『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、物議をかもしたJRの新駅名「高輪ゲートウェイ駅」を教訓に、京浜急行電鉄の新駅名募集について考える。
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ちょうど半年前に、このコラムで"品川新駅"の駅名公募のことを語りました。2020年に暫定開業が予定されている山手線の新駅の駅名を私なりに考え、実際に公募に参加したんです。
結果、昨年12月に「高輪(たかなわ)ゲートウェイ駅」という名称になったことが発表され、鉄道好きのみならず大きな話題になりました。すでに、ありとあるゆる批判の矢にさらされているため、いまさら私が何か言うのも、と思うので具体的な不満点は伏せます。
しかし、唯一申し上げたいのは、JR東日本が"カタカナキラキラ系ネーム"にしたがっていたことは、当時の公募内容を読めば一目瞭然(りょうぜん)だったこと。
だから、応募数が多かった「高輪」「芝浦」「芝浜」といった古典的な駅名が選ばれなかったことより、警鐘を鳴らした上、程よい駅名を応募したのにこの結果になった悔しさのほうが大きいです。自分の無力さを突きつけられた感じですかね。
でも、しばらくして「高輪ゲートウェイ」でもいいかな、と思えるようになりました。おそらく今後「高輪GW」と省略されることも多くなると思うので、"GW"を「ゲートウェイ」ではなく「ガンダムウイング(『新機動戦記ガンダムW』の略称)」と脳内変換することにしました。高輪ガンダムウイング駅。うむ、カッコいい。
さて、ここからが本題です。実は昨年、京浜急行電鉄が「わがまち駅名募集!」と銘打って大規模な新駅名募集をしました。なんと、対象は京急全線にわたる72駅。応募資格は沿線の小中学生に限られていたので、自分の子供の頃の発想を振り返ると、不安しかないです。
すでに公募期間は過ぎており、今年春頃に新駅名が発表される予定です。おそらく、今は審議している真っ最中だと思うので、高輪ゲートウェイの悲劇を繰り返さないためにここで声を上げておきたいと思います。
ところで、先ほど72駅と言いましたが、すべて改名するわけではなく、公募で集まった駅名案を基に数駅を改名する予定だそうです。実は、駅名変更を予定していない駅も事前に発表されています。
まず、品川駅や京急蒲田駅など、他社線との乗換駅として広く認知されている駅名。そして鮫洲運転免許試験場がある鮫洲駅や川崎大師がある川崎大師駅など、著名な公共施設、神社仏閣に近い駅です。確かにこうした駅の名前が変わってしまうと混乱を招きそうですね。
ただ、「YRP野比駅」も変えないという判断は少し意外でした。平成時代に生まれた駅名なので辛うじてOKということでしょうか。
一方、絶対に変えると告知されているのが「産業道路駅」。駅前を通る神奈川県道6号東京大師横浜線、通称"産業道路"に由来した駅名です。この駅前には道路7車線分、なんと36mにわたる大きな踏み切りがあって、「日本一長い踏切」といわれています。
しかし、この付近の線路が地下化されることになり、近い将来、この名物の踏切もなくなってしまいます。そうした路線リニューアルを踏まえた駅名変更なんですね。
次回は、"絶対に変えてほしくない"個性的な京急の駅名について語ります!
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J‐WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。産業道路はサザンオールスターズの『メリケン情緒は涙のカラー』でも歌われていて、思い入れがあるだけに改名は悲しい