部屋がキレイにこしたことはないけれど、小まめな掃除なんて面倒だし、キレイにしたところで呼ぶ彼女もいない。まあ、ホコリで人は死ぬわけじゃないし......と、とかく汚部屋化しがちな男の部屋。

しかし、そんな部屋の中で放置されたホコリや汚れが、実は健康を蝕んでいるとしたら――?

長年、病院清掃に従事してきた日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事で、『図解 健康になりたければ家の掃除を変えなさい』著者の松本忠男氏に聞いた。

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──編集部でも忙しいとか面倒くさいとかの理由で、数ヵ月部屋を掃除していないという男性もいますが......まず驚いたのは、ホコリにも無害なものと有害なものがあるということです。

松本 ホコリの成分の大半は衣類や寝具などの繊維が落ちたものですが、部屋に落ちたばかりのホコリは基本的には無害です。

しかし、それらのホコリは床に散らばってる人間の皮脂やフケなど様々な成分と合体して部屋の隅に追いやられ、蓄積されていきます。それが放置されると、家の中に存在する細菌やカビやダニがホコリを住みかとして繁殖し、有害なホコリ、病気の元となる"病原ホコリ"に変貌していくのです。

──その病原ホコリ内の細菌の爆増っぷりはとんでもないと?

松本 はい。細菌は単細胞なので2倍に増えます。千個が2千個、2千個が4千個......と、時間経過により増えていく。実際に屋内の500円玉ほどのホコリ1gには、カーテンレールや棚の上などの高いところで7万~10万個の菌がいるとのデータもあります。それらの場所の温度や湿度によって違いはあるものの2、3時間で何億に増える場合もあるんです。

──どのくらいの期間で無害なホコリが有害な病原ホコリに変貌するのでしょう。

松本 繊維の塊ができてそれが大きくなっていくとともに、1週間もすれば病原ホコリに変貌します。これからの季節なら宙に舞うホコリに、インフルエンザなどの病原体が付着する可能性も否定できません。

──えー! どういうことですか?

松本 インフルエンザウイルスの感染経路としては、感染者の咳やクシャミによってウイルスを直接吸い込んでしまう飛沫感染、そして感染者が口に手を当てて咳き込んだりした後にその手でドアノブなどを触ることでウイルスが付着し、そこから感染する接触感染がよく知られています。

さらに、咳などの水分を含んで重くなったウイルスはおおよそ2m範囲に落下しますが、これが空気中を漂うホコリや床に落ちたホコリに付着して広がることも考えられます。この場合、感染者がその場を立ち去ったとしても、その室内にいる人が病原ホコリを吸い込んで感染する可能性があります。

──そうだったんですね......。

松本 また、インフルエンザウイルスは高湿度に弱く、加湿が重要といわれます。湿度が高ければウイルスの飛沫が空気中のミストを取り込むことで重くなり床に落ちるため、吸い込むリスクも減ります。しかし、インフルエンザウイルスは24~48時間は活性化できるので、床に落ちたウイルスを飛散させないためにも、ホコリを舞い上げないよう、小まめに掃除をすることが大事なのです。

──ほかには、掃除をサボっているとどんな病気になる可能性が?

松本 主にのどや呼吸器系の不調を引き起こす代表が、カビとダニです。ダニの糞や死骸はアトピー性皮膚炎などのアレルゲンやぜんそく発作の原因に、カビは肺炎やぜんそくの原因になります。

また、キッチンや浴室、トイレなどの水まわりに住む細菌やウイルスも、胃腸系の不調を引き起こす原因になります。これからの季節ですと接触・経口で感染するノロウイルスが代表的ですね。腹痛、下痢などを引き起こす大腸菌などもあります。

──なるほど。これからの季節はノロやインフルは特に要注意ですね......。

松本 秋冬は着るものが多いからホコリが増える上に、夏に繁殖したダニの死骸が最も多い季節なので、病原ホコリも増殖しやすいです。さらには、現代では加湿器を使う家庭が増えてきたことで、冬でもカビとダニが増加しています。

──家の中で特に気をつけるべき場所は?

松本 寝室は寝具や衣類などホコリを生み出すものも多く、要注意です。また、ホコリは部屋の中心から隅のほうに移動して蓄積します。風が動かない場所ですね。例えば換気扇やエアコンの下などは特に多い。なのでエアコンのすぐ下などにベッドの枕があるような部屋のレイアウトでは、健康被害が起こりやすくなります。

──つまり部屋をまんべんなく掃除することよりも、汚れやすいところを注意して掃除することが大事ってことですね?

松本 そうです。床の真ん中や目につきやすく掃除しやすいところばかり、見た目のきれいさばかりを意識した掃除では、意味がないのです。

ホコリは気流や静電気、湿度などさまざまな物理的な条件に左右されて空気中を漂い一定の場所に蓄積されるので、その場所を重点的に掃除をすればいいだけですし、それにあたり、間違った掃除の常識を変える必要があるのです。

後編⇒窓全開、床の水拭きはNG! "病原ホコリ"を撒き散らす間違い掃除とは?

●松本忠男(まつもと・ただお)
東京ディズニーランド開園時の正社員、ダスキンヘルスケア勤務を経て、亀田総合病院のグループ会社に転職。清掃管理者として約10年間、現場のマネジメントや営業に従事。1997年、医療関連サービスのトータルマネジメントを事業目的として、株式会社プラナを設立。日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事。亀田総合病院では100人近く、横浜市立市民病院では約40人のスタッフを指導し、現場で体得したコツやノウハウを、医療、介護施設、清掃会社等に提供している。主な著書に『図解 健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社、1200円+税)ほか

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