『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、鉄道マニアの彼女が"日本一短い鉄道"といわれる「芝山鉄道線」について紹介する。
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皆さんは、千葉県の「芝山鉄道線」という路線をご存じですか? 成田空港から海外に行くことが多い方は、「そういえば看板を見たことがあるような......」と思い出すかもしれません。
芝山鉄道線は、成田空港の第1ターミナルと第2ターミナルのちょうど中間にある「東成田駅」を起点とし、隣の「芝山千代田駅」を終点とするいわゆる"盲腸線"です。2駅の間の路線距離はたった2.2kmで、「日本一短い鉄道」といわれています。
実はこの東成田駅、かつては「成田空港駅」と名乗っていました。1991年に今の成田空港駅、92年に空港第2ビル駅ができる前は、京成電鉄のこの旧成田空港駅が一番空港に近かったんですね。現在、ほとんど一般乗客には利用されていませんが、空港職員の通勤に使われているので、まだ駅が残っているわけです。
さて、その東成田駅から1駅だけ延びた芝山鉄道線ですが、実はずっと先の蓮沼まで延伸される計画がありました。というか、計画自体は今もあります。
もともと芝山鉄道は、成田空港建設に伴う地域住民への補償という意味合いでつくられた第三セクターです。しかし、着工が延び延びになっているうちに今の成田空港駅が開業。さらに空港建設反対派の土地買収がなかなか進まず、最終的には「一坪共有地」と呼ばれる未買収地を避ける形で、やっと営業を始められたのが2002年のことでした。
その頃にはこの東成田駅も空港職員しか使わない駅になってしまっていたので、芝山千代田駅から先の延伸計画はずっとペンディングされている状態なんです。いわば、大人の都合に振り回されたかわいそうな路線なんですよ。
ちなみに、この芝山千代田駅の駅ナンバリングは"Shibayama Railway"を表す「SR01」。まるで会員番号001番しかないファンクラブみたいで、ちょっと物悲しいですね。
先日、この芝山鉄道線に乗るために成田を訪れたんですが、東成田駅に行き着くのがまず大変でした。車で行こうとすると職員用の駐車場を通らないといけないし、降りて歩いても途中で横断歩道が消えてたりして、全然駅に近づけません(笑)。
たどり着くまでには苦労したんですが、この東成田駅はかつて成田空港のメインの玄関口だっただけあり、ものすごく広くて豪華な造りでした。
大きな壁画があったり、今は使われていないホームに「成田空港駅」の駅名標がそのままかかっていたり、昔あった売店や喫茶店がチラッとのぞけたり......。ちょっとした廃墟の趣ですね。
この東成田駅のことを「秘境駅」と呼ぶ人もいますが、それはちょっと違うんじゃないかと私は思います。なぜなら、この東成田駅は500mくらいの地下道でちゃんと空港ターミナルまでつながっていて、人里離れた秘境駅ではないんです。
しかも、この地下道がちょっとよくて、ガランとした薄暗い東成田駅を歩いてるとボウッと光り輝くように入り口が出現するんです。さながらRPGの隠し通路を発見したような不思議な感覚が味わえます(笑)。
次回は、この芝山鉄道線で発見したオススメスポットをご紹介します!
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。たったひと駅ながら片道200円という割高な運賃に、芝山鉄道経営の難しさを思う