に上げて発電量を増やしただけじゃない。電池量も13.8kWhに増やし、リアモーターを82馬力から95馬力に上げているから発進からとんでもないレスポンス!

その上、今まで最初はバッテリーのみで走り、途中から発電用としてエンジンがかかっていたのが、全然かからない。つまり、相当なレベルでEV度が増している証拠だ。感覚的には電動感2割増し。実際、EV走行距離は60kmから65kmに、EV最高速も125キロから135キロにアップ。

オマケに今回登場した新型アウトランダーPHEVからスポーツモードとスノーモードも選べるようになり、これが信じられないレベルで曲がる。実はこのツインモーター4WD、懐かしのランエボ譲りの四輪電子制御S-AWCの進化版が搭載されており、ウソみたくナチュラルに走りやすい。

車重約1.9tで全長4.7mの巨漢SUVとは思えない。コーナーに思いっきり突っ込んでも確かな手応えとともに曲がり、そこでアクセルオフやブレーキを軽く踏むと、キュキュッと気持ちよくノーズが内側を向く。そこからアクセルを踏み込むと、リアに多めにトルク配分された前後パワーとともにキレイにコーナーを脱出。まさに新世代のコントローラブル4WD! 現代によみがえった超デカい電動ランエボ!って感じなのだ。

外観はハイビームLEDヘッドライトやフロントグリル、フロント&リアスキッドプレート、LEDフォグランプベゼルのデザイン変更やリアスポイラーの追加。インテリアはハザードスイッチやオーナメントパネルのデザイン変更、一部グレードでの本革トリムの採用程度。

よって価格は変わらず400万円以下スタートに抑えられている。聞けばボディを除く主要構成部品の約90%を新作。それでいてこのリーズナブルさはスゴい! 昔からオザワが唱える、メルセデスが売ったら1000万円以上!の超お値打ち純国産PHEVだ。三菱のEV魂、4WDバカ魂は燃え盛っている!

●小沢コージ 
1966年生まれ、神奈川県出身。青山学院大学卒業後、本田技研工業に就職。90年に自動車誌の編集者に。著書に『マクラーレンホンダが世界を制する!』(宝島社新書)など多数。TBSラジオ『週刊自動車批評』レギュラー出演中。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員