京急創立120周年記念の乗り放題切符。番組でクイズに答えて当たりましたが、もったいなくて使えませんでした

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。前回に引き続き、京浜急行電鉄の新駅名募集について語ってくれた。

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先週のコラムで「わがまち駅名募集!」を取り上げたので、今週は京急の個性的な駅名について語ります。

鉄道の駅名は地名に由来するものが圧倒的に多いんですが、京急には構造物や公共性のある場所にちなむ個性的な駅名がかなり存在します。構造物に由来するものとしては、前回ご紹介した「産業道路駅」が典型ですね。

公共性のある場所に由来する例としては「青物横丁駅」などがあります。その名のとおり、江戸時代から昭和初期まではここに野菜や山菜を売る市場があったそうです。「梅屋敷駅」も、数百本の梅を植えた大庭園を持つお屋敷がここにあり、往時は一般の行楽客のみならず徳川家将軍や明治天皇も立ち寄った名所でした。

ただ、青物横丁も梅屋敷もとっくに姿を消している上に、地名としても残っていないので、今回の駅名募集で名前が変わる可能性があります。

同様に、すでに地名としては残っていない名前を冠している「雑色(ぞうしき)駅」は、鎌倉時代の役人の階級にちなんだ歴史ある駅名です。しかし、雑色村という地名は明治時代になくなった上に難読なので、変更の危機に晒(さら)されています。難読駅名が多く存在するのも京急の魅力なので、変わってほしくないですね。

個性的な駅名が目立つ京急ですが、一見なんの変哲(へんてつ)もない駅名だけど、実は特異な由来を持つのが「鈴木町駅」。味の素の創業者、鈴木三郎助さんにちなんだ駅名なんですけど、これまでにかなりの紆余曲折(うよきょくせつ)をたどっています。

今でもこの周りは味の素の工場で占められているんですが、もともとは駅も「味の素駅」として開業しました。しかし、戦時体制下で社名が大日本化学工業に変更されると、駅名も鈴木町駅に改められました。

駅が開業した後、この周りは鈴木家にちなんで鈴木町という地名になっていたからです。そして戦後、社名は現在の味の素になったんですが、駅名はそのまま使われた―という複雑な歴史があります。

私は味の素の工場に見学に行った際にこの歴史を知ったんですが、こうした近代史にちなむ駅名は珍しいので、ぜひ残してほしいですね。

また、"駅名って面白いな"と思う入り口になりそうなのが「北品川駅」。JRの品川駅の南側にあるのに"北"とついている不思議な駅です。もともとは東海道五十三次のひとつ、品川宿の少し北にあることからこの駅名がつけられました。

一方の品川駅はかつて2年だけ存在した品川県に由来しますが、現在の地名では港区高輪になります。なので本来は、JRの品川駅の駅名を変えるべき、という見方もできますね。

近年、沿線のマンション開発に力を入れており、住宅地としてのイメージアップを狙っているらしい京急。大人の夜の街のイメージがある「黄金町(こがねちょう)駅」や「日の出町駅」が、「のげプラーザ駅」や「京急動物公園駅」になったらショックです。

さらに、先週も述べましたが、今回は小中学生から駅名を募集していることに不安を覚えています。いっそのこと、「追浜(おっぱま)駅」→「おっぱい駅」、「金沢文庫駅」→「金沢うんこ駅」という絶対に応募の多そうな"おバカ駅名"にして、反省してほしいです。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。「六郷土手駅」や「立会川駅」もグッとくる駅名だが、変更されてもおかしくはない

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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