パリの「ガール・デュ・ノール」駅構内で撮った写真です パリの「ガール・デュ・ノール」駅構内で撮った写真です

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、鉄道マニアの彼女が、フランスの鉄道について語ってくれた。

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エマニュエル・マクロンが大統領に就任して以来、フランスではその改革路線に対する大規模なデモやストライキがたびたび行なわれています。なかでも、昨年4月から行なわれたフランス国鉄(SNCF)職員によるストは"フランス史上最大のスト"ともいわれ、3ヵ月にわたって断続的に行なわれました。

結局、昨年6月にSNCFの民営化や市場開放を含む改革案が可決され、今後大きく組織が変わっていきます。今回は、そんなSNCFについて語りたいと思います。

まず、フランスの鉄道はほぼSNCFが独占しているので、フランスの鉄道=国鉄と言っていいと思います。ただし、ヨーロッパの国々は地続きになっているので、パリの駅には他国の列車もたくさん入ってきて見応えがあります。

また、フランスではLRTと呼ばれる軽量で利便性の高い路面電車がたくさん走っている一方、地下鉄は古くて個性的な駅舎が残っていたりします。トンネル内にグラフィティががんがん描かれていて、走行中はパラパラマンガのように見えたりするのも面白いですね。

そんなフランスの鉄道のなかで、特に有名なのがTGV。日本の新幹線にあたる高速鉄道なんですが、最高速度574.8キロを記録した世界最速の鉄道です(車輪のないリニアなどは除く)。

通常営業時も、当たり前のように300キロ以上の速度で走っています。走行中に速度を表示しているモニターを見ると、あっという間に320キロ台になっていて、「レーシングカーかよ!」と毎回興奮します。

日本の新幹線との構造的な一番の違いは、車両の下の台車が2車両にまたがって設置されているところ。動く姿がイモムシみたいでかわいいんですが、この「連接台車方式」のおかげで、軽さと安定した高速移動が両立できているんです。

それでもけっこう揺れるので、新幹線に慣れている方は、初めはびっくりするかもしれません。ただ、シートピッチが広く、食堂車もあるので快適に過ごせますよ。

もうひとつ、新幹線との面白い違いは、TGVには「Ouigo(ウィゴー)」という格安バージョンが存在していること。SNCFが2013に導入した新ブランドで、通常のTGVより料金が安い分、車両が前の世代のものだったり、予約や問い合わせをインターネットでしか行なっていなかったり、手荷物には追加料金がかかったりします。飛行機でいう格安航空会社(LCC)に近い印象でした。

もともとTGVは新幹線とほぼ同じ価格帯で、「値段が高い」という批判に答えてウィゴーが誕生したといわれています。さらに、「こんなに高いのに赤字なのはおかしいだろ!」という怒りの声が民営化につながりました。

現在、SNCFは5兆円の負債を抱えていて、職員への厚遇ぶりも批判にさらされています。SNCFの職員は、基本的に終身雇用で有給も多く、医療費無料、家族も運賃が大幅に割引されたりしています。昨年のストはこれらの権利を守るためです。

しかし、21年に市場開放されることは決まっているので、今後どう変わっていくのか注目です。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J‐WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。昨年末パリに行った際、"イエローベスト・デモ"に巻き込まれ、催涙ガスの洗礼を受けた

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