スーパーハイトワゴン初のSUVモデルとなったスズキ「スペーシアギア」スーパーハイトワゴン初のSUVモデルとなったスズキ「スペーシアギア」

スズキは同社の軽スーパーハイトワゴン「スペーシア」の派生モデルとなる「スペーシアギア」を12月20日に発売した。両側電動スライドドアを持つSUV的なギアは、早くも話題騒然だ。

誕生の秘密を開発責任者・鈴木猛介(すずき・たけゆき)氏に質問をぶつけた。

* * *

――現行スペーシアの累計台数から教えてください。

鈴木 2017年12月の発売から月に約1万3000台売れています。累計台数は14万台を突破していますね。

――スペーシアは現行モデルが2代目ですね。

鈴木 はい。初代は月に平均8000台出ました。5年間売って累計は約49万台です。

――はた目には、もうスペーシアをスズキの「顔」と呼んでもいい気がします。

鈴木 アルト、そしてワゴンRがスズキの主力を張ってきましたが、今はスペーシアに主力が移ってきていますね。

――ちなみに軽自動車の市場規模って?

鈴木 おおよそ150万台です。商用バンを足すと180万台になります。スペーシアの属する軽ハイトワゴン、つまり背の高いスライドドアのクルマは約60万台売れていて、市場の約40%に達しています。

「搭載されるエンジンはターボとNAの2種類となります。ターボにはパドルシフトを搭載した7速マニュアルモードも備えています」と語る鈴木氏「搭載されるエンジンはターボとNAの2種類となります。ターボにはパドルシフトを搭載した7速マニュアルモードも備えています」と語る鈴木氏

――けっこうな規模ですね。

鈴木 今、軽自動車の主戦場はこのハイトワゴンになっていて、かなり熾烈(れつ)な競争になっています。

――その主戦場で、目の上のたんこぶがN-BOXですか。

鈴木 いやいや、アチラはスゴい台数を売っているので......スゴいなぁと(笑)。

――今回投入したこのスペーシアギアで来年は独走するホンダのN-BOXをやっつけるわけですね?

鈴木 なんとか追いつきたいという気持ちはあります。ただ、他社と同じクルマを造って追いついたとしても、スズキとしてはダメです。どういうふうにしたらスズキの軽として、しっかりアピールできるか考えなくてはいけないからです。そのひとつの答えが、今までの軽自動車とは違うスペーシアギアなのかなと。

――スペーシアギアの位置づけというのは?

鈴木 スペーシアには穏やかな標準の顔と、オラオラ系と言いますか、押しの強い顔を持つカスタムがあります。どうしてもカスタムのほうはどんどん顔がスゴくなっている。

もちろん、カスタムにはたくさんお客さんがついているんですが、この顔にはついていけなくなった、けれど、標準タイプのファミリー向けの顔には乗りたくない。そういうお客さんが増えているので、カスタムと標準の間を狙えないかと。もちろん、スズキらしさを注入した上で。

助手席にはツールボックスをモチーフにした大きなアッパーボックスが。予防安全技術も搭載助手席にはツールボックスをモチーフにした大きなアッパーボックスが。予防安全技術も搭載荷室フロアとリアシート背面は防汚仕様を採用している。泥がついた自転車を積んでも掃除は楽チン荷室フロアとリアシート背面は防汚仕様を採用している。泥がついた自転車を積んでも掃除は楽チングレードは「ハイブリッドXZ」と「ハイブリッドXZターボ」の2種類。駆動方式はFFと4WDグレードは「ハイブリッドXZ」と「ハイブリッドXZターボ」の2種類。駆動方式はFFと4WD

――スズキにはジムニーというアイコンがあります。

鈴木 ええ。ジムニーやハスラーが持つスズキらしいSUVのイメージをスペーシアギアには取り入れました。

――ズバリ、ギアのセールスポイントは?

鈴木 今回、ガンメタリックの部品をけっこう多く使っています。ハイトワゴンの重い走りのイメージを、SUVが持つ軽快な走り――コレをガンメタリックを使うことで表現できたのかなと。それとヘッドライトの丸目ですね。ジムニー、ハスラー、そしてスペーシアギアが丸目です。スズキのSUVだと一発でわかってもらえるようにしました。

――あまりスペーシアは意識しなかった?

鈴木 いや、スペーシアシリーズの中でも足並みはそろえなければいけませんし、スズキのラインナップの中でも区別する必要があるわけです。そうしないと商品の魅力がよくわからなくなりますから。

――社内調整が大変そうです。

鈴木 社内でもハスラーと何が違うんだという声はありました。が、ハスラーよりは荷物を積めるけど、ハスラーよりは走れない。もっと走りたければジムニーがある。ポジショニングはできるんじゃないかという結論で。

――男女比の想定は?

鈴木 18年のオートサロンでスペーシア・トールキャンパーというギアのコンセプトモデルを出展しました。そのときに女性から「かわいいね」というご意見をたくさんいただきました。

実はこのギアも企画をしているのは女性なんです。男性にも女性にも受け入れていただけるんじゃないかと。そういう不思議な感じのクルマに仕上がっています。もっと男っぽいクルマになると思っていたんですが。

――ギアの販売台数はどの程度の数字を予想してます?

鈴木 スペーシアは月に1万3000台売れているので、その1割程度かなと。

――1割? 謙虚ですね

鈴木 そう言っていただけるとうれしいんですが、価格が169万円台スタートと値が張るので......気持ち的にはたくさん売れてほしいんですが。

――なるほど。ちなみに標準、カスタム、そしてギアでスペーシアシリーズは完成ですか。それともまだ隠し玉があったりするんですか?

鈴木 いやぁ、まずはギアでしっかり台数を稼がないと、仮に次があったとしてもたどり着けません。とりあえずスペーシアシリーズはこの3つで完成です。

――最後にあらためて。来年はスペーシアギアで軽市場を独走するN-BOXをやっつけるんですね?

鈴木 頑張ります(笑)。

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スペーシアギアだけでなく、スズキは現在、改良、特別モデルの大ラッシュ中! 以下がそのラインナップ。

●安全装備を大幅に強化 アルト

12月13日に一部改良を実施。誤発進抑制がバック走行にも対応。車線逸脱警報、ふらつき警報などが採用された。

●特別仕様車登場 ラパン

12月6日、アルトラパンに特別仕様車「モード」を設定。内外装は上質に仕上げられ、落ち着いた雰囲気に。

●一部改良を実施 エスクード

12月3日、エスクードを一部改良。フロントマスクを中心に内外装を変更。運転支援システムも大幅に強化した。